先月8月6日に立ち寄った『全国都市再生まちづくり全国大会』にて、話題のDVD「ミニ・ミュンヘン」と、下の書籍を購入した。
この本は、全国各地の都市再生の事例紹介が中心だが、第1章の各論の中に「まちづくりとプロデューサーの役割」と題し、残間里江子氏が記した”まちづくりプロデューサーの条件”が目を惹いた。まちづくりを進める上で、このプロデューサーの存在は不可欠で、そのまちの在り様を左右するほど責任も重いが、そのぶん遣り甲斐も大きい。持続的に上手く振興しているまちづくりには、当人の自覚や目立ち方に拘らず、優秀なプロデューサーの存在が必ずある。
ここでは、残間氏の語るプロデューサーの条件を、わかりやすく咀嚼編集して紹介したい(加筆修正の上、⇒以降を追加)。
未来をひらく都市再生―日本の「かお」と日本の「こころ」を創る ぎょうせいhttp://www.gyosei.co.jp/index.html このアイテムの詳細を見る
|
●プロデューサーの仕事●
プラス面とマイナス面を冷徹に見据えながら、そこにある物や人や出来事、さまざまな価値観を編纂し、その時々のアクセントを付けて世に送り出すこと。
●プロデューサーの条件●
1)”時代の価値観”を読む能力を持っていること。⇒受信力と分析力
2)期限(時間)と資源(お金と人)と、その活動の関わる”数の行方(採算や成果)”を見据え、大きな括りとして全体をハンドリングできること。⇒俯瞰力と管理力
3)「何が欠けると成立しないか」を知り、物事に優先順位をつけること。⇒想像力と判断力
4)最終の理想型を自分の中に思い描き、実現すること。⇒企画力と実行力
5)最悪の事態に準備しつつ、関係者をマイナス思考からプラス思考に転じさせ、鼓舞できるか。⇒危機管理力と統率力
さらに、その他大勢から抜きんでるためには、以下の要素が大きく影響する。
6)やろうとしていることが、新しい価値感の創出、創造につながっているか。⇒創造力
7)マーケティングリサーチという過去のデータや前例に囚われず、チャレンジングなことができるか。⇒飛躍力と行動力
8)自分の”熱き思い”を持ち、客観的な事実に主観を重ねられるか。⇒情熱と平衡感覚、編集力
最後に、”プロデューサーに適する人材”について、「人生のプログラムが豊かな人に尽きる」と断言し、興味関心が広く、現場で何が起きているのか自分の五感で確かめに出向く人だ、としている。
以上のように書くと、こんな要件を備えた人物はスーパーマンで、どこにそんな人材がいるのか、と嘆く方もいると思う。しかし、嘆くのはまだ早い。一人でできなければ、それぞれの要素を持ったメンバーで集まり、チームで取り組むことで道が開ける。ただし、この場合、チームのメンバーが多過ぎてはいけない。複数の場合、情報共有、合意形成、意思決定を都度確かめ合わないといけないが、人数が多過ぎるとスピードが急速に落ち込むなど、マイナス要因の方が多くなってしまう。多くてもせいぜい3人が限界ではないだろうか。
…とは言え、まちづくりは決してプロデューサーだけの手で、できるものではない。
世間でよく言われるように、”まちづくりに必要な三要素=「よそ者」「わか者」「ばか者」”も、その構成員として重要な役割を果たす。これについては、後日言及していきたい。