COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

限りある地球に住む一地球市民として、微力ながら持続可能な世界実現に向けて情報や意見の発信を試みています。

未来への提言第10回「地球温暖化に挑む」

2007-05-19 17:30:24 | Weblog
最新のテレビ番組情報は前の記事です。

 このブログで何度か紹介してきた、世界のキーパーソンに徹底インタビューして、21世紀の未来に通じる道しるべを提示するシリーズ番組の第10回(5月20日(日)22:10-23:00 NHK衛星第一)に、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)議長のラジェンドラ・パチャウリ博士が登場します。博士は、環境工学と資源経済学の専門家で、インドのエネルギー研究所の所長を務め、初めてアジアから選出されたIPCC議長として、深刻化する危機を訴えてきました。ガンジーを尊敬するパチャウリ博士は、欧米一辺倒ではなく東洋の知恵を生かした環境対策の必要性を呼びかけています。番組の中で、パチャウリ博士から最新の科学的データに基づく地球温暖化の実態と、それに対する処方箋について、じっくりと提言を聞くよい機会だと思います。

[参考情報1.温室効果ガス排出の現状と未来予測]
 温室効果ガスの約8割を占める二酸化炭素の世界排出量は、2004年値で265億トンです。今後、温室効果ガス排出削減策をとらない場合、2030年までに2000年値より25~90%増加すると予測されています。今後、破壊的気候変動の発生を避けるには、今世紀半ばまでの平均気温上昇を2~3度、大気中温室効果ガス濃度なら、二酸化炭素濃度に換算して550ppm以下(産業革命前の値の倍相当)に抑える必要があると考えられています。二酸化炭素だけで380ppm弱ある現在でも様々な異常気象が感知されているのに、こんな高い想定で大丈夫かと心配です。しかし、この目標達成のためには、二酸化炭素排出を2030年までに減少に転じさせ、2050年には排出量を2000年値の5%増~30%減の範囲内に留める必要があると想定されています。

[参考情報2.IPCC報告書の概要]
 IPCCは、今月初めにタイのバンコクで開かれた会議で、温暖化対策を協議する第3作業部会報告書を採択しました。この報告書は解決策として、エネルギー供給、運輸、建築、産業、農業、林業、廃棄物分野にわたる温室効果ガス排出削減技術の開発、実用化、普及をあげています。削減に要する費用は二酸化炭素1トン当り20~80ドルで可能と推定されています。これは2030年時点で世界の国内総生産(GDP)を約0.6%低下させますが、対策を怠れば温暖化の進行による災害被害発生の可能性が高くなります。2050年までの気温上昇を3度まで許容する場合の推定GDP低下は1.3%です。2度程度に止めるには、現在より排出量50%削減のため、大幅なコスト増が見込まれます。

[備 考]
 IPCC報告書といっても、アメリカや中国など排出削減に消極的な国との妥協の産物であり、とても十分なものとは考えられません。18日付けの毎日新聞に、日本を含む8カ国共同研究により、「人間活動の影響で強まった風が地球規模で大気や海洋の循環を変化させ、南太平洋の二酸化炭素吸収力が、1981~2004年の間に年平均800万トンずつ減少し、現在は殆ど吸収していないことが分かった」という記事がありました。5月18日付けのアメリカの科学雑誌Science 電子版にこの記事が掲載されています。

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2 コメント

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Unknown (NIKI)
2007-05-21 23:10:08
二酸化炭素の排出量が増え、温室効果ガスが充満すると、地球にどういった変化を及ぼすのか、或いはどうすれば排出量が減るのかははっきりとはわかりません。
シカシ、メディアでこれだけ騒がれ、国際的な場でも話し合われている内容なので、どんな人でも、このままでは危険だとわかっていると思う、なのに「楽」を求めると動けない、一人一人の意識を利潤志向から変える時代まで来ているように感じます。
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NIKIさんの返事 (coccolith)
2007-05-22 23:50:07
 球体の地球が自転すると、大気が影響を受けて赤道付近では貿易風(東風)が吹き、中緯度では偏西風(西風)が吹きます。自転と大気の動きが海洋に影響を及ぼし、それも暖かい表層と冷たい深層をつないで世界の海を巡る流れを生みます。このような大気と海水の大循環ゆえに、温暖化で平均気温が上がるといっても、地域によって温暖化の影響は著しく異なります。赤道付近で海水温が上がれば上昇気流が強まり、今までより強い台風やハリケーン発生頻度がまし、海流の流れの変化で地域によって強い寒冷化/温暖化、湿潤化/乾燥化が起こる可能性も危惧されています。つまり異常気象や急激な気候変動による被害が起こりやすくなるのです。
 排出量を減らすには、エネルギー効率を高めるより、総エネルギー消費を削減することを重視すべきでしょう。仮に世界中の自動車を燃料電池車に変えられても、道路網などインフラ整備のためのエネルギー消費や森林伐採をすれば、排出量は増えてしますでしょう。
 御説のように一人一人の意識を利潤志向から変える必要がある時代になっていると思います。価格を現在の経済指標で評価するより、環境への影響も勘案すべきなのです。食糧増産で山の木を切りすぎて土砂災害が起こった中国では、政府が一本の立ち木は3本の丸太の価値があると認めて、畑を潰して木を植える政策を進めています。
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