『贋作・罪と罰』の自分の感想やら人の感想を読んで思ったことだ。
人を受け入れる人、受け入れない人。
人に受け入れられる人、受け入れてもらえない人。
罪を受け入れる人、受け入れない人。
罰を受ける人、受けない人。
そして自分を受け入れる人、自分を受け入れない人。
自分のやってしまったことに大きな罪を感じるとき、
人は自分を自分で受け入れられなくなるだろう。
そしてその苦しさゆえに罰を請うものなのかもしれない。
しかし、罪を感じない人は罰を要しないものだろう。
そして、自分で自分を受け入れられないとき、
まずは受け入れてくれる人を求めるものかもしれない。
だから、人を救うものは人と思うのだ。
そして、人に救われるだけでは本当の意味で救われたことにはならず、
自分でも自分を受け入れてやらなければ、本当の意味では救われない。
だから、自分を救うものは自分だとも思う。
溜水ってとっても不思議なキャラとしてこの舞台に登場するんだけど、
溜水という人間は自分を受け入れてくれる人が欲しかったんじゃぁ
なかろうかと思う。
彼は人から蔑まれる自分を自分をで受け入れられなかったのではないか。
(あのグロテスクな仮面が人から蔑まれてる象徴なのかなと思う)
だから人に受け入れられたかったのでは?
でも、どうすれば自分が人に受け入れられるかの術を知らなかった。
金で人の気をひくことしか彼は知らなかったのだろう。
それは彼がそういった環境で育ったせいかもしれない。
しかし、金ではどうでもならないものがあると知ったとき(智のこと)、
彼はどうしてもそれが欲しくなる。
それこそが自分に欠けていたものを補ってくれるものと
直感するのではなかろうか。
金でだめならと脅しに入った彼。
しかし、その脅しさえ智には駄目だった。
もう、彼は多分、彼女にそれ以上どうしたらいいのか分からなかったのだろう。
金も脅しも駄目、生きていく希望が見出せなくなったのではなかろうか。
だから、彼女の手で殺されるならそれでもいいと思ったのではなかろうか。
しかし彼女は帰して、でないと殺してしまうと泣き喚く。
そんな彼女に出て行けと乱暴に言う彼は、彼なりの彼女へ対する
最後の愛情だったのではなかろうか。
彼は彼なりに彼女を必要としていたのだろう。
そして彼なりに愛していたのだろう。
これから生きていく上での心の支えとして。
そして彼もまた、江戸幕府に縛りつけられていた人の一人だったのではなかろうか。
生い立ちが全く描かれてないので、すべて想像なんだけどね。(^^;)
溜水の『溜』には江戸時代の「溜」という意味もある。
とは江戸時代の差別階級のこと。
明治になってもその差別は消えなかったという。
だから、彼は日本という国自体にも自分が受け入れなれない人だと
思っていた人間なのかも知れない。
だから、彼は自由の国、アメリカに憧れていたんじゃぁなかろうか。
倒幕したとしても何も自分にとっては変化がないと悟った彼は、
それで死を選ぶのではなかろうか。
アメリカに行くのが本当の目的ではなかったのかなぁと。
彼は自分自身を受け入れてくれる誰かが欲しかったように思う。
(漢字の意味についての詳しくは下に辞書より抜粋)
と、溜水をいい人に見すぎかな?(^^;)
でも、私は思うんです。
自分を好きになることで幸せに・・・云々かんぬんって本が
多いんですけど、自分に悩む人って自分でなかなか自分を受け入れられない
からであって、まずは受け入れるためのきっかけが必要なんですよね。
「自分を好きになりましょう!」と言われて「はい!」とすぐに
切り替えられる人はそんなにいないように思います。
受け入れるためのきっかけの一つに、人に受け入れてもらえることって
大きいと思うんです。
もちろん、最終的には自分で自分を受け入れないと本当の意味での幸せや
やすらぎはなかなか感じられないものだと思いますが。
「人との繋がりの大きさ」もこの芝居では描いているのかなぁと思いました。
以下、辞書の抜粋
■<溜>とは・・・・
1. 必要な力を集中させること。
2. ためておく場所。とくに肥料用の糞尿をためておく所。肥えだめ。
3. 〔音〕 リズム全体、また特定の楽器のリズムを微妙に後ろにずらすことで生まれるリズムのニュアンス。
4. 「溜(ため)」に同じ。江戸時代、頭の管轄のもと、重病や幼少の犯罪人を平癒もしくは成長するまで収容した施設。浅草・品川に置かれた。
■<>とは・・・・
1. 江戸時代、えたとともに士農工商の下におかれた被差別階層。また、それに属する人。遊芸や刑場の雑役などに従事した。明治四年(一八七一)の太政官布告で法的には平民とされたが、社会的差別はなお存続した。
2. 仏語。人間でないもの。天竜八部衆や悪魔などをいう。
3. 出家遁世した僧。世捨て人。また、非常に貧しい人。
<松たか子>■『贋作・罪と罰』■
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