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米アップルVSアマゾン─デジタルコンテンツをめぐるし烈な戦い

2010-09-04 | ニュース
米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムと米コンピューター・電子機器大手アップルのデジタルメディアをめぐる攻防において、電子書籍と音楽に加え、テレビ番組が新たな戦場として浮上している。

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アップルのスティーブ・ジョブズCEO(左)VSアマゾンのジェフ・ベゾスCEO
 アップルは1日、一部のテレビ番組を1本当たり0.99ドル(約83円)でレンタル配信すると発表した(関連記事)。その数時間後、今度はアマゾンが、同社のビデオ・オン・デマンド(VOD)サイトで配信している同種のテレビ番組の販売価格を、1本当たり2.99ドルから0.99ドルに引き下げると発表した。しかも、アップルが番組をレンタルするのに対して、アマゾンは視聴期限なしでの販売だ。

 「必ず他社の競合製品と同等、あるいはそれを下回る価格で提供するのが、われわれのやり方だ。市場は絶えず、めまぐるしく変化している」と、アマゾンの音楽・動画部門責任者、ビル・カー氏は2日に行われたインタビューで語った。

 アマゾンの値下げに関して、アップルはコメントを控えるとした。

 大手IT(情報技術)企業による価格競争は、ユーザーが観たい動画を観たいときにいつでもインターネット経由で利用できる、有料オンデマンドサービスに対する消費者の興味を一挙にかき立てる可能性がある。

 だが、一方で、アップルやアマゾンにとって、オンデマンドサービスで配信するテレビコンテンツの品ぞろえを左右するメディア大手を、市場から駆逐しかねない可能性がある。一部メディア企業幹部は、サービスの低価格化によって、いずれ既存のテレビ事業が衰退に追い込まれかねないことを懸念している。

 アマゾンとアップルはいずれも数年前から、ユーザーがインターネット経由で動画を1本単位で購入またはレンタルし、テレビやゲーム・携帯端末機器で視聴できるようにするサービスを提供している。

 だが両者の争いは、ケーブルテレビや衛星テレビ局と、米ネットDVDレンタル大手ネットフリックスや米インターネット検索大手グーグルをはじめとするIT企業との、より広範な競争の一部を構成しているにすぎない。

 このような中、アップルが1日に「Apple TV(アップルテレビ)」の最新モデルの99ドルでの販売と、米ニューズ・コーポレーション傘下のテレビ局フォックスとウォルト・ディズニー傘下のABC、ABCファミリー、ディズニーチャンネルの一部テレビ番組のレンタル配信を発表したことで、競争はさらにヒートアップしている。

 アップルやアマゾン、その他IT企業から、コンテンツのライセンス使用の許可を求められているテレビ局側の対応は、各社でばらつきがある。

 タイムワーナーなどの一部メディアは既に、ケーブルテレビや衛星テレビ局と足並みをそろえ、加入者のみを対象にネット経由で一部の番組を提供している。一方、米ゼネラル・エレクトリック(GE)傘下のNBCユニバーサルなどは、大量に保有するテレビ番組の一部をネット経由で広告と共に無料配信している。

 だが、そうした立場さえも既に変わってきている。無料配信するコンテンツの数を減らしたり、自社でコンテンツの有料配信に取り組む企業も出てきている。

 アップルは既に、そうした対応の分裂に直面している。ニューズ・コーポレーションやディズニーはテレビ番組を0.99ドルで実験的に配信することに同意しているが、その他の大手メディアはこれを拒否している。

 一部の経営幹部は、そうしたレンタル配信は、メディア企業に対し、現在の収益の2本柱である広告料とケーブルテレビ利用料に依存しないビジネスモデルへの脱却を促す一歩になる可能性がある、と述べる(ニューズ・コーポレーションはウォール・ストリート・ジャーナルの親会社)。

 あるメディア企業の幹部によると、価格競争によって、少なくとも一部メディアは、現在アップル経由で1本当たり1.99ドルで販売している既存番組の配信を断念せざるを得なくなるだろうと述べる。

 また、別のメディア企業幹部は、大手IT企業2社の争いは新たなビジネスチャンスを生み出す可能性があるとし、「しばらくは喜んで成り行きを見守るつもりだ」と述べる。同幹部は、メディア企業が恐れているのは、音楽業界のように、アップルなど1社のみがコンテンツ配信に関して圧倒的な主導権を握ることだという。したがって、アマゾンの参戦は大歓迎だという。

 「iPod(アイポッド)」や「iPhone(アイフォーン)」、「iPod touch(アイポッド・タッチ)」といった1台で複数のメディアに対応可能なマルチメディア携帯端末の拡販をもくろむアップルにとって、動画コンテンツを手ごろな価格で確保することは不可欠だ。

 アップルは現在、ハイビジョンのテレビ番組は1本当たり2.99ドル、映画は4.99ドルで販売しているが、同様の番組が、動画配信サイト「Hulu(フル)」や、ネットフリックスの有料サービスの1部として無料で視聴できるとあっては、利用者を増やすのは難しい。

 アマゾンは、新たな顧客獲得と常にどこよりも安い価格を提供し続ける企業を目指して、さまざまな製品に関して積極的な値下げ攻勢を展開している。同社は現在、7万5000種類の映画とテレビ番組を提供しており、それら動画はPCやテレビをはじめ、さまざまな端末機器で視聴可能だ。

 アマゾンのカー氏は、値下げによって、ネット経由の動画配信サービスの普及がどの程度進むかについてはコメントを控えるとしたが、動画の理想的な価格については「まだ分からない」と述べた。

記者: Geoffrey A. Fowler and Sam Schechner

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