薄暗い闇の帳が降りて来て辺りを包む。
真の闇が辺りを包み込むまでの数時間、心地よい緊張感をもって任務の開始を待つ。
中途半端に伸びた銀色の髪を掻きあげてスクアーロは薄く笑った。
弓なりにつりあがる唇の橋。
少し乾き始めたそれを、覗いた赤い舌が撫でてゆく。
傍から見ていると、それはまるで狂人のようだ。
ソファに座ったXANXUSの視線を感じたのか、スクアーロの酷薄なグレーの瞳が危険な色を浮かべてこちらを振り返った。
「なぁ、今夜のターゲットは、俺に殺らせてくれるんだろう?」
普段よりキーの高い興奮を抑えきれない声音で、狂人が耳元に囁く。
くすくすと笑いながら、失われた左腕の先に付いた偽者の手がXANXUSの頬をそっと撫でた。
黒皮の手袋に包まれた、何も感じることのないであろう冷たい指先が頬を撫で回す感触は、正直言ってあまり好きではない。
だが、この失った左腕は今から10数年程前に、この狂人自らが切り落とし、XANXUSに捧げられたのだ。
それを思うと、こんな作り物の手のひらさえ、愛おしくなる。
その想いは、けしてこの狂人に伝えることはないであろう。
「好きにするがいい。」
XANXUSの唇が紡ぐ言葉に、狂人の唇がまた弓なりに吊上がり、満足げな表情を作った。
スクアーロは右膝をソファについて、XANXUSに覆いかぶさるように頬を寄せると、先ほどまでの少し甲高い声ではなく、腹の底から響くような低い声でXANXUSの左耳に触れそうな距離で囁いた。
「ボス、最高だ。愛してるぜぇ。」
普段の狂人の濁声が、こんな時だけは耳に心地よく響いた。
明かりもつけず、薄闇の中に浮かび上がる銀が、目の前でサラサラと流れてゆく。
指輪争奪戦後、一度短く切り揃えられたその髪を、この狂人はまた何かに誓いを立てて伸ばし始めた。
自分が誓いの対象であることはXANXUSだって心得ている。
これが、この男なりの不器用な愛情表現であることも。
「うるせぇよ、カスが。遊ばずに片付けろよ。」
この狂人には獲物を弄ぶ癖がある。
ヴァリアーのメンバーに見られがちな性癖だが、この男の場合相手が強ければ強いほどその傾向が強く現れるのだ。
少しでも長いこと戦っていたいのだと言わんばかりに、楽しげに唇の端をゆがめ獲物の全力を少しでも引き出そうと、弄びながら戦う。
時としてそれが思わぬ反撃を食らう結果を招いたとしても、1:1で戦う限り、この男には止められないのだろう。
一度それで死に掛けたというのにだ。
「わかってるぜぇ、ボスをお待たせなんてしねぇよ、安心しろぉ。」
XANXUSの耳元で囁いた唇で、そのまま耳朶を咥えこまれた。
今夜のターゲットはイタリアマフィア界でも屈指の剣豪と呼ばれているのだ、この狂人が興奮しても仕方のないことだろう。
ぴちゃぴちゃと耳朶を舐め上げられ、吸われて、熱い息が耳を弄る。
時折背筋を駆け上がる快感を押し殺して、されるがままにしていると、スクアーロが顔を上げ、明らかに熱情に浮かされた瞳でXANXUSを見下ろした。
「なぁ、XANXUS。まだ時間があるし、いいだろう?」
問いかけではあったが、その凶悪な瞳は、有無を言わさぬ意思がありありと感じ取れた。
普段はこちらが駄目だといえばその場であきらめるが、こうなったら何を言ったところでこの男はやるのだ。
今宵のターゲットはそれほどの相手だということなのだろう。
この男がこれほどに興奮する相手に、ほんの少しの嫉妬すら覚える。
ただ黙ってスクアーロの瞳を見つめていれば、拒否の言がないのをいいことに、顔を寄せ唇を重ねてきた。
すぐに口腔に差し込まれた熱い舌が、XANXUSの思考を奪ってゆく。
夜の暗闇が視界の全てを奪っても、目の前の熱い銀の狂人の存在は確かなものとしてXANXUSの体に刻み込まれていった。
真の闇が辺りを包み込むまでの数時間、心地よい緊張感をもって任務の開始を待つ。
中途半端に伸びた銀色の髪を掻きあげてスクアーロは薄く笑った。
弓なりにつりあがる唇の橋。
少し乾き始めたそれを、覗いた赤い舌が撫でてゆく。
傍から見ていると、それはまるで狂人のようだ。
ソファに座ったXANXUSの視線を感じたのか、スクアーロの酷薄なグレーの瞳が危険な色を浮かべてこちらを振り返った。
「なぁ、今夜のターゲットは、俺に殺らせてくれるんだろう?」
普段よりキーの高い興奮を抑えきれない声音で、狂人が耳元に囁く。
くすくすと笑いながら、失われた左腕の先に付いた偽者の手がXANXUSの頬をそっと撫でた。
黒皮の手袋に包まれた、何も感じることのないであろう冷たい指先が頬を撫で回す感触は、正直言ってあまり好きではない。
だが、この失った左腕は今から10数年程前に、この狂人自らが切り落とし、XANXUSに捧げられたのだ。
それを思うと、こんな作り物の手のひらさえ、愛おしくなる。
その想いは、けしてこの狂人に伝えることはないであろう。
「好きにするがいい。」
XANXUSの唇が紡ぐ言葉に、狂人の唇がまた弓なりに吊上がり、満足げな表情を作った。
スクアーロは右膝をソファについて、XANXUSに覆いかぶさるように頬を寄せると、先ほどまでの少し甲高い声ではなく、腹の底から響くような低い声でXANXUSの左耳に触れそうな距離で囁いた。
「ボス、最高だ。愛してるぜぇ。」
普段の狂人の濁声が、こんな時だけは耳に心地よく響いた。
明かりもつけず、薄闇の中に浮かび上がる銀が、目の前でサラサラと流れてゆく。
指輪争奪戦後、一度短く切り揃えられたその髪を、この狂人はまた何かに誓いを立てて伸ばし始めた。
自分が誓いの対象であることはXANXUSだって心得ている。
これが、この男なりの不器用な愛情表現であることも。
「うるせぇよ、カスが。遊ばずに片付けろよ。」
この狂人には獲物を弄ぶ癖がある。
ヴァリアーのメンバーに見られがちな性癖だが、この男の場合相手が強ければ強いほどその傾向が強く現れるのだ。
少しでも長いこと戦っていたいのだと言わんばかりに、楽しげに唇の端をゆがめ獲物の全力を少しでも引き出そうと、弄びながら戦う。
時としてそれが思わぬ反撃を食らう結果を招いたとしても、1:1で戦う限り、この男には止められないのだろう。
一度それで死に掛けたというのにだ。
「わかってるぜぇ、ボスをお待たせなんてしねぇよ、安心しろぉ。」
XANXUSの耳元で囁いた唇で、そのまま耳朶を咥えこまれた。
今夜のターゲットはイタリアマフィア界でも屈指の剣豪と呼ばれているのだ、この狂人が興奮しても仕方のないことだろう。
ぴちゃぴちゃと耳朶を舐め上げられ、吸われて、熱い息が耳を弄る。
時折背筋を駆け上がる快感を押し殺して、されるがままにしていると、スクアーロが顔を上げ、明らかに熱情に浮かされた瞳でXANXUSを見下ろした。
「なぁ、XANXUS。まだ時間があるし、いいだろう?」
問いかけではあったが、その凶悪な瞳は、有無を言わさぬ意思がありありと感じ取れた。
普段はこちらが駄目だといえばその場であきらめるが、こうなったら何を言ったところでこの男はやるのだ。
今宵のターゲットはそれほどの相手だということなのだろう。
この男がこれほどに興奮する相手に、ほんの少しの嫉妬すら覚える。
ただ黙ってスクアーロの瞳を見つめていれば、拒否の言がないのをいいことに、顔を寄せ唇を重ねてきた。
すぐに口腔に差し込まれた熱い舌が、XANXUSの思考を奪ってゆく。
夜の暗闇が視界の全てを奪っても、目の前の熱い銀の狂人の存在は確かなものとしてXANXUSの体に刻み込まれていった。
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