Kent Shiraishi Photo Blog

北海道美瑛町の大自然や身近な写真を、
海外へ配信するArtistの呟き。

National Geographic Photography Contest 2012 vol.2

2012年01月10日 | National Geographic
National Geographic Photography Contest 2012 vol.2
作品完成裏話


先日皆さんに今年のコンテスト参加をお勧めしましたら、
すごい反響がありました・・・。

うれしい反面、質問等が多過ぎて、少々困惑しています。
とても全部にお答えできませんので・・・。
かと言って一部だけ掲載するのも…ですから掲載はしません。

そのかわり、似たような質問も多いので、少々ここで答えさせて頂きます。

その前に前回も書きましたが、今年に入ってからもずっと、
世界中で紹介・掲載され続けています。とても全部見れませんし読めません。
本当にすごいです、ナショジオパワー!

しかも面白いことに、
コンテストで落選した作品も相当取り上げられています。

もちろん前回も書きましたが、130ヵ国、2万点以上の応募作品があり、
私も自分なりに審査員になった気持ちで鑑賞しましたが、
その中でも200点ほどは大変優れた作品がありました。

次のサイトをご覧下さい。

★「National Geographic Photo Contest 2011

一作品以外、全て落選した写真です。
もちろん素晴らしいですね!
入賞してもなんらおかしくない作品ばかり。

またつい先ほど5時間位前に、ロシアのサイトでも紹介されました。

★「National Geographic. Лучшие фотографии декабря2011

面白いことに、ナショジオ2011年の最高作品というタイトルだそうですが、
コンテストの入賞作品で紹介されているのはグランプリのトンボと私の作品だけです。

最後に今回のコンテストの応募作品だけで作られた「You Tube」、
よかったらご覧下さい。
制作者の好みで作られていますので、入賞作品はほんの数点しか入っていません。

ちなみに私もここでは落選です。(笑)
しかしなかなか選出眼は良く、私が選んだ約200点も同じような作品でした。

★「NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTOGRAPHY CONTEST 2011

ご覧頂けばお分かりのように、とてもクオリティの高い作品が並んでいます。

これはもちろんプロも多数参加しているからですが、
こうやって改めてみると、このコンテストの人気の高さ、
そしてレベルの高さが分かります。

実は「ナショジオ」が日本版出してからまだ10数年です。
日本ではそこそこの人気ですが、世界のインテリ層の間では相当な人気です。

そもそもナショナル・ジオグラフィック協会は、
電話の発明で有名な科学者ベルら仲間で、
非営利団体を結成したところからスタートしており、
そこでの会員誌が創刊号です。

よって世界中の大学関係者や教養ある方達の間では特に人気があります。

前回も書きましたが、カメラメーカーや他のコンテストとは、
その辺の違いが大きく、結果として取り上げ方も世界的に大きく、
また写真に直接関係ないところでも取り上げてくれます。

しかも上で紹介したように、選外作品すなわち入賞しなかった作品さえも、
色々な所で取り上げられるのです。
こんなコンテストまず他には絶対ないでしょう。

プロアマ問わず、写真家ならもっとも挑戦すべきコンテストの一つであると、
私はそう感じています。

ところがこの素晴らしいコンテストに、今回日本人の応募が少なかったのは、
日本版「ナショジオ」、もちろん本もサイトも含めてですが、
どちらもハッキリ言って宣伝不足で、編集者の「意識」に疑問符がつきます。

しかし2012年の今年は、
私の入賞がきっかけで、多くの方が応募してくださる事を期待しております。

さて前置きがずいぶん長くなりましたが、
今回質問が多かったのは、私の入賞作品の撮影データについてです。
これは外国からも多数問い合わせがきております。

たいしたことでないのでここに書いておきます。

作品「Blue Pond & First Snow

★カメラ=Nikon D3

★レンズ=AF-S 24-70mm f2.8G

露出マニュアル:F/16. SS1/6秒.
ISO=200。色空間=AdobeRGB。RAW撮影。三脚使用。

まあこんな感じです。
皆さん、特に結構ご年配の方はこういうデータを聞きたがります。(笑)

★さあここから書くことがとても大切です。

実はカメラは高級機でなくても、Nikon D90でも、D5000でも、
もちろんEOS Kissであろうと同じ絵が撮れます。
その程度のカメラの差など全くありません。

それより上で書いたデータで重要なのは最後の行、
ISO=200。 RAW撮影・・・この2つです。

どちらも撮影後に変更・微調整できないからです!

RAWで撮影するのは当然!言うまでもないことです。
撮影後に画像を劣化させずに「現像」出来るのはRAWデータだけです。

ISOは200。これがD3の最低感度なので他の選択肢は僕にはありません!

実は昼間の風景撮影で意味もなく高感度を使っている方がいます。
これは止めた方が良いと思います。
大きなサイズに印刷した際、S/N比や解像度に影響が出る場合があります。

外国からプリント注文が来る場合は、A2やA1等大きなサイズが多いです。
撮影時は常に最高画質になるよう注意して撮るべきでしょう・・・。

さて実はこの作品は、ある企業の商品イメージのために撮りましたが、
わけあって没になり、仕方なく一昨年、
海外サイトに適当に投稿しましたら人気が出ました。

その段階では「色をコントロール」していなかったので、
作品としては未完成でした。

もっとも写真サイトは小さな画像で投稿するので、適当でもOKなんです。

しかしある著名な方に見せたら、世界のコンテストに出せというので、
そこからは真剣に「現像」しなおしました。

その結果、納得いく作品になるまでに数ヶ月かかりました。

では何がそんなに難しかったのか?

・・・「色」です、もちろん。

しかも雪の色、すなわち白。
そして青色とのコンビネーション!

・・・これが難しかった・・・。

皆さん「白色」がどれくらい難しいか想像出来ますか?

実は極論で言えば、真っ白などというのは存在しないのです。
もしほんとに真っ白なら、印刷したら全て紙の色、インクのない色です。

だから皆さんのプリンターには「白インク」はないでしょ!

例えば通常見ている雪の色でも、晴れた日は青みがかったり、
曇りはグレー、夕焼け時は赤みが強い等、何らかの色が被っているのです。

それを自分の観た記憶色を元に、
いかに自然に、しかも青色の池とのバランスを考えながら創作するか、
「現像」なんですが、まさに「創作」です。

残念なことに、人間の眼は、
二つの色を比較することは出来ても、一色を正しく評価することは出来ません。

簡単に言えば、「相対評価は出来ても絶対評価が出来ない」。
それが人間の眼です。

よって毎日、しかも環境光の変化も考慮しながら作業は続けました。

もちろん全くお金にならないのに、そのことだけしていられる訳もなく、
よって一日のうち、時間を毎日決めて「現像」を続けたのです。

毎日毎日色を全て数字化して組み合わせていきました。
さらに確認のため、目視するために印刷して、比較を繰り返し行いました。

そうやって最後まで納得するまで現像には時間をかけました。
こういう努力がなかったなら、まず今回の受賞もなかったことでしょう。

もちろん撮影も、雪が降りそうな日に、
誰もいない池で朝から雪が降るのを待ちました。

運良く雪が降り出して、私一人で撮影していたんですが、
そろそろ撮影終了という頃、ある有名な写真家が後ろから来ました。
しかし時既に遅し!吹雪になりました・・・。

もちろんこのようにシャッターチャンスは大切です。
これは言うまでもありません。

しかし現代の写真術では、くどいようですが、
「撮影半分・現像半分」です。

また私の中では一般的に言われる「加工」と「現像」は明確に違います。

風景写真における「現像」とは自然界に存在する色で作品を創作すること!

ようするに人の眼で自然に見ることが出来る色です。
よってありえない「合成」も現像とは考えません。

写真を見て何か違和感を感じたり、不自然に思えるのは、
現像ではなく色をいじっただけの加工になっているからです。

もちろんこれは風景写真のはなしです。
フォトアート作品はまた別です。

結論として、現像技術なくしてクオリティの高い作品は生まれない!
私はそう思います。

以上長々書きましたが、
今回は写真術にとって大切な事を書いたつもりです。
このブログをいつもお読み頂いている皆さんのお役に立てば幸いです。

実は明日より猛烈に忙しくなり、しばらくこちらをお休みします。

ではぜひ今年の秋、
皆様の挑戦を期待しております。

追伸

一つ大切な質問に答えるのを忘れていました。

★「ナショジオではどこまで加工が許されるのですか?」

同じような質問が多数来ていました。
上でもある程度書いたつもりですが、ナショジオの投稿規定の序文を書いておきます。

I encourage you to submit photographs that are real.
The world is already full of visual artifice, and we aren't running Your Shot to add to it.
We want to see the world through your eyes, not the tools of Photoshop.

貴方がリアルな写真を投稿するよう頑張って欲しい。
世界は既に視覚的な加工に溢れている。
貴方の作品にはそういう事を加えて欲しくない。
私達はフォトショップの加工ではなく、貴方の目でみた世界を見たい。

まあ簡単に訳せばこういうことでしょう・・・。

現在はまさに加工の時代です。国内・海外の写真サイトもそれで溢れています。

しかしもし貴方がナショジオに投稿するつもりなら、
そういう作品はまずほとんど落選します。くれぐれも注意して下さい!

要するに皆さんがすべき事は、
私が上で書いたように、「加工」ではなく「現像」すれば良いのです。
その違いはもうお分かりだと思います。

頑張って下さい!

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
頑張ります! (ちまき)
2012-01-23 19:56:23
そのお言葉、
肝に銘じてこれからも頑張ります。

ハービーさんお身体どうかご自愛下さい!
そしていつまでもお元気でご活躍を!!!
返信する
これからが本番、ご活躍を! (ハービー・山口)
2012-01-23 19:36:41
これからも自分の信念、情熱,謙虚さを持ち、素晴らしい作品を撮り続けて下さい。
返信する
ありがとうございます (ちまき)
2012-01-23 17:50:03
ハービーさん、お久しぶりです。

いつもご活躍されていますのを、
嬉しく拝見させて頂いております。
またその節は心温まるコメントを頂きまして、
誠にありがとうございました。

私の方はこれまで静かな田舎暮らしをしていまして、
アマチュア写真文化の向上に微力ながら努めてまいりました。

ところが恥ずかしながら、
お読み頂いたような事になりまして、
静かな暮らしが一転しました。

しかし今後とも初心を忘れることなく、
自分の目標・夢に向かってひたすら突き進んでいくつもりです。

また人気のありますハービーさんのFacebookに、
私など取り上げて頂くのは恐縮です。

私は今までどちらかと言いますと、
やや閉塞的な日本の写真界になじめず、
どの団体にも所属しておりません。

ほんとの一匹狼、いえいえ一匹犬なんです…笑

ですから目線はいつも、
日本よりも世界に向けています。

同じように古い日本的発想に馴染めない若者、
また銀塩時代の写真術から脱却したい、
中高年のアマチュア写真家の一部に支持を得て、
その方達に写真術の指導をしながら、
一方で目標となれるよう自らも切磋琢磨してきました。

今回の受賞によって、
多少なりとも自分の写真術に自信が持てる様になりました。

また今まで信じて私の指導を受けていた皆様にも、
少しは励みとなり、さらに今後の目標として、
次回以降のコンテストに大勢参加して下さることを期待しております。

今は選者の方々、そして驚きの一言ですが、
まさに世界中のWebで掲載され続けており、
ただただ感謝するのみです。

本当に嬉しいことでありがたいことです。

これを糧に、今後も自分のみならず、
アマチュア写真家の皆さんに、少しでもお役に立てますよう、
自分なりに頑張りたいと考えております。

いつもお気にかけて下さり、ほんとにありがたいことです。
深く深くお礼申し上げます。
ありがとうございました!


返信する
ご活躍嬉しく思います。 (ハービー・山口)
2012-01-23 10:57:10
一時休止されていたちまきさんのブログが再開されていて、またご活躍の模様を確認出来、とても嬉しく思いました。以前、私のエッセイ集とT君のことについて書いて頂いて、その内容に感動致しました。ちまきさんのブログのことを、私のTWITTERのフォロワーの方が、他の方々に伝達しているようです。FACE BOOKなどに取り上げさせて頂いて宜しいでしょうか?お気を悪くされませんでしょうか?
返信する
貴重なポイント講義でした! (KEN_yaokohama)
2012-01-11 08:35:04
ちまきさんのおススメで昨年末のナショジオのフォトコンストへ3作品を出しています。今年以降も応募して行く積りです。
自分のなかでは作品創りの指標として500pxとナショジオは欠かせないものになって来ました。

ちまきさんの大活躍される姿を誇りに姿を見失わないようにしたいと思います。よろしくお願いします。
返信する
貴重な講義 (あるば)
2012-01-10 21:44:01
ちまきさん 忙しい中での講義、有難うございます。
今年も出来るかぎり自分の撮影に反映できるように熟読してがんばります。
以前に比較してみると自分ながら「色」に対する考えはがらりと変わってきました。
これは自分を褒めていいほど真剣に取り組んでいます。
これからはそれを作品に反映できるよう努力あるのみです。
これからもどうぞよろしくご指導のほどお願いします。
返信する