チャイナMBAマネジメント協会

「CMMA: China MBA & Management Association)」

ジャパントリップについて(1)

2012-10-23 | 清華大学MBA

お久しぶりです、清華大学MBAの河野仁です。
随分長い間アップデートしていませんでした。
夏のインターンシップ@大連あり、試験あり、意外に2年生になった今学期も宿題やCompetitionあり・・・
という言い訳です。

さて、今回はジャパントリップの記事を2回に分けてお送りします。
元々はBiilion-Beatsという団体向けに書いた記事ですが、
そこ向けの記事として趣旨がちょっと違うということで
大幅加筆修正を求められている最中です。
ただしCMMA向けの記事としては、価値があると思うので、アップします。
尚、加筆修正後のBillion-beats版も後ほどアップする予定です。


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「最近、中日関係が悪化しているけど、これって一時的なものだし、私たちはこれからも友達。もし何か困ったことがあったら遠慮なく連絡して。」(原文翻訳)

上記のメールは、今年6月私が企画した6泊7日のジャパントリップに参加してくれたクラスメートから送られてきたものです。日中関係の悪化を受けて、すぐにこういったメールを送ってもらえるだけでも、苦労の多かったジャパントリップを企画して本当によかったと、感じています。

<きっかけ編>
なぜジャパントリップを企画したのか。それは、現在の一筋縄ではいかない日中関係にあります。領土問題等について、日本人の中には、中国政府の高圧的な態度に対して違和感を覚えている人も少なくないと思います。そして、多くの中国人が反日感情を鮮明にし、反日デモに参加していると想像しているかもしれません。
しかし、実際に住んでいると分かることですが、反日デモに参加して強硬な姿勢を取る中国人というのはごく一部にすぎません。また、政府が醸成する社会的な「空気」感によって、声高に親日だと言わないまでも、日本の文化・生活・製品に対して憧れを抱く中国人も意外に多くいます。
つまり、一次情報(直接的な経験や伝聞等)ではなく、二次、三次情報(マスコミ等からの間接的な情報)のみを受け売りしてしまうと、「中国政府けしからん=中国人“全員”けしからん」という歪んだイメージに陥りがちなのです。
そして、このようなことは中国人に関しても当てはまります。中国では毎日のように、領土問題に関して、「日本政府けしからん」という報道がされています。小さい頃から学校で、日中戦争で中国人は悲惨な目に遭ったと教わり、且つ上記のような報道を、それこそ朝から晩まで目にしたら、一般の中国人(中国人の多くは農村出身であり、きちんとした教育を受けたことのない人も多くいます)は「日本政府けしからん=日本人“全員”けしからん」という思考になってしまいがちです。

他方で、優秀だと言われる大学に通う学生の多くは、厳しい情報統制にも関わらず、主体的に情報を収集しようとしているため、政府やマスコミの言うことを真に受けません。そして彼らは、社会的な雰囲気に惑わされることなく、依然として日本の生活、文化等に憧れを抱いていることが想像以上に多いのです。
私はそんな彼らのために、直接的な経験として日本を知ってもらう機会を作りたい、もっと日本を理解し好きになってほしい、そしてそれが草の根レベルで日中関係の改善に役立ってほしいと願い、ジャパントリップを企画することにしました。

通常、MBAの学生が主催する○○トリップというのは、企業訪問がメインになります。しかし、ある国を理解して好きになるということは、食や文化、そして人との出会いが主なきっかけではないか?そこで、今回は「日本を知ってもらう」ために文化体験を旅のメインにするこしました。
そして、それを実現するには、旅行会社ではなく、個人で企画する方が、観光名所巡りだけに留まらない“リアルな”日本の姿を知ってもらえると思い、妻とふたりで計画を始めました。

<観光ビザ取得編>
MBA1年目が終了する6月中旬に訪日する計画だったため、チケット確保とビザ申請の期間を考慮すると、少なくとも1ヶ月前の5月中旬には参加者を確定する必要がありました。多数の応募がありましたが、最終的には、中国人(女性)7名、韓国系アメリカ人(男性)1名、シンガポール人(女性)1名、マレーシア人(男性)1名、日本人2名の計12名でジャパントリップを行うことにしました。

準備で最も気がかりだったが、中国人の観光ビザ取得です。「中国人が日本に旅行する際のビザ発給基準が大幅に緩和されたので、より多くの中国人観光客が訪日することになる」という報道を日本で多く耳にします。しかし、今回旅行の手配をする中で、一般の中国人が日本へ旅行するのはまだまだハードルが高いと強く感じました。というのも、この観光ビザの取得が非常にくせ者なのです。
主な必要書類(コピー)は、
パスポート
护口(日本の「戸籍謄本」に相当)
就業証明書(学生の場合、在学証明書)、及び就業先の営業許可証
財産証明書
5万元(=約65万円)以上の銀行預金残高証明書
(尚、ビザ申請日からビザ失効日、つまり日本からの帰国日まで、預金残高は少なくとも5万元を維持し続けなければならない)
その他資産(例:不動産、自動車等)の証明書
です。これらの書類に基づいて日本大使館による審査が行われ、審査に通過した中国人のみが訪日を許されます。

さらに、観光ビザの場合、旅行代理店(中国人が訪日する場合、日本大使館が指定する旅行代理店を通してビザを申請しなければならない)が指定する口座に保証金を預ける必要があります。この保証金は、上記の財産証明にある銀行預金とは別に預けなければなりません。
保証金の金額については、旅行者の財産状況やバックグラウンドによって、平均的に1人5万元(約65万円、北京市の2011年平均年収に相当)から10万元(約130万円)と言われています。例えば、預金残高が5万元を大きく上回っていて、不動産と自動車を保有し、さらに公務員、政治家、または大手国有企業で働いている場合、保証金の金額も小さくなります。さらに本籍地(尚、本籍地を変更することは非常に難しい)も保証金の金額に影響を与えます。誤解を恐れずに言えば、本籍地の省や都市の規模が小さいほど保証金の金額は上がり、特に内陸部、自治区、南部の一部の省が本籍地であると、保証金の金額が上がる傾向にあるようです。なぜ保証金が必要かと言うと、日本を訪れた時に行方をくらましてしまう中国人が、以前より減少しているとは言え、まだまだ存在するためのようです。
今回は、一人一人に保証金を預けてもらうことがかなりの負担になると考え、私が中国人全員に対して個人保証を行うことで、彼らが保証金を預ける必要はありませんでした。ただし、万が一彼らが日本で逃亡してしまった場合、逃亡者1名につき、旅行代理店が事前に決定した保証金を私が支払う必要がありましたが。

こうして振り返ってみても、中国人が観光ビザで訪日するというのは金銭的、時間的(書類の準備、ビザ審査所要日数2週間弱+パスポート受渡のため旅行代理店まで往復)、そして心理的な負担が相当大きいのです。「中国人観光客への観光ビザ取得条件が大幅に緩和」という見出しがいくら日本の新聞に踊っても、一般的な中国人にとって、日本はまだまだ近くて遠い国だと感じました。

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