
1.選手村のエネルギー消費を再生可能エネルギーで賄えるか?
2月1日に日テレで放送されたテレビ討論で細川護煕氏は、2020年の東京五輪は持続可能性をうたったロンドン五輪のやり方を継承すべきだとして、以下のように述べた。
「今度の五輪では自然エネルギーをフルに使って、原発をゼロにして、再生可能エネルギーとかエネルギー効率化とかそうしたことで、選手村でも宿舎でも、あらゆるものをとにかく自然エネルギーを使ったオリンピックということを世界にアッピールできたら、世界は物凄く刺激を受けるものと思う」。
聞えの良い発言であるが、果たしてそんなことは可能であろうか?答えはそのやり方次第である。2008年の洞爺湖サミットも、再生可能エネルギーで賄うという触れ込みであったが、会場のホテルが再生可能エネルギー発電施設から送電されていたわけではなく、グリーン電力で賄われた。グリーン電力とは、再生可能エネルギーで発電している法人・団体や個人が自家消費した電力分を、温室効果ガスを発生しないで環境貢献をしたという付加価値として証書化したものである。大口電力消費者または法人・団体は、証書を買い取ることによって、エネルギー消費を再生可能エネルギーで賄ったと見なされる仕組みで、二酸化炭素排出権取引と似た考え方である。このようなやり方なら可能であるが、再生可能エネルギーで直接賄うには、選手村を太陽光や風力など自然エネルギー資源の豊富な地域に開設する必要があり、現実的に可能とは思えない。従って、細川発言は聞こえの良さを狙ったもので、熟慮を重ねたうえのものでないと思われる。
2.細川氏出馬が生んだ波紋
細川氏の出馬は脱原発を願う人々に難しい選択を迫るものになった。国会の多数を制した安倍政権が再稼働や原発輸出を粛々と進める中で、脱原発を願う人々の間に閉塞感が生まれている。都知事選は国政選挙ではないが、脱原発派が勝利すれば、安倍政権の暴走に歯止めをかけられるのではないかとの期待感がある。前回の選挙でも脱原発を掲げて次点になった宇都宮健児氏は、脱原発と共に人に優しい都政やシンプルなオリンピックを掲げて、真っ先に立候補を表明した。細川氏は立候補の意向を表明後、基本政策策定にかなりの時日を要し、発表は告示日前日夕方にずれこみ、その間に候補者同士の公開討論会への参加をOKしたのは宇都宮氏のみであった。細川氏が立ったのは注目度の高い小泉元首相の後ろ盾あってのことである。そのことが脱原発を願う人々の間に細川氏なら勝てるのではないかという甘い期待を生み、鎌田 慧氏らを世話人とする「脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会」による暗黙の裡に細川氏への統一を迫る動きも生まれた。しかし脱原発以外の都政の重要課題で宇都宮氏が提示した政策と、小泉、細川両氏の進めてきた政策とでは明らかな相違がある。
3.宇都宮氏こそ都知事に相応しい候補者だ
2月に入ってから幾度か開催された主要4候補者討論番組で、細川氏は上記のように熟慮を重ねた論議を展開する準備ができていなかった。田母神氏は盛んに自説を強調して、保守的考え方の人々の共感を呼んだと思われる。舛添氏は厚生労働大臣のキャリアと母親の介護体験を顕示する我田引水的パーフォーマンスが視聴者の共感を呼んだかどうか不明である。舛添氏のリーダーとしての資質を疑うような情報もネットで流れている。。政策提示の点でも、討論の点でも、話し方は穏やかであったが、宇都宮氏が優れていた。脱原発を願う人々の一部が細川氏応援に回るのは、共産党が推薦しているためであろうか。宇都宮氏の政策は貧しい生い立ちと43年に及ぶ弁護士政策から立案されたもので、出馬は個人の良心の訴えによる決断である。共産党は自前の候補者を擁立するのを止めて、勝手に宇都宮氏を応援しているに過ぎない。宇都宮氏はこれまでの職業政治家と違って、じっくり現場でじっくり相手の話を聞いて状況を把握し、胸襟を開いて話し合って合意を形成ゆく新しいやり方を都政に息づかせてくれるであろう。自民、民主、公明は勝てそうと見た候補を応援しているが、宇都宮氏は無党派のみならず、党派の枠を超えて幅広い支援を受けるにふさわしい候補者である。
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