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なぜ日本は脱原発に舵を切れないのか?日独をよく知る米女性科学者が見た日本とドイツ

2012-12-28 23:42:58 | Weblog

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 12月15、16日には日比谷で脱原発世界会議2(2012年1月に横浜で開催された脱原発世界会議に続く会議)が開催されました。会議会場で「ドイツは脱原発を選んだ」という小冊子(岩波ブックレット No. 818、¥500)を購入してきました。脱原発に積極的な方々の多くがご存知だと思いますが、未だご存知でない方もおいでかと思うので、簡単に紹介したいと思います。

 著者のミランダ・A・シュラーズさんはアメリカ生まれで日本に留学経験があり、日本語を含む数ヶ国語に堪能な方です。現在はドイツ在住で、ドイツベルリン自由大学・環境政策研究所長、2011年からドイツ政府原発問題倫理委員会委員の任にあります。このようなキャリアから、ドイツと日本を相対化して眺めて、以下のように述べています(本文50~51頁)。



 日本の現状をずばり言い当てられた思いがします。シュラーズさんが参画している原発問題倫理委員会は17人のメンバーからなるメルケル首相の諮問機関で、現在使っているエネルギーが次の世代や他の国々に及ぼす影響など多くの課題を検討しました。エネルギーと倫理と題した第三章の記述を要約してみます。

 第一はリスクの問題で、今日のエネルギー制度は地球温暖化をもたらしているので倫理的でなく、他国からエネルギーを輸入してまで経済を回していく必要はあるのかが問題視されました。また、原発は発電時に温室効果ガスを排出しないが、問題が起こった時のリスクは他のどんなエネルギーよりも大きく、事故があった場合の影響は一国にとどまらず、世界規模になることです。
 第二は原発から出る放射性廃棄物の放射能が現世代だけでなく、何世代にもわたって残ることです。

 以上のことから、原発問題倫理委員会は、メルケル首相に以下のように答申しました。

◎倫理的なエネルギー制度をつくりたいのなら原子力はやめた方がいい。
◎地球温暖化をもたらすエネルギーもやめた方がいい。
◎それらの使用を同時にやめるとすれば、ドイツの社会に一時的負担がかかるが、次の世代のことを考えるなら、やはりいまその方向に舵を切り、投資をする必要がある。


 投資をするなら自前でつくれるエネルギー、つまり再生可能エネルギーのためのインフラづくりです。原発問題倫理委員会は、その割合を100%まで引き上げるのに時間がかかるのは明らかだが、少しずつそこに力点を移していくべきだと、答申したのです。

 この冊子は岩波ブックレットで出版されているように、51頁までがシュラーズさんの文章で、53~63頁は市民エネルギー研究所による解説がついています。比較的短く分り易い読み物なので、未だの方にはご一読をお勧めします。

 近いうち解散の文言にこだわった野田前首相の決断で行われた総選挙で、国会内の政界地図は一変しました。国民の多くが将来的脱原発を望んでいるというのに、脱原発を掲げる政党の候補者の乱立で票が分散し、それほど得票率の高くなかった自民党の候補者が圧倒的多数で当選してしまいました。選挙期間中は原発隠しに徹した自民党中心の安部内閣は、原発推進派議員を入閣させ、民主党政権下で細々進められていた脱原発向け路線の存続さえ危ぶまれる状況です。期待を集めて発足した「日本未来の党」が総選挙で惨敗、早々と分党になってしまいました。野田前首相突然の決断で、準備不足の中で拙速で結党した無理が露呈されたといえるでしょう。しかし、分党した日本未来の党は、多くの国民の希望や意見が自発的に集約されてできたものではなかった点で、早々と分党したのは良かったと受け止めることもできます。既成政党の枠にとらわれない国民の希望が結集されて、脱原発への潮流が生れて行くことが大切でしょう。

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