厚い雲が垂れ込め、今にも泣き出しそうな空を見上げながら、スクアーロは歩いていた。
今は失われた左手の先がひどく疼く。
こんな日は眠るボスの元へ行く。
失われた欠片を求めて。
ボンゴレ本部の厳重な警戒網を掻い潜り、地下にある一室に辿り着くまでの慣れた道のり、誰に会うこともなくその部屋に辿り着いたのはいつものこと。
しかし今日は一つだけいつもと違った。
誰も近づかないはずの禁忌の部屋に人の気配がする。
暗殺者特有の直感で、スクアーロはスッと気配を絶ち身を潜めて様子を覗った。
ボスの眠る辺りに誰かが立っている。
光の一切差さない部屋の中、ぼうっと浮かび上がるオレンジ色の明かりが照らし出した人物の顔は、誰あろうボンゴレ9代目のものだった。
自ら息子をこの部屋に眠らせた、スクアーロにとって憎むべきその人物は、一人何を語るでもなくボスの眠る鋼鉄の箱を見つめていた。
XANXUSが凍りに閉ざされたあの時と同じように、スクアーロは柱の影に身を潜め9代目が去るのを待った。
自分の目的は9代目に逢う事ではないのだ。
ぼうっと揺らめいていたオレンジ色の明かりが、スッと出口へ向かって動き出した。
スクアーロは更に息を潜め、気配を完全に絶ったつもりだった。
「そこにいるのは、S.スクアーロかね?」
穏やかな、そして少し悲しみを含んだ声音だった。
まさか気づかれるとは思っていなかった。
しかし、9代目は的確に自分を捉えているのだと、名前まで呼ばれては認めざるを得ない。
翳された蜀台に応じるように、スクアーロは柱の影から姿を現す。
「XANXUSに逢いに来たんだね。」
また、穏やかに言った9代目の表情は、少しだけ笑ったようにも見えた。
スクアーロは返事をするわけでもなく黙ったままその場に立っていた。
XANXUSを眠らせた憎い人物であるが、自分のファミリーのドンでもある人物。
XANXUSがこの後目覚めるか否かを握っているのもこの人物。
複雑な気持ちを押し殺して、冷たい視線のまま9代目を見つめる。
今は逆らいはしない、その視線が9代目にそう語っていた。
「君にはすまないが、まだあの子を、XANXUSを目覚めさせてはやれないんだ。」
スクアーロの繭がピクリと動いた。
肩まで伸びた髪がゆらりを炎を反射して流れる。
「・・・どうしてだぁ。」
我知らず呟いたスクアーロの言葉に、9代目が悲しげな表情を返した。
「君は、本部のセキュリティーを掻い潜ってここに来ているようだね。」
スクアーロは返事をしない。
9代目は少し考えるように黙ってから、穏やかにこう付け加えた。
「近々本部のセキュリティーを強化することになっている。
今度から、君は特別にこの部屋へ通れるよう警備のものには言っておくよ。」
「余計なお世話だぁ。
ボスがどこにいたって、俺は逢いに行く。絶対なぁ」
「君が忍び込むたびに、他の連中がセキュリティー強化しろと煩くなって敵わんのだよ。
次からは正面からはいってきたまえ。」
9代目はそれだけを言うと、蜀台を揺らしながら部屋を出て行った。
9代目が出て行くと、明かりの一切なくなった部屋は真の闇に閉ざされる。
ポケットから小型のペンライトを取り出したスクアーロは、XANXUSの眠る氷を取り巻く分厚い鉄板とそれを更に閉ざすようにまかれた太い鎖の前に立った。
「ボス、また来たぜぇ。」
スクアーロはそうして何時間もその部屋で立ち尽くしていた。
今は失われた左手の先がひどく疼く。
こんな日は眠るボスの元へ行く。
失われた欠片を求めて。
ボンゴレ本部の厳重な警戒網を掻い潜り、地下にある一室に辿り着くまでの慣れた道のり、誰に会うこともなくその部屋に辿り着いたのはいつものこと。
しかし今日は一つだけいつもと違った。
誰も近づかないはずの禁忌の部屋に人の気配がする。
暗殺者特有の直感で、スクアーロはスッと気配を絶ち身を潜めて様子を覗った。
ボスの眠る辺りに誰かが立っている。
光の一切差さない部屋の中、ぼうっと浮かび上がるオレンジ色の明かりが照らし出した人物の顔は、誰あろうボンゴレ9代目のものだった。
自ら息子をこの部屋に眠らせた、スクアーロにとって憎むべきその人物は、一人何を語るでもなくボスの眠る鋼鉄の箱を見つめていた。
XANXUSが凍りに閉ざされたあの時と同じように、スクアーロは柱の影に身を潜め9代目が去るのを待った。
自分の目的は9代目に逢う事ではないのだ。
ぼうっと揺らめいていたオレンジ色の明かりが、スッと出口へ向かって動き出した。
スクアーロは更に息を潜め、気配を完全に絶ったつもりだった。
「そこにいるのは、S.スクアーロかね?」
穏やかな、そして少し悲しみを含んだ声音だった。
まさか気づかれるとは思っていなかった。
しかし、9代目は的確に自分を捉えているのだと、名前まで呼ばれては認めざるを得ない。
翳された蜀台に応じるように、スクアーロは柱の影から姿を現す。
「XANXUSに逢いに来たんだね。」
また、穏やかに言った9代目の表情は、少しだけ笑ったようにも見えた。
スクアーロは返事をするわけでもなく黙ったままその場に立っていた。
XANXUSを眠らせた憎い人物であるが、自分のファミリーのドンでもある人物。
XANXUSがこの後目覚めるか否かを握っているのもこの人物。
複雑な気持ちを押し殺して、冷たい視線のまま9代目を見つめる。
今は逆らいはしない、その視線が9代目にそう語っていた。
「君にはすまないが、まだあの子を、XANXUSを目覚めさせてはやれないんだ。」
スクアーロの繭がピクリと動いた。
肩まで伸びた髪がゆらりを炎を反射して流れる。
「・・・どうしてだぁ。」
我知らず呟いたスクアーロの言葉に、9代目が悲しげな表情を返した。
「君は、本部のセキュリティーを掻い潜ってここに来ているようだね。」
スクアーロは返事をしない。
9代目は少し考えるように黙ってから、穏やかにこう付け加えた。
「近々本部のセキュリティーを強化することになっている。
今度から、君は特別にこの部屋へ通れるよう警備のものには言っておくよ。」
「余計なお世話だぁ。
ボスがどこにいたって、俺は逢いに行く。絶対なぁ」
「君が忍び込むたびに、他の連中がセキュリティー強化しろと煩くなって敵わんのだよ。
次からは正面からはいってきたまえ。」
9代目はそれだけを言うと、蜀台を揺らしながら部屋を出て行った。
9代目が出て行くと、明かりの一切なくなった部屋は真の闇に閉ざされる。
ポケットから小型のペンライトを取り出したスクアーロは、XANXUSの眠る氷を取り巻く分厚い鉄板とそれを更に閉ざすようにまかれた太い鎖の前に立った。
「ボス、また来たぜぇ。」
スクアーロはそうして何時間もその部屋で立ち尽くしていた。
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