
はしがき
ローマクラブは成長の限界の提言(1972)によって、人口増加と技術革新に伴って増大を続ける人類活動の環境影響に警鐘を鳴らしました。産業革命以来、増加を続ける大気中温室効果ガスがもたらす温暖化の脅威は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC、1988)、リオの国連環境開発会議(地球サミット、1992)、第3回気候変動枠組条約締約国会議による 京都議定書を採択(1997)などによって提起され続けてきました。今世紀に入ってからは、ゴア元アメリカ副大統領の制作した「不都合な真実」や、スウェーデンで制作された「映像詩プラネット」が迫力の富んだ映像を通じて、一般市民の間で温暖化の脅威が広く知られることになりました。しかし、まだ温暖化を抑え込む有効な施策が実行されるに至っていません。それどころか、人類は従前のように炭素依存の経済発展を追求し続け、温暖化による様々な影響が世界各所で顕在化してきまた。端的な例は、最近フィリピンを襲った超巨大台風30号がもたらした被害です。
シリーズの構成
11月29日からBS1で、国際共同制作「スペースシップアースの未来」4回シリーズの放送が始まります。スペースシップアースとは、50年前にアメリカの思想家リチャード・バックミンスター・フラー(Richard Buckminster Fuller、1895-1983)が地球を宇宙船になぞらえ、人類はそこに乗り合わせた運命共同体であるとの考えにもとづいて名付けた呼び方です。番組では宇宙船に見立てた地球の内部を、人間が暮らす「客室」、化石燃料が貯蔵されている「燃料タンク」、水・大気・生物の部屋「客室維持装置」という3つの部屋に分けて検証してゆきます。そこから見えてくるのは、46億年かけて生み出された食物連鎖などの地球システムが、産業革命以降のわずか250年で壊されようとしている実態です。人口の増加に伴う都市の過密化によって、エネルギー消費量は50倍に急増しました。「客室」は異様に膨張し、「燃料タンク」や「客室維持装置」を破壊しようとしているのです。人類はスペースシップアースであとどれくらい航海を続けていけるのでしょうか?危機にひんする地球号の最新状況を世界各地で取材。地球号の過去、現在、そして未来を識者たちと共に考えます。
4回シリーズの放送に先駆けて、11月26日(火)09:00-09:50の番組プロローグでは、上記のようなシリーズの概要が紹介されます。
初回放送の概要
11月29日(金)21:00-21:50に、第1回「止まらない「客室」の膨張」が放送されます。以下は番組HPから得た放送内容の概要です。
70億を突破した人口が都市に集中!資源を大量消費して「客室」の膨張は続く・・・・・
宇宙物理学者の松井孝典博士によると、今からおよそ1万年前、人間が農耕を始めたとき、スペースシップアースに「客室」が誕生。産業革命で一気に膨張を開始したといいます。石炭・石油などの化石燃料を使って生産力を向上させ、交通機関を発達させたことで、自然の制約を打破し、欲しいものを欲望のままに手に入れられるようになったのです。以来250年、「客室」は膨張を続けています。
BRICs諸国の一つ、南米ブラジルはこの10年で経済が急成長。人口の5分の1にあたる4000万人が都市部に流入しています。豊かになった人々が競って手に入れるのが、電化製品です。増加の一途をたどる電力需要をまかなうため、次々とダムが建設され、総面積にして東京都の5倍の熱帯雨林が焼失しました。
「拡大を続ける文明は崩壊する」。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のジャレド・ダイアモンド教授は、かつて滅びた文明と同様に、このままだと現代文明も同じ道をたどると警鐘を鳴らしています。第1回では、どのように「客室」が誕生し、膨張を開始したかをひもとき、その先に待ち受ける運命について考えます。
あとがき
なお6年前、私が非常勤講師を務めた某大学で、映像詩プラネットの中のダイアモンド博士の発言の部分を視聴した受講生達の感想文が、当ブログの地球はイースター島と同じ運命を辿るのか?そして、宇宙は人類のフロンティアになり得るか?に掲載してあります。受講生達は、ダイアモンド教授の発言を相当深刻に受け止めていました。環境問題を考える時、まず自分のできることから始めると言います。これは間違っていませんが、実際に温暖化の被害を最小限に抑えるためには、施策決定に大きな影響力を持つ政、官、財界の面々の思考回路の抜本的改変が必要です。経済成長優先のグローバル化やTPPの推進より、エネルギーや食料などをコンパクトな規模の社会で自立させながら共存するのが新しい社会像が望ましいことが、シリーズ最終回に取り上げられます。
12月6日(金)21:00-21:50には、第2回「「燃料タンク」は枯渇する」が放送されます。 第3回「「客室維持装置」に異変あり」と第4回「「新たな海図」を求めて」は明年1月に放送予定です。放送日が近づいてから、改めて案内記事をアップする予定です。
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