オーディオ機器に搭載されているXLR端子。
メーカーの説明書には「2番HOT」「3番HOT」という記載があります。
これはメーカーによって違っていて、現在は混在している状態です。
XLR端子の「2番HOT」「3番HOT」とは何なのか、これが違う機器同士を接続するときはどうするのか、詳しくお話いたします。
1.XLRケーブルの役割は?
オーディオ機器の入出力端子には、ほとんどの機器でRCA端子が装備されています。
このRCA端子は、伝送方式で考えるとアンバランス伝送となります。
一方、一般に高級機になるとRCA端子に加えて、XLR端子が装備されています。
このXLR端子は、伝送方式で考えるとバランス伝送となります。
XLRケーブルは文字通りXLR端子同志を接続するケーブルで、バランス伝送を実現するためのケーブルです。
2.XLR端子はどうなっている?
XLR端子は3つのピンで構成されています。
この3つのピンには、以下の3つの機能が割り当てられています。
・GND (グラウンド):基準電圧(0V)
・HOT (ホット) :正相の信号(本来の信号)
・COLD(コールド) :逆相の信号(本来の信号と逆向きの信号)
3.XLR端子の出力信号はどうなっている?
CDプレーヤーのXLR端子の出力信号イメージを分かりやすく図示しましたので、下記をご覧ください。
4.XLR端子の入力機器側はどうなっている?
XLR端子を持つアンプを例に、XLR端子の入力イメージを分かりやすく図示しましたので、下記をご覧ください。
尚、XLR端子を使用したバランス伝送は、同相ノイズ除去の仕組みにより回路的にノイズを除去できることが最大のメリットです。
これは、COLD(逆相)の信号を反転回路で正相に戻し、HOT(正相)の信号と合成することで、途中で混入したノイズを打ち消す仕組みです。
この仕組みにより、バランス伝送はノイズに強い伝送方式となっています。
5.XLR端子を持つ機器の「2番HOT」や「3番HOT」について
XLR端子は1番~3番の3つのピンで構成され、GND、HOT、COLDが割り当てられています。
しかし、ややこしいことに、このピンの割当には2つの方式が存在します。
これが、「2番HOT」や「3番HOT」と呼ばれるものです。
国際基準は「2番HOT」となっていますが、以前はアメリカ式は「3番HOT」、ヨーロッパ式は「2番HOT」で、現在でも混在しているのが現状です。
XLR端子の割当を次に示します。
<2番HOT規格のXLR端子割当>
・1番ピン:GND(グラウンド) 基準電圧(0V)
・2番ピン:HOT(ホット) 正相信号
・3番ピン:COLD(コールド) 逆相信号
<3番HOT規格のXLR端子割当>
・1番ピン:GND(グラウンド) 基準電圧(0V)
・2番ピン:COLD(コールド) 逆相信号
・3番ピン:HOT(ホット) 正相信号
6.出力機器と入力機器の「HOT」ピンが違っているとどうなる?
さて、ここが今回ご説明したい一番のポイントです。
XLR端子の機器同士を接続する場合、XLR端子が「2番HOT」同志の場合や、「3番HOT」同志の場合は、音楽信号がプラスの時にスピーカーの振動版が前に出ることになり、正しい再生になります。
詳しくは、下記の説明図をご覧ください。
さて、ここで問題なのは、XLR端子が「2番HOT」と「3番HOT」の機器を接続する場合や、「3番HOT」と「2番HOT」の機器を接続する場合です。
こ場合は、音楽信号がプラスの時にスピーカーの振動版が後ろに下がり(逆位相で動く)正しく再生できません。
もちろん音は出ます。また、RチャネルとLチャネルの両方とも逆位相のため、ちょっと聴いただけでは分からない時があります。
詳しくは、下記の説明図をご覧ください。
7.「2番HOT」と「3番HOT」の機器を接続しても、再生上は問題ないという意見もありますが...
インターネットを見ていると、音楽信号は交流信号(プラスとマイナスが常に入れ替わる信号)だから、出力機器と入力機器の「HOT」ピンが合っていなくても、再生上問題はないという意見もあります。
これは発信器が出すような単純な上下対称の波形(正弦波など)の場合は、確かに問題はありません。
しかし、実際の音楽信号は非常に複雑な波形で、上下対称ではありません。
実際の音楽波形を下記に示します。(これを見るとはっきり分かります)
※JazzのCDで「DIANA KRALL LIVE IN PARIS」の1曲目「I Love Being Here With You」の48秒付近の波形です。
<実際の音楽再生波形> 上:L側、下:R側
8.「2番HOT」と「3番HOT」の機器を接続するとどのような再生音になるのか
「2番HOT」と「3番HOT」の機器を接続して音楽を再生すると、スピーカーの振動板が逆位相で動くため、空間表現がいびつになり違和感が生じます。
人間は音の方向を左右の耳に入ってくる音の違いで判別しているのですが、それは左右に耳に入ってくる音の大きさの違いや、ごく僅かな時間のずれ(位相のずれ)により判別しています。
特に左右に耳に届く音の時間のずれ(位相のずれ)には大変敏感で、これがしっかりオーディオで再生できると、スピーカーの外側や前後に広がる空間が再現されます。
このことを考えると、スピーカーが逆位相で動き再生した音に違和感が生じることも、ご納得いただけるのではと思います。
9.「2番HOT」と「3番HOT」の機器を接続して正しく再生する方法は?
これは、XLRケーブルの内部接続で2番ピンと3番ピンを接続してあるケーブル(クロス接続ケーブル)を使用することで解決できます。
ケーブル工房TSUKASAのXLRケーブルは、オプションとしてケーブル内部接続を「通常接続」と「クロス接続」を選べますので、「2番HOT」と「3番HOT」の機器を接続する場合は「クロス接続」を選択してください。
XLR端子によるバランス伝送はノイズに大変強く、様々なノイズが飛び交っている現在の家庭環境では、音楽再生に大変有利です。
XLR端子を持つ機器同士を正しく接続して、素晴らしい再生音を楽しみましょう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます