夏休みも終わり、暑かった夏から秋へと季節が移り変わろうかという10月初めの月曜日の早朝、綱吉は隣家からのなんとも言われぬ奇声にたたき起こされた。
「う゛おぉぉぉいっ!○×△□※●っ!!!」>
「はぁうっ!な、なにーっ!!」
辺りを見回しても、まだ鼻ちょうちんを膨らませ目を開けたまま眠るリボーンがいるだけ、時計を見やればまだ6時前。
「な、なんだったんだ?夢か?
でもあの声、なんか聞き覚えのあるような・・・。
まだ6時前だよ、あと1時間は眠れたのに。
えっと、今のどこから聞こえてきたんだ?」
起き上がって窓を開けようとしたその時、ドンガラガッシャーンッ!!と派手な破壊音が響き渡り、あわてて窓を開けたツナが目撃したものは、隣家の砕けた窓ガラスとそれを片付けているゴーラ・モスカの姿だった。
「え、ええっー!!な、何でゴーラ・モスカが隣のうちにぃーっ!?
しかも、割烹着着てるのは何でーっ!?」
確かに、ゴーラ・モスカの姿はしているのだが、和服に割烹着、おまけに頭に手ぬぐいまで被って、今はもう見ることも少なくなった箒とちりとりを持ち掃除をする姿は、まさに古き良き昭和初期の下町のお母さん風だった。
似合ってないことこの上ない。
ある意味ショッキングな光景に、綱吉はすぐさまリボーンを起こしにかかった。
「ちょ、リボーン起きろよ。
隣のうちにゴーラ・モスカがいるんだけど、お前なんでだか知ってんだろ。」
しかし、鼻ちょうちんを膨らませるリボーンの安眠を妨げてはいけない。
「・・・何人も俺の眠りを妨げてはならない・・・・。」
「もう、そんなこと言ってる場合じゃないって。」
鼻ちょうちんは膨らませたまま、リボーンがレオンを手に取ると、それは棍棒に変身し、避ける間もなく綱吉の即頭部に強烈な一撃がHITした。
衝撃に星とひよこがくるくると目の前を回ったが、打たれ強くなった綱吉はすぐさま復活し、リボーンを起こすのは諦めて大急ぎで着替えると隣家の様子を伺うため部屋を出た。
それとほぼ時を同じくして、沢田家の玄関チャイムが凄い勢いで鳴らされた。
ピンポンピンポンピンポンピンポーン。
「はぁーい。」
「あ、俺が出るからいいよ母さん。」
嫌な予感がしたので、台所でもう朝食の用意をしている母がそれに出ようとするのを押し止め綱吉は玄関ドアを開けた。
ドアの向こうに立っていたのは、30箱はあろうかというピザの箱らしきものを抱えたレヴィ・ア・タンと、金色の髪にきらきら光るティアラを載せたベルフェゴールがマーモンを抱えて立っていた。
ご丁寧に全員がピザ屋の従業員ぽい服装までしている。
「やっぱり、ヴァリアーがいるーっ!!な、なんでぇーっ!!」
今朝は寝起きから絶叫ばかりの綱吉に、ベルフェゴールは開口一番嫌味を言う。
「遅いよ。王子を待たせるなんて生意気だね。」
「仕方ないよベル。今まだ6時前だもの。起きていた事の方が奇跡だと思うよ。」
綱吉が呆けた顔で、アワアワしていると
「おい、これ。ボスからだ。」
レヴィが仏頂面で抱えてきた箱を綱吉に渡した。
流石に30枚分のピザとなると相当に重い。
綱吉はピザの箱を抱えたまま、尻餅をつくように玄関に腰を下ろした時、襖が開いて家光が欠伸をかみ締めつつ、腹を掻きながら廊下に出てきた。
「ふぁあぁ・・・。お、何だお前らXANXUSの使いか?」
「ボスからの引越しの挨拶だ。受け取れ。」
「おーおー、そうか。なんだかワリィな、気ぃ使わせちまって。」
「ふんっ。じゃ、届けたからな。」
レヴィは家光にそう言うや、きびすを返して去っていった。
ベルフェゴールとマーモンもその後を追う。
彼らを見送った綱吉は、父に問う。
「父さん、いったいどういうこと?」
「んー、今日からなぁヴァリアーの日本アジトが隣の家になったんだ。」
「ええーっ!な、なんでーっ!?」
「ま、理由はおいおいな。とりあえずそれ母さんにもってけよ、ツナ。俺はしょんべんしてくる。」
「も、父さん下品だよ。」
綱吉はしぶしぶ箱を抱えなおすと、台所へそれらを持っていった。
「母さん、これ貰った。おとなりの引越し挨拶だって。」
「まぁ、こんなに沢山?ご丁寧に何かしらね。」
早速箱を開けると、分厚いピザ生地に蕎麦とチーズとサラミが山盛りに乗っかっていた。
「げ、何このピザーっ!!そば乗ってるし。ってか、イタリア人の癖にアメリカンピザ寄越すなよぉ。」
濃厚な匂いに誘われたのか、風太やランボ、ビアンキらも台所に現れた。
「ツナ兄、これどうしたの?凄いいいにおいだね。」
「この箱は、ランボさんのだもんね。」
「※○×△我。」
ランボがいくつか箱を抱えて食べたじめると、つられるようにイーピンや風太、ビアンキまでがピザを頬張り始める。
朝からこんな濃厚なものを平気で口にするなんて、やっぱり彼らはイタリア人なんだなと綱吉は改めて思った。
「綱吉も食べなさいよ。おいしいわよ。」
「あ、うん。」
ビアンキに促され、恐る恐る一口食べたその味は、意外にもしっくりとベストマッチしていて綱吉を愕然とさせたのだった。
『悔しいけど、美味い。』
その後、家光やリボーン、いつの間に来ていたのかバジルまで加わって何とかピザを平らげることが出来たのだった。
ピザを片付けることに夢中になってしまったため、肝心のヴァリアーの話やらなにやらをする暇も無く、重い胃を抑えながら綱吉は登校するため家を出た。
「いってきまーす。」
「「いってらっしゃーい。」」
母や風太たちの声に送られながら、玄関を飛び出した綱吉は、いきなり誰かにぶつかってしまった。
「いてててて。す、すいません。」
尻餅をついて、誤りながら見上げれば、そこにはカラフルなモヒカンに特徴的なサングラスをしたルッスーリアが立っていた。
しかも何故か着ているものは花柄のワンピースだった。
「あら、こちらこそごめんなさい。大丈夫?」
差し伸べられた手を払って、勢い良く立ち上がった綱吉は、叫びながらダッシュで逃げ去った。
「うわぁぁぁぁ。ごめんなさいぃーっ!!!」
「あら、何あれ?傷ついちゃうわー。」
それを見送ったルッスーリアは、何食わぬ顔で隣家へと入っていった。
居間では、ヴァリアー幹部の面々が朝食を摂っていた。
どういう訳か、こちらは純和風の朝食だ。(イタリア人の癖に)
味噌汁が湯気を上げ、おしんこに焼き魚、出し巻き玉子に納豆までが食卓を飾っていた。
「ただいまー。今そこで10代目に会ったわ。」
帰宅の挨拶をしながらルッスーリアが食卓に着く。
「おかえりルッス。」
マーモンがベビー用のいすに座らされながらそれに応え、
「ねぇボス、引越しの挨拶なんであれにしたの?」
とXANXUSの方に問う。
「引っ越したときは隣人に蕎麦を施せとジジイが言っていた。」
ベルフェゴールの問いに、不機嫌そうに口を尖らせながらボソリとXANXUSが答えた。
「あいつら、あれどうするかな?マーモン。」
出し巻き玉子に手を伸ばしつつベルフェゴールが言えば、
「どうするだろうね。ベル、つまみ食いはだめだよ。」
とマーモン。
「ボスからの贈り物だ。残さず食うに決まっているだろう。」
背筋を伸ばしてお行儀良く座っていたレヴィがベルフェゴールを睨みながら言う。
「う゛ぉいっ!てめーら見てばっかいねぇでちったぁ手伝えっ!」
いままで黙々と食卓の準備を整えていたスクアーロが、各自の茶碗にご飯をよそいながら叫んだ。
「やだね、王子が家事だなんて考えらんないよ。ニシシ」
「そうだよスクアーロ。今朝くじ引きでここでの役割分担決まったじゃないか。」
「そうよねぇ。一度決まったことはちゃんと守らなくちゃよ、スクアーロ。」
「う゛ぉい、それならルッスのほうが・・・。」
「あら、あたしもちゃんと役割果たしてるじゃない。お買い物とご近所づきあい。ちゃんと主婦の役割分担しているもの。それにあたしは一家の大黒柱として夜のオカマバーでママをしてるんだから、それを助けるのは夫の勤めよ。」
「だからそれが納得いかねぇんだ。
大体だなぁ、役割がおかしいだろぉ?
しかも俺はマスオさんを引き当てたはずだぜぇ、それなのに食事の準備はおかしいだろぉがぁっ!」
「馬鹿ねぇ、今時のマスオさんは料理ぐらい出来て当たり前よ。むしろ世間の旦那さんは皆奥さんより料理が出来るのよ。
大体、料理自体はほとんどフネさん役のモスカがやってたじゃない。」
「う゛。納得いかねぇ。」
「うるせぇよ。ガタガタ言ってねぇでさっさとしろ。」
ボスに促され、ぶつぶつ文句を言いながらも手だけは止まることなく動かされ、全員にご飯が行き渡ると、全員で「頂きます。」と行儀良く食事の挨拶をして朝食が始まった。
そもそも、今朝方の雄たけびの真相はこうだ。
このアジトは、表向き日本の一般家庭を装っていなければならないので、一般家庭らしく各自家族の役割を振られることとなった。
これはXANXUSの思い付きではなく、家光の入れ知恵らしい。
そこで、家族の役割をくじにして全員がいっせいに引いた結果、
父(ナミヘイさん:引退済み):レヴィ・ア・タン
母(フネさん:翳の大黒柱):ゴーラ・モスカ
入り婿(マスオさん:主夫):スペルビ・スクアーロ
長女(サザエさん:一家の大黒柱):ルッスーリア
長男(カツオ:中学2年生):XANXUS
次女(ワカメ:中学1年生):ベルフェゴール
孫(タラちゃん):マーモン
ルッスーリアに言わせると、神の采配を思わせる役割分担が決まったのだが、スクアーロは役割のプチ設定が気に入らないらしくあの雄たけびを上げ、それが癇に障ったXANXUSが手近にあった花瓶をスクアーロ向けて投げつけたため、窓が割れてモスカが片付ているところを綱吉が目撃したのだ。
食事を終えると、スクアーロがXANXUSとベルフェゴールに声をかけた。
「う゛おぉい、準備は出来たかぁ?でかけるぞぉ。」
「「行ってらっしゃい。(ませ)」」
マーモンとルッスとレヴィの見送りの声に送られスクアーロは、二人を連れ立って出かけていった。
綱吉がいつも通り学校に付くと、クラスでは、転校生の噂でもちきりになっていた。
『転校生だって?まさかなぁ。』
綱吉は嫌な予感がした。嫌な予感というもの程、当たるものである。
その日のHRで、担任に化けたリボーンが転校生として紹介したのは、事もあろうにあのXANXUSだった。
(なーーーーーーーっ!!!転校生ってXANXUSだったのーーーっ!!!
てか、XANXUSっていったい幾つだよーーーっ!?
いくら何でも中学2年ってことは無いだろぉ!?)
綱吉の突っ込みはもっともだが、現実に目の前に転校生としてXANXUSは登場し、その事実を山本はモチロン、あの獄寺までもが笑顔で受け入れている事が綱吉には信じられなかった。
驚いたことに、XANXUSは大人しく授業を受け(ただ外を眺めていただけだが)、綱吉の不安を他所に何事も無く昼休みを迎えてた。
XANXUSは怖いし、何より面倒に巻き込まれたくない綱吉は早々に屋上に行こうと後ろの席の山本を振り返ったが、そこに山本の姿は無く、事もあろうにXANXUSの目の前で笑顔で話しかけていた。
「なぁXANXUS、これからツナ達と屋上で昼飯にするんだけど、お前も一緒にどうだ?」
(なーっ!山本何言っちゃってんのーっ!?)
「今週な、給食じゃねぇんだ。お前飯持ってきたのか?」
山本の問いに頷いたXANXUSは、携帯を取り出すと誰かにコールを始める。
イタリア語で数回の会話を交わすとXANXUSは携帯をポケットにねじ込み、立ち上がった。
「おい、案内しろ。」
「わかった。おいツナ、飯食いに屋上行こうぜ。」
「ええっ、あ、う・・・うん。」
(なんでXANXUSなんか誘うんだよ山本ー!!)
綱吉は蒼くなりながらも、XANXUSの視線が怖くてつい同意してしまった。
「あ、獄寺くんはどうする?」
助けを求めるように獄寺に振ると、
「10代目、俺購買寄ってから行きますんで、先に行ってて下さい。」
と笑顔でスルーされた。
山本、XANXUSと連れ立って、屋上へ向かう。
1年生の教室の前を通りかかったところで、XANXUSが立ち止まりタイミングよく扉が開き、少女が飛び出してきてXANXUSに抱きついた。
「あー、ボス。これから昼飯でしょ、俺も一緒に行くよ。」
(お、男言葉!?)
黒髪のおかっぱ頭にティアラを載せた少女は、良く見ればベルフェゴールだった。
(んな゛ーっ!なんでベルフェゴール女子の制服着てんのぉ!?)
目を丸くした綱吉と、まったく気づいていない山本、ちょっと嫌そうな顔をしたXANXUS、3者3様の反応を見せ立ち止まったところに、ドタドタと獄寺が息を切らしながら駆けてきた。
「10代目ー、お待たせしました。購買混んじゃって。ハァハァ」
息を整えながら顔を上げた獄寺の目の前には、女装したベルフェゴールに抱きつかれたXANXUSがいた。
だが、獄寺は綱吉のこと以外は一切目に入っていないかの様に無反応だった。
(何で気が付かないんだよ、獄寺くんも山本もー。)
屋上に到着して弁当を広げる綱吉や山本、購買の焼きそばパンをパクつく獄寺を他所に、XANXUSもベルフェゴールも座ったきり動こうとしない。
「なんだ、やっぱ持ってこなかったのか?昼飯。」
と山本。
ベルフェゴールの視線に気づいた獄寺が、
「んだよ、俺のはやらねぇからな。欲しけりゃ購買へ買いに行けよ。もっとももう売り切れちまったかもな。」
と面倒くさそうに言った所で、屋上へ重箱を抱えたスクアーロが入ってきた。
「う゛おぉい。弁当持ってきてやったぞ、ボス、ベル。」
「遅いよスクアーロ、王子を餓死させる気かよ。」
「何言ってんだぁ、折角作ってやった弁当忘れたのお前らの方だろうが。」
「久しぶりだなスクアーロ、髪切ったのな。」
「おお、刀小僧かー、久しぶりだなぁ。」
見事なまでの五分刈りになったスクアーロが、山本を振り向いた。
「前よりいいんじゃねぇ、野球するにはもってこいなのな。」
言うなりぐりぐりと頭を撫で回す山本を鬱陶しそうに払いのけ、
「う゛ぉおい!俺だって好きでこんなんなったんじゃねぇぞぉ!!」
「断髪式凄かったからね、ボスに髪の毛捉まれて燃やされたんだぜ。ねぇ先輩。」
「うるせぇベル、あの時お前らがふざけなけりゃこんなことにはなぁ。」
「いつまでもグジグジ根に持つなよ。空気読めないでボスを怒らせた先輩が悪いんだよ。
それよりお腹すいた、早く弁当食べようよ。
ボスを待たせるとまた燃やされるよ。」
ベルフェゴールに急かされて、スクアーロはいそいそと重箱を広げはじめた。
重箱の中には見事なおせち料理が詰まっていた。
(なんでおせちーっ!季節感まったくねーっ!!)
「う゛おい、お前らも食うか?」
「え、いいのか?じゃあ遠慮なく頂くのなー。お、結構上手いぜ、ツナたちも貰えよ。」
「これ、お前がつくったのかよ。」
「そんな訳あるかぁ、モスカが作ったのを俺が詰めただけだぁ。」
「えーっ!ゴーラ・モスカってそんなことできるの!?」
(っていうか、何で動いてんだよ。)
「・・・愛だ。」
XANXUSがツナの心の突っ込み対してボソリと呟いた。
どうやら超直感で心を読まれたっぽい。
「な、勝手に心読まないでよXANXUS-。それに愛って何ー!?」
「うるせぇよ、カス!(たぶんジジイの)うざってぇ無償の愛ってやつだ。
糞の役にもたちゃしねぇと思っていたが、ものは使いようだな。
ぶはっ!」
大笑で腹を抱えて転げまわるXANXUS。(コンクリートなのに痛くないのだろうか?)
「う゛おいボス、転がってねぇで早く食えよぉ。ボスの好きなタコさんウィンナーもりんごのウサギさんもあるんだぜぇ。」
(えーっ!大人なのにタコさんウィンナー!?)
「うるせぇよ、このドカスがっ!!」
「グフっ!」
転げまわっていたXANXUSからの鋭い蹴りがスクアーロの鳩尾に深々と決まった。
腹を押さえて蹲るスクアーロを一瞥して、タコさんウィンナーを貪るXANXUSに、綱吉はランボの食事風景が重なってしょうがなかった。
『タコさんウィンナーは全部ランボさんのだもんねー!!』
今にもそんな声が聞こえてきそうだった。
「おい、切り裂き王子。(女装してまで)どうして並盛中学にきたんだ?」
「王子がワカメちゃんだからだよ。
ボスはカツオ君で、先輩はマスオさん。
そう配役が決まったんだから仕方ないじゃん、王子の所為じゃないよ。」
回答になっていない回答を口にして、ボスの大好きだというりんごのウサギさんにナイフを刺した。
「はいボス、あーんして。王子が食べさせてあげる。」
夢中でタコさんウィンナーを貪っていたXANXUSだが、ベルフェゴールに差し出されたりんごには素直に齧りついた。
それを見たスクアーロがベルフェゴールに向かって吼えた。
「う゛ぉぉいっ!ベル何してんだぁっ!!それは俺の役・・・。」
言いかけたところで、XANXUSがいきなり光球の炎を投げつけ、それはスクアーロの頬を掠めて屋上のタンクを風化させた。
ブシューという音を立ててタンク内の全ての水までもが蒸発し、辺りは濛々とした水蒸気に包まれた。
「いきなり殺す気かぁ!ボス!!」
「うるせぇよ!飯も食ったし帰るぞっ!!」
「う゛おぉい、午後の授業はいいのかぁ?」
「知るか。そんなもんお前が受けとけっ!俺は帰る。」
「ボスが帰るなら、王子も帰ろうっと。」
「いきなりサボりか、さすがヴァリアー・クオリティーなのな。」
山本が言い終えないうちに、XANXUSたちの姿は屋上から消え去っていた。
屋上での爆発音におっとり刀で駆けつけた教師達に見つかった綱吉は、この後こってりと絞られることになった。
気が付けば獄寺も山本もとっくにどこかに逃げ去っていたのだ。
全てはXANXUSの所為なのに、何を言っても信じてもらえず、騒ぎを起こした罰として職員用トイレ掃除を言いつけられてしまった綱吉は、放課後一人で泣く泣く掃除をする羽目に陥ったのだった。
「どうしてこーなるのぉっ!!」
むなしい叫び声が、放課後の職員用トイレに木霊した。
「う゛おぉぉぉいっ!○×△□※●っ!!!」>
「はぁうっ!な、なにーっ!!」
辺りを見回しても、まだ鼻ちょうちんを膨らませ目を開けたまま眠るリボーンがいるだけ、時計を見やればまだ6時前。
「な、なんだったんだ?夢か?
でもあの声、なんか聞き覚えのあるような・・・。
まだ6時前だよ、あと1時間は眠れたのに。
えっと、今のどこから聞こえてきたんだ?」
起き上がって窓を開けようとしたその時、ドンガラガッシャーンッ!!と派手な破壊音が響き渡り、あわてて窓を開けたツナが目撃したものは、隣家の砕けた窓ガラスとそれを片付けているゴーラ・モスカの姿だった。
「え、ええっー!!な、何でゴーラ・モスカが隣のうちにぃーっ!?
しかも、割烹着着てるのは何でーっ!?」
確かに、ゴーラ・モスカの姿はしているのだが、和服に割烹着、おまけに頭に手ぬぐいまで被って、今はもう見ることも少なくなった箒とちりとりを持ち掃除をする姿は、まさに古き良き昭和初期の下町のお母さん風だった。
似合ってないことこの上ない。
ある意味ショッキングな光景に、綱吉はすぐさまリボーンを起こしにかかった。
「ちょ、リボーン起きろよ。
隣のうちにゴーラ・モスカがいるんだけど、お前なんでだか知ってんだろ。」
しかし、鼻ちょうちんを膨らませるリボーンの安眠を妨げてはいけない。
「・・・何人も俺の眠りを妨げてはならない・・・・。」
「もう、そんなこと言ってる場合じゃないって。」
鼻ちょうちんは膨らませたまま、リボーンがレオンを手に取ると、それは棍棒に変身し、避ける間もなく綱吉の即頭部に強烈な一撃がHITした。
衝撃に星とひよこがくるくると目の前を回ったが、打たれ強くなった綱吉はすぐさま復活し、リボーンを起こすのは諦めて大急ぎで着替えると隣家の様子を伺うため部屋を出た。
それとほぼ時を同じくして、沢田家の玄関チャイムが凄い勢いで鳴らされた。
ピンポンピンポンピンポンピンポーン。
「はぁーい。」
「あ、俺が出るからいいよ母さん。」
嫌な予感がしたので、台所でもう朝食の用意をしている母がそれに出ようとするのを押し止め綱吉は玄関ドアを開けた。
ドアの向こうに立っていたのは、30箱はあろうかというピザの箱らしきものを抱えたレヴィ・ア・タンと、金色の髪にきらきら光るティアラを載せたベルフェゴールがマーモンを抱えて立っていた。
ご丁寧に全員がピザ屋の従業員ぽい服装までしている。
「やっぱり、ヴァリアーがいるーっ!!な、なんでぇーっ!!」
今朝は寝起きから絶叫ばかりの綱吉に、ベルフェゴールは開口一番嫌味を言う。
「遅いよ。王子を待たせるなんて生意気だね。」
「仕方ないよベル。今まだ6時前だもの。起きていた事の方が奇跡だと思うよ。」
綱吉が呆けた顔で、アワアワしていると
「おい、これ。ボスからだ。」
レヴィが仏頂面で抱えてきた箱を綱吉に渡した。
流石に30枚分のピザとなると相当に重い。
綱吉はピザの箱を抱えたまま、尻餅をつくように玄関に腰を下ろした時、襖が開いて家光が欠伸をかみ締めつつ、腹を掻きながら廊下に出てきた。
「ふぁあぁ・・・。お、何だお前らXANXUSの使いか?」
「ボスからの引越しの挨拶だ。受け取れ。」
「おーおー、そうか。なんだかワリィな、気ぃ使わせちまって。」
「ふんっ。じゃ、届けたからな。」
レヴィは家光にそう言うや、きびすを返して去っていった。
ベルフェゴールとマーモンもその後を追う。
彼らを見送った綱吉は、父に問う。
「父さん、いったいどういうこと?」
「んー、今日からなぁヴァリアーの日本アジトが隣の家になったんだ。」
「ええーっ!な、なんでーっ!?」
「ま、理由はおいおいな。とりあえずそれ母さんにもってけよ、ツナ。俺はしょんべんしてくる。」
「も、父さん下品だよ。」
綱吉はしぶしぶ箱を抱えなおすと、台所へそれらを持っていった。
「母さん、これ貰った。おとなりの引越し挨拶だって。」
「まぁ、こんなに沢山?ご丁寧に何かしらね。」
早速箱を開けると、分厚いピザ生地に蕎麦とチーズとサラミが山盛りに乗っかっていた。
「げ、何このピザーっ!!そば乗ってるし。ってか、イタリア人の癖にアメリカンピザ寄越すなよぉ。」
濃厚な匂いに誘われたのか、風太やランボ、ビアンキらも台所に現れた。
「ツナ兄、これどうしたの?凄いいいにおいだね。」
「この箱は、ランボさんのだもんね。」
「※○×△我。」
ランボがいくつか箱を抱えて食べたじめると、つられるようにイーピンや風太、ビアンキまでがピザを頬張り始める。
朝からこんな濃厚なものを平気で口にするなんて、やっぱり彼らはイタリア人なんだなと綱吉は改めて思った。
「綱吉も食べなさいよ。おいしいわよ。」
「あ、うん。」
ビアンキに促され、恐る恐る一口食べたその味は、意外にもしっくりとベストマッチしていて綱吉を愕然とさせたのだった。
『悔しいけど、美味い。』
その後、家光やリボーン、いつの間に来ていたのかバジルまで加わって何とかピザを平らげることが出来たのだった。
ピザを片付けることに夢中になってしまったため、肝心のヴァリアーの話やらなにやらをする暇も無く、重い胃を抑えながら綱吉は登校するため家を出た。
「いってきまーす。」
「「いってらっしゃーい。」」
母や風太たちの声に送られながら、玄関を飛び出した綱吉は、いきなり誰かにぶつかってしまった。
「いてててて。す、すいません。」
尻餅をついて、誤りながら見上げれば、そこにはカラフルなモヒカンに特徴的なサングラスをしたルッスーリアが立っていた。
しかも何故か着ているものは花柄のワンピースだった。
「あら、こちらこそごめんなさい。大丈夫?」
差し伸べられた手を払って、勢い良く立ち上がった綱吉は、叫びながらダッシュで逃げ去った。
「うわぁぁぁぁ。ごめんなさいぃーっ!!!」
「あら、何あれ?傷ついちゃうわー。」
それを見送ったルッスーリアは、何食わぬ顔で隣家へと入っていった。
居間では、ヴァリアー幹部の面々が朝食を摂っていた。
どういう訳か、こちらは純和風の朝食だ。(イタリア人の癖に)
味噌汁が湯気を上げ、おしんこに焼き魚、出し巻き玉子に納豆までが食卓を飾っていた。
「ただいまー。今そこで10代目に会ったわ。」
帰宅の挨拶をしながらルッスーリアが食卓に着く。
「おかえりルッス。」
マーモンがベビー用のいすに座らされながらそれに応え、
「ねぇボス、引越しの挨拶なんであれにしたの?」
とXANXUSの方に問う。
「引っ越したときは隣人に蕎麦を施せとジジイが言っていた。」
ベルフェゴールの問いに、不機嫌そうに口を尖らせながらボソリとXANXUSが答えた。
「あいつら、あれどうするかな?マーモン。」
出し巻き玉子に手を伸ばしつつベルフェゴールが言えば、
「どうするだろうね。ベル、つまみ食いはだめだよ。」
とマーモン。
「ボスからの贈り物だ。残さず食うに決まっているだろう。」
背筋を伸ばしてお行儀良く座っていたレヴィがベルフェゴールを睨みながら言う。
「う゛ぉいっ!てめーら見てばっかいねぇでちったぁ手伝えっ!」
いままで黙々と食卓の準備を整えていたスクアーロが、各自の茶碗にご飯をよそいながら叫んだ。
「やだね、王子が家事だなんて考えらんないよ。ニシシ」
「そうだよスクアーロ。今朝くじ引きでここでの役割分担決まったじゃないか。」
「そうよねぇ。一度決まったことはちゃんと守らなくちゃよ、スクアーロ。」
「う゛ぉい、それならルッスのほうが・・・。」
「あら、あたしもちゃんと役割果たしてるじゃない。お買い物とご近所づきあい。ちゃんと主婦の役割分担しているもの。それにあたしは一家の大黒柱として夜のオカマバーでママをしてるんだから、それを助けるのは夫の勤めよ。」
「だからそれが納得いかねぇんだ。
大体だなぁ、役割がおかしいだろぉ?
しかも俺はマスオさんを引き当てたはずだぜぇ、それなのに食事の準備はおかしいだろぉがぁっ!」
「馬鹿ねぇ、今時のマスオさんは料理ぐらい出来て当たり前よ。むしろ世間の旦那さんは皆奥さんより料理が出来るのよ。
大体、料理自体はほとんどフネさん役のモスカがやってたじゃない。」
「う゛。納得いかねぇ。」
「うるせぇよ。ガタガタ言ってねぇでさっさとしろ。」
ボスに促され、ぶつぶつ文句を言いながらも手だけは止まることなく動かされ、全員にご飯が行き渡ると、全員で「頂きます。」と行儀良く食事の挨拶をして朝食が始まった。
そもそも、今朝方の雄たけびの真相はこうだ。
このアジトは、表向き日本の一般家庭を装っていなければならないので、一般家庭らしく各自家族の役割を振られることとなった。
これはXANXUSの思い付きではなく、家光の入れ知恵らしい。
そこで、家族の役割をくじにして全員がいっせいに引いた結果、
父(ナミヘイさん:引退済み):レヴィ・ア・タン
母(フネさん:翳の大黒柱):ゴーラ・モスカ
入り婿(マスオさん:主夫):スペルビ・スクアーロ
長女(サザエさん:一家の大黒柱):ルッスーリア
長男(カツオ:中学2年生):XANXUS
次女(ワカメ:中学1年生):ベルフェゴール
孫(タラちゃん):マーモン
ルッスーリアに言わせると、神の采配を思わせる役割分担が決まったのだが、スクアーロは役割のプチ設定が気に入らないらしくあの雄たけびを上げ、それが癇に障ったXANXUSが手近にあった花瓶をスクアーロ向けて投げつけたため、窓が割れてモスカが片付ているところを綱吉が目撃したのだ。
食事を終えると、スクアーロがXANXUSとベルフェゴールに声をかけた。
「う゛おぉい、準備は出来たかぁ?でかけるぞぉ。」
「「行ってらっしゃい。(ませ)」」
マーモンとルッスとレヴィの見送りの声に送られスクアーロは、二人を連れ立って出かけていった。
綱吉がいつも通り学校に付くと、クラスでは、転校生の噂でもちきりになっていた。
『転校生だって?まさかなぁ。』
綱吉は嫌な予感がした。嫌な予感というもの程、当たるものである。
その日のHRで、担任に化けたリボーンが転校生として紹介したのは、事もあろうにあのXANXUSだった。
(なーーーーーーーっ!!!転校生ってXANXUSだったのーーーっ!!!
てか、XANXUSっていったい幾つだよーーーっ!?
いくら何でも中学2年ってことは無いだろぉ!?)
綱吉の突っ込みはもっともだが、現実に目の前に転校生としてXANXUSは登場し、その事実を山本はモチロン、あの獄寺までもが笑顔で受け入れている事が綱吉には信じられなかった。
驚いたことに、XANXUSは大人しく授業を受け(ただ外を眺めていただけだが)、綱吉の不安を他所に何事も無く昼休みを迎えてた。
XANXUSは怖いし、何より面倒に巻き込まれたくない綱吉は早々に屋上に行こうと後ろの席の山本を振り返ったが、そこに山本の姿は無く、事もあろうにXANXUSの目の前で笑顔で話しかけていた。
「なぁXANXUS、これからツナ達と屋上で昼飯にするんだけど、お前も一緒にどうだ?」
(なーっ!山本何言っちゃってんのーっ!?)
「今週な、給食じゃねぇんだ。お前飯持ってきたのか?」
山本の問いに頷いたXANXUSは、携帯を取り出すと誰かにコールを始める。
イタリア語で数回の会話を交わすとXANXUSは携帯をポケットにねじ込み、立ち上がった。
「おい、案内しろ。」
「わかった。おいツナ、飯食いに屋上行こうぜ。」
「ええっ、あ、う・・・うん。」
(なんでXANXUSなんか誘うんだよ山本ー!!)
綱吉は蒼くなりながらも、XANXUSの視線が怖くてつい同意してしまった。
「あ、獄寺くんはどうする?」
助けを求めるように獄寺に振ると、
「10代目、俺購買寄ってから行きますんで、先に行ってて下さい。」
と笑顔でスルーされた。
山本、XANXUSと連れ立って、屋上へ向かう。
1年生の教室の前を通りかかったところで、XANXUSが立ち止まりタイミングよく扉が開き、少女が飛び出してきてXANXUSに抱きついた。
「あー、ボス。これから昼飯でしょ、俺も一緒に行くよ。」
(お、男言葉!?)
黒髪のおかっぱ頭にティアラを載せた少女は、良く見ればベルフェゴールだった。
(んな゛ーっ!なんでベルフェゴール女子の制服着てんのぉ!?)
目を丸くした綱吉と、まったく気づいていない山本、ちょっと嫌そうな顔をしたXANXUS、3者3様の反応を見せ立ち止まったところに、ドタドタと獄寺が息を切らしながら駆けてきた。
「10代目ー、お待たせしました。購買混んじゃって。ハァハァ」
息を整えながら顔を上げた獄寺の目の前には、女装したベルフェゴールに抱きつかれたXANXUSがいた。
だが、獄寺は綱吉のこと以外は一切目に入っていないかの様に無反応だった。
(何で気が付かないんだよ、獄寺くんも山本もー。)
屋上に到着して弁当を広げる綱吉や山本、購買の焼きそばパンをパクつく獄寺を他所に、XANXUSもベルフェゴールも座ったきり動こうとしない。
「なんだ、やっぱ持ってこなかったのか?昼飯。」
と山本。
ベルフェゴールの視線に気づいた獄寺が、
「んだよ、俺のはやらねぇからな。欲しけりゃ購買へ買いに行けよ。もっとももう売り切れちまったかもな。」
と面倒くさそうに言った所で、屋上へ重箱を抱えたスクアーロが入ってきた。
「う゛おぉい。弁当持ってきてやったぞ、ボス、ベル。」
「遅いよスクアーロ、王子を餓死させる気かよ。」
「何言ってんだぁ、折角作ってやった弁当忘れたのお前らの方だろうが。」
「久しぶりだなスクアーロ、髪切ったのな。」
「おお、刀小僧かー、久しぶりだなぁ。」
見事なまでの五分刈りになったスクアーロが、山本を振り向いた。
「前よりいいんじゃねぇ、野球するにはもってこいなのな。」
言うなりぐりぐりと頭を撫で回す山本を鬱陶しそうに払いのけ、
「う゛ぉおい!俺だって好きでこんなんなったんじゃねぇぞぉ!!」
「断髪式凄かったからね、ボスに髪の毛捉まれて燃やされたんだぜ。ねぇ先輩。」
「うるせぇベル、あの時お前らがふざけなけりゃこんなことにはなぁ。」
「いつまでもグジグジ根に持つなよ。空気読めないでボスを怒らせた先輩が悪いんだよ。
それよりお腹すいた、早く弁当食べようよ。
ボスを待たせるとまた燃やされるよ。」
ベルフェゴールに急かされて、スクアーロはいそいそと重箱を広げはじめた。
重箱の中には見事なおせち料理が詰まっていた。
(なんでおせちーっ!季節感まったくねーっ!!)
「う゛おい、お前らも食うか?」
「え、いいのか?じゃあ遠慮なく頂くのなー。お、結構上手いぜ、ツナたちも貰えよ。」
「これ、お前がつくったのかよ。」
「そんな訳あるかぁ、モスカが作ったのを俺が詰めただけだぁ。」
「えーっ!ゴーラ・モスカってそんなことできるの!?」
(っていうか、何で動いてんだよ。)
「・・・愛だ。」
XANXUSがツナの心の突っ込み対してボソリと呟いた。
どうやら超直感で心を読まれたっぽい。
「な、勝手に心読まないでよXANXUS-。それに愛って何ー!?」
「うるせぇよ、カス!(たぶんジジイの)うざってぇ無償の愛ってやつだ。
糞の役にもたちゃしねぇと思っていたが、ものは使いようだな。
ぶはっ!」
大笑で腹を抱えて転げまわるXANXUS。(コンクリートなのに痛くないのだろうか?)
「う゛おいボス、転がってねぇで早く食えよぉ。ボスの好きなタコさんウィンナーもりんごのウサギさんもあるんだぜぇ。」
(えーっ!大人なのにタコさんウィンナー!?)
「うるせぇよ、このドカスがっ!!」
「グフっ!」
転げまわっていたXANXUSからの鋭い蹴りがスクアーロの鳩尾に深々と決まった。
腹を押さえて蹲るスクアーロを一瞥して、タコさんウィンナーを貪るXANXUSに、綱吉はランボの食事風景が重なってしょうがなかった。
『タコさんウィンナーは全部ランボさんのだもんねー!!』
今にもそんな声が聞こえてきそうだった。
「おい、切り裂き王子。(女装してまで)どうして並盛中学にきたんだ?」
「王子がワカメちゃんだからだよ。
ボスはカツオ君で、先輩はマスオさん。
そう配役が決まったんだから仕方ないじゃん、王子の所為じゃないよ。」
回答になっていない回答を口にして、ボスの大好きだというりんごのウサギさんにナイフを刺した。
「はいボス、あーんして。王子が食べさせてあげる。」
夢中でタコさんウィンナーを貪っていたXANXUSだが、ベルフェゴールに差し出されたりんごには素直に齧りついた。
それを見たスクアーロがベルフェゴールに向かって吼えた。
「う゛ぉぉいっ!ベル何してんだぁっ!!それは俺の役・・・。」
言いかけたところで、XANXUSがいきなり光球の炎を投げつけ、それはスクアーロの頬を掠めて屋上のタンクを風化させた。
ブシューという音を立ててタンク内の全ての水までもが蒸発し、辺りは濛々とした水蒸気に包まれた。
「いきなり殺す気かぁ!ボス!!」
「うるせぇよ!飯も食ったし帰るぞっ!!」
「う゛おぉい、午後の授業はいいのかぁ?」
「知るか。そんなもんお前が受けとけっ!俺は帰る。」
「ボスが帰るなら、王子も帰ろうっと。」
「いきなりサボりか、さすがヴァリアー・クオリティーなのな。」
山本が言い終えないうちに、XANXUSたちの姿は屋上から消え去っていた。
屋上での爆発音におっとり刀で駆けつけた教師達に見つかった綱吉は、この後こってりと絞られることになった。
気が付けば獄寺も山本もとっくにどこかに逃げ去っていたのだ。
全てはXANXUSの所為なのに、何を言っても信じてもらえず、騒ぎを起こした罰として職員用トイレ掃除を言いつけられてしまった綱吉は、放課後一人で泣く泣く掃除をする羽目に陥ったのだった。
「どうしてこーなるのぉっ!!」
むなしい叫び声が、放課後の職員用トイレに木霊した。
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