戦中戦後、6人の子供を育てた義母。伴侶はその5番目。
私達の2度のフランス在任中に、その義母は2度来仏した。
お陰で純和風料理を心行くまで堪能できる日々だった。
そして日本帰国後、
ある日、鰆の味噌漬けをお土産に我が家にやってきた。
あまりの美味しさに舌がとろけそうだった。
一切れ1200円の代物だそうだ。
33年前 、当時では 考えられない高値。
家族は5人なのでそれだけで6000円。
義父亡き後のわずかな年金、決して裕福ではなかったはず、。。。
お正月には、子や孫など20人から30人が集合することもあった。
義母が前もって吟味した素材は、一級品としか言いようがない。
すべてが 割烹料理店に卸される素材だそうだ。
焼き肉用の牛肉は4kg調達。
鯖寿司は10本程度すべて一人で作った。
ビ-ル大瓶を1ケ-ス買っていたが、足りないとみるや、
そ-っと嫁嫁に気遣わせないように
歩いて市場までスタコラさっさと、買いにいった。
子や孫はガヤガヤとおしゃべりしながら
近況を語り合い、孫の泣き声も聞こえ、狭い2階建て長屋は
足の踏み場もない。
義母の料理は、家族の絆を深めるための「添え物」である。
子や孫のために、もてなす瞬間が 義母の至福の瞬間だった。
孫たちは今、義母の料理の手はず、秘訣を忘れず、
家庭で食卓に並べる料理を手作り、
そして友人知人を招いては
気軽に手料理を振る舞う喜びを味わっている。
義母のモノ言わぬメッセ-ジが彼らの胸中に届いている。
口癖は「人にすることは、自分にすること」。