世界のどこかで起きていること。

日本人の日常生活からは想像できない世界を垣間見たときに記しています(本棚11)。

権威・独裁主義>自由・民主主義

2020-09-20 08:50:36 | 日記
2020年9月、現在進行中である中国の香港弾圧。
日本に住んでいる身からすると、自由・民主主義を潰そうとする独裁主義の悪事に見えてきます。

これは善か悪か?
世界が下した判断は、なんと“善”なのです。

下記に紹介した記事によると、2020年6月に開催された国連人権理事会において、中国による香港国家安全維持法導入の賛否が問われ、「中国に反対」が日本や欧州などの27カ国だったのに対し、「賛成」はその2倍近い53カ国という結果が出ました。
ただし、賛成の多くが権威主義的な国だったり、中国から巨額の支援を受けている途上国だったり。



しかし、これが世界の現状であることを認めなければなりません。
つまり、現在の世界を見渡すと、民主主義より権威主義の方が多数派になっているのです。

もはや善悪では判断できない状況であり、両者のメリットとデメリットを比較分析する時期に入ったと考えるべきかも知れません。

権威・独裁主義のメリットとして、指導者が賢ければ、国の方針が実現されるスピード感が得られます。
今回の新型コロナ騒ぎでも、中国武漢のロックダウンは見事でした。
強制されることが嫌いな日本では実現できそうにありません。
自由主義の欧米では、未だにマスク着用反対運動がくすぶり続けていますし。

しかし、世界は権威・独裁主義の大きなトラウマをたくさん抱えてきました。
ヒトラー(ドイツ)のユダヤ人大虐殺。
スターリン(ロシア)の粛清。
毛沢東(中国)の文化大革命。
ポルポト(カンボジア)の文民粛正。
すべて数百万人単位の人間が殺されてきました。
ランキング一位はスターリン(2000万人虐殺?)らしいです。

そう、権威・独裁主義が道を誤ると、取り返しの付かない惨劇が待っているのです。

今回の新型コロナ騒ぎ、先ほどは武漢のロックダウンを褒めましたが、その前の武漢の患者発生を隠蔽し、世界に広げるきっかけを作ったのも習近平です。

池上彰さんの解説が思い出されます。
「法律は国民が守るべきルール」
「憲法は権力者が守るべきルール」
そう、古今東西、「権力は暴走する」傾向があるのです。

果たして人類は、どちらの道を選択していくのでしょうか。

■ 決して忘れてはならない「中国の香港弾圧を支持した53カ国」の名前と場所
 スイスで今年6月に開かれた国連人権理事会で、中国による香港国家安全維持法導入の賛否が問われ、「中国に反対」が日本や欧州などの27カ国だったのに対し、「賛成」はその2倍近い53カ国という結果が出た。賛成の多くが権威主義的な国だったり、中国から巨額の支援を受けている途上国だったりする。ただ、この構図が定着すれば、国際社会における自由と民主主義の価値観を揺るがしかねず、「敗因」分析は不可欠だ。
◇支持の53カ国・地域「香港は中国の内政」「干渉すべきではない」
 国連人権理事会では、中国を支持する53カ国を代表してキューバが次のような共同声明を発表した。
「香港は中国の切り離せない一部分であり、香港の事務は中国の内政で、海外は干渉すべきではない」
「国安法は国家の立法権に属する。人権問題ではなく、人権理事会で議論すべきではない」
「我々はこの措置が『一国二制度』の長期安定、香港の長期繁栄・安定に資すると考えている」
 53カ国・地域は次の通り。
▽アジア=中国、北朝鮮、カンボジア、スリランカ、ネパール、パキスタン、ミャンマー、ラオス
▽中南米=アンティグア・バーブーダ、キューバ、スリナム、ドミニカ、ニカラグア、ベネズエラ
▽中東=アラブ首長国連邦、イエメン、イラク、イラン、オマーン、クウェート、サウジアラビア、シリア、バーレーン、レバノン、パレスチナ
▽アフリカ=エジプト、エリトリア、ガボン、カメルーン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、コモロ、コンゴ共和国、ザンビア、シエラレオネ、ジブチ、ジンバブエ、スーダン、赤道ギニア、ソマリア、中央アフリカ、トーゴ、ニジェール、ブルンジ、南スーダン、モザンビーク、モーリタニア、モロッコ、レソト
▽大洋州=パプアニューギニア
▽欧州=タジキスタン、ベラルーシ
 賛成側で目立つのが、第一に、北朝鮮やベラルーシに象徴される「権威主義的」「独裁的」な体制だ。こうした国はそもそも「自由と民主主義」が焦点となっている香港問題への関心は乏しい。また反政府勢力の問題を抱えている国も少なくなく、国家体制を維持するための国民統制の強化に肯定的だ。国際NGO団体「フリーダム・ハウス」(本部・米国)の評価をみれば、賛成側の大半が「自由がない」「自由が限定的」に分類されている。
 第二に、多くが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の参加国である点だ。アジアやアフリカの諸国は中国から莫大な資金援助を受けてインフラ整備や都市化を進めている。アフリカの多くの国が新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済難に苦しんでおり、中国の経済的な措置に期待している。(参考資料:かくしてアフリカは中国色に染まる――新型コロナで支援漬け)
 こうした事情があり、各国は中国側の意向に沿った行動を取っているようだ。
 賛成多数となったことで、中国メディアは「国際社会で広範な支持を得た」と大々的に報じている。
 昨年7月にも今回と同様に国連人権理事会で、日本や英国など22カ国が、中国新疆ウイグル自治区での人権侵害に関連して中国を非難する共同書簡を出したが、ロシア、北朝鮮、パキスタン、シリアなど37カ国は「中国擁護」の立場を取った。
◇反対27カ国「国安法は『一国二制度』を揺るがす」
 反対に回ったのは、日本と、圧倒的多数の欧州諸国だった。米国は2018年に人権理事会を脱退しており、その影響もあって反対に回る国は限定的だった。韓国は「諸般の状況を踏まえた」(外交当局者)として棄権した。中国を刺激する事態を避けたいという思惑があったようだ。
 27カ国を代表して英国のブライスウェイト国連大使が共同声明を発表した。
「香港国安法は『一国二制度』を揺るがすもので、人権に明確な影響を与える。この法律に対する深い懸念を表明する」
「国連に登録され、法的拘束力を持つ条約である中英共同宣言(1984年)が香港の『高度な自治』や、報道・集会・結社などの自由や権利を保障している」
「香港市民の頭越しの同法制定は『一国二制度』を損なう」
 27カ国は次の通り。
▽アジア=日本
▽大洋州=オーストラリア、ニュージーランド、パラオ、マーシャル
▽北米=カナダ
▽中南米=ベリーズ
▽欧州=アイスランド、アイルランド、英国、エストニア、オーストリア、オランダ、スイス、スウェーデン、スロバキア、スロベニア、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、フランス、ベルギー、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク
 先述の「フリーダム・ハウス」の評価では、27カ国すべてで「高度な自由」が認定されている。
◇自由と民主主義の危機
 香港の「一国二制度」とは、中国の一部である香港に、本土とは異なる制度を適用することを指す。香港返還に際し、中国は外交・防衛を除く分野で高度な自治を50年間変更しないと約束した。香港は「特別行政区」として独自の行政・立法・司法権を持ち、本土にはみられない言論・集会の自由などが認められてきた。ところが国安法により、この中国の国際公約は反故にされ、27年も早く終らされることになった。
 中国は近年、国際的影響力を拡大させ、米国をしのぐ大国にのし上がるという野望をむき出しにしている。
 一帯一路では、沿線国に資金を貸し付けて道路や港湾、鉄道、ダムなどを整備するとともに、人・物の交流を進めて「親中経済圏」を構築する。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は加盟国・地域が102(承認ベース)あり、ここでも南米やアフリカなどが半数を占める。これに対し、日米主導のアジア開発銀行(ADB)は68にとどまっている。さらに、政治宣伝も兼ねた新型コロナウイルス対策である「マスク外交」により、中国が医療支援したのは計150カ国に及ぶ。
 こうしたプロジェクトは「責任ある大国」のイメージづくりに役立っている。中国は「内政不干渉」を掲げながら各国に投資・融資をしつつも、現実には自国のルールや価値観を持ち込んでいるという側面もある。
 半面、新型コロナの発生源や中国の初動ミスを追及する動きには「経済制裁」により封じ込めを図る。香港や台湾、南シナ海問題などは「核心的利益」と位置づけ、武力を行使してでも絶対に守るという立場だ。中国側は沖縄県・尖閣諸島についても「核心的利益」と明言したことがあり、挑発行為を繰り返している。
 国際的枠組みの機能が、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ政権下で低下し、国際協調や途上国への支援も減速している。その穴を埋めるように中国が影響力を拡大するため、中国台頭を歓迎する声も出ている。
 強権体質である中国の覇権は、自由と民主主義を守る意味からも防ぐ必要がある。香港問題での中国批判の国際世論が頭打ちになったことを反省材料に、改めて自由・民主主義の価値観を共有する国々が結集し、状況の転換を図る時期に来ている。(参考資料:ますます権威主義的・不透明な隣国――自由・民主主義の国が結束して中国に思考の転換を促す時)


聖墳墓教会における「聖地の果てなき縄張り争い」

2020-08-08 07:09:57 | 日記
イスラエルの首都エルサレムは、世界三大宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の聖地が密集しています。
といっても、この三つの宗教は無関係ではなく、縦の関係があります。
ご存知でした?
概要を知りたい方は、中田敦彦のYouTube大学【宗教史】をご覧下さい。
1時間ちょっとでなんとなく把握できます。

さて、エルサレムにあるキリスト教の聖地は聖墳墓教会。
どんなところでどんなことをしているのか、あまり情報を耳にしません。
NHK-BSで珍しくこの教会を扱った番組を放送していましたので、興味深く視聴しました。

それまでの私のイメージは・・・
「敬虔なキリスト教徒の頂点に立つ聖人達が、
ひっそりと静かな修行生活を送る場所」

しかし意外にもその現実は、
6つの派閥(★)が共同管理、というか日々勢力を競い、小さな争いが絶えない、
まことに人間くさい場所でした。

この6つの教会派閥、初めて知りました。

★ 6つの派閥;
・ギリシャ正教会
・エチオピア正教会
・コプト正教会
・アルメニア使徒教会
・ローマカトリック教会
・シリア正教会

プロテスタントは入っていないんですね。
現在の聖墳墓教会の勢力図は、ギリシャ正教会が主権を握り、エチオピア正教会は屋上に追い出されている状況です。
この間を取り仕切るのがイスラエル警察で、派閥間の調整・仲介が大変そうでした。

この現実を知り、ちょっとがっかり。
どうも尊敬の対象になりにくい。
日本の仏教の聖地、永平寺とか高野山とかのイメージと大きく異なります。
人間の不安(≒祈り)と欲望が凝縮した空間、と考えればいいのかな。

それから、礼拝の雰囲気が、グレゴリオ聖歌よりコーランに似ていたことも意外でした。
ここはヨーロッパではなくアラブであることを再確認させられました。


世界のドキュメンタリー「聖地の果てなき縄張り争い」

番組内容
エルサレムにあるキリスト教の聖地、聖墳墓教会では、キリスト教6教派による縄張り争いが何百年にもわたり続いてきた。教会内で宗教者たちが織りなす人間模様を見つめる。

詳細
イエスの墓とされる場所に立つ聖墳墓教会。世界中から信者の巡礼が絶えないこの聖なる場所では、ギリシャ正教会やローマカトリック教会などキリスト教6教派が、宗教活動を行う時間や場所などを巡って、何百年にもわたる縄張り争いを続けてきた。教会の内部に長期間カメラを入れ、キリスト教の聖地で繰り広げられる混乱と人間模様をシニカルに見つめる。 国際共同制作:原題 The Church(2020年 イスラエル)

「リー・クアンユー回顧録」に書かれている日本

2020-08-06 13:50:53 | 日記
最近、お笑い芸人である(あった)オリエンタルラジオの中田敦彦が主催するYouTube大学にはまっています。
中でも、日本の義務教育ではあまり教えてくれないアジア近代史関連動画はとても興味深い。
一通り見終わると、日本でなぜ日本を含めたアジア近代史を教えてくれないのか、その背景が垣間見えてきます。

中でも衝撃を受けたのはリークアンユーの動画
リークアンユーとは、シンガポール建国の父と呼ばれる人物です。
マレーシアの先端にある小さな国で、
彼1人で作り上げたと言っても過言ではありません。

現在、シンガポールは繁栄を謳歌し、シンガポール国立大学はアジアの大学ランキングで2位(一位は中国の精華大学、日本の東大は8位)と若者達も自信に満ちあふれています。

そこにリークアンユーは眉をひそめます。
今のシンガポールを築き上げるために、どれだけ苦労したか、
若者達は知らない。
しかし、シンガポールをこれからも繁栄させるためには、
それを知らなければならない。
そう感じた彼が自国民に向けて書いた本が「リークアンユー回顧録」です。



出版後しばらくして、日本から「翻訳して日本で販売したい」という打診がありました。
一旦躊躇したものの、彼は許諾しました。
その躊躇の理由は、中身を読むとわかります。

第二次世界大戦中に日本に侵略された光景がリアルに描かれているからです。

それまでシンガポールはイギリスの植民地でした。
シンガポールには、マレー人、インド人、華人など多様な民族が住んでいますが、
みな「イギリスに守られている」と感じて生活してきました。

そして戦争が始まり、日本軍が侵攻してきました。
蹴散らされ、そそくさと母国へ逃げてしまったイギリス軍兵士たち。
「イギリス軍が自分たちを守ってくれる」と信じていたことが、あっけなく裏切られました。

日本軍兵士の恐ろしさを描写しています。
それは、彼ら1人1人全員が「自分は天照大神の子孫である」と信じ切っていること。
何の迷いもなく、天皇に命を捧げる覚悟ができていること。

今の時代でいえば、イスラム教過激派に洗脳された兵士が自爆テロを辞さないこととイメージが重なります。

日本の原爆投下に関しては賛否両論がありますが、
リークアンユーは「落とさざるを得なかった」と認める派です。
日本兵の集中力と結束力を目の当たりにした彼は、
最後の1人になるまで敗戦を認めないで反抗するであろうと予想し、
戦争が長引けば長引くほど日本は極限まで廃墟と化すことが避けられないだろう、と考えたのです。

説得力があります。

それから、戦争中の性被害についても言及しています。
イギリス軍が駐留している時代にも、兵士による民間女性のレイプ事件がたびたびありました。
今の沖縄の米軍基地と同じですね。

しかし日本兵が駐留してから、それが一切なくなりました。
なぜ?

日本軍は兵士の性処理をシステム化し、
施設を作ってそこでプロ(あるいはセミプロ?)の女性に相手をさせたのです。
視点を変えると、民間女性を守ったという見方もできます。

韓国との間で問題になっている従軍慰安婦問題は、
兵士個人の問題に帰すれば歴史に残らないが、
それをシステム化した日本軍は歴史に残った、
というのが真相のようです。

どちらが良いのか悪いのか・・・。

女性のレイプ問題は、戦争中はどこにでも例外なく発生します。
平和な現在からは想像できませんが、戦争中は男性にも女性にも人権などありません。
男性は殺され、女性はレイプされるのです。
非戦争中 → 人を殺すことは犯罪、レイプは犯罪
戦争中  → 人を殺すことが正義、レイプは?
誰が答えられるでしょう。
正解などありません。
第二次世界大戦で負けたドイツでは、200万人の女性がレイプされたと言われています。

実は韓国も、戦争中の性犯罪問題を抱えています。
ベトナム戦争に参戦した韓国軍兵士が、民間女性をレイプして生まれた子どもたち(ライダイハン)がたくさんいて、その補償問題でベトナムから訴えられています(韓国政府は知らんぷりしてますが)。
日本を訴える前に、戦争下における性被害問題の処理のお手本を見せる必要があるのではないか、という意見もあります。

まあ、こんなことが書いてあるので日本語訳は廃刊になっており、入手困難です。
あ、英語版なら2000円で手に入る・・・。

第二次世界大戦終了後、彼は憧れの国であるイギリスへ留学します。
そこで知ったこと、思い知らされたことは、
・イギリスはシンガポールを守ってくれたのではなく搾取していた
・欧米人によるアジア人蔑視
の二つ。
彼の中に「シンガポールは植民地支配から脱し、独立しなければならない」という信念が芽生えました。
帰国した彼は、ゼロから国作りをはじめ、資源も土地もない国がどう生き延びていけるのかを模索し、苦悩の果て、紆余曲折を経て税制優遇制度を用いることにより金融立国を成し遂げたのでした。

<追記>
第二次世界大戦後、日本女性が性被害に遭った記録もあります。
日本の敗戦が決まったあとに、ソ連が日ソ不可侵条約を簡単に破って満州に攻め入ってきました。
そのとき、逃げ惑う日本人の女性はソ連兵にレイプされます。
辛くも日本に帰国できた女性の中には、ソ連兵にレイプされて妊娠していた例もありました。
堕胎専門の病院が作られたとTV番組で見たことがあります。
教科書には書かれていない戦争のダークサイド、生きるも地獄、死ぬも地獄。

▢ 662人を日本に帰すため、ソ連兵の性的暴行に耐えた未婚女性15人の苦しみ
 これからも語り継ぐべき戦争の記憶がある。作家の五木寛之氏は「戦争はどう始まり、展開したかという『大局』ばかりが話題になる。しかし、一人の兵士や、戦地で生きた個人の体験こそ戦争の真実であり、彼、彼女らの記憶こそ後世に『相続』されるべきだ」という――。 
※本稿は、五木寛之『こころの相続』(SB新書)の一部を再編集したものです。 

■敗戦の混乱時、日本人女性が味わった性暴力の悲劇 
 現実社会に「表」と「裏」があるように、過去の時代にも「表」と「裏」があります。私たちが生きた同時代についての記述すらそうだから、100年前、500年前ともなればなおさらでしょう。その当時に生きた人が、歴史の教科書を読めば、仰天するかもしれない。「これは一体どこの国の話だ」と。 
 「一級史料があるから確実だ」などと言っても、その史料が時代の全体を語るわけではありません。最近になって、少しずつ敗戦時の旧満州や北朝鮮での「性接待」の話が語られるようになってきました。 
 平成25年4月、昼神温泉などで知られる長野県阿智村に全国で初めての「満蒙開拓平和記念館」ができました。戦前からの国策として満州や内蒙古に送り込まれた満蒙開拓団の史実を、風化させることなく後世に伝える拠点として、作られたものです。
  開館以来、かつての開拓団の実像を伝える数々の資料を展示するほか、「語り部講話」として、当時の生き証人の体験談を聞く会が催されています。 
 とくにその中で、開館直後、2013年7月と11月にお話をされた岐阜県旧黒川村満蒙開拓団の2人の女性の悲痛な体験談が、大きな波紋を呼びました。

■ソ連軍の要求は「若い女性」の接待役だった
  この話をきっかけに、いくつかの雑誌や新聞も特集を組み、2017年には「告白~満蒙開拓団の女たち」(NHK・ETV)や、「記憶の澱」(山口放送)などのドキュメンタリー番組も放映されました。体験談と報道の数々から浮かび上がってくるのは、次のような事実です。 
 旧満州では、敗戦後、自分たちを守ってくれるはずの関東軍は撤退してしまい、多くの開拓団が孤立してしまいました。日ソ中立条約を破って侵攻してきたソ連軍のほか、いままで支配されていた現地人も一気に暴徒化し、敗戦国の弱体化した開拓団に襲いかかります。 
 そこには略奪・暴行・虐殺・強姦など、あらゆる無法がまかりとおりました。彼女たちの隣の村の開拓団は、この無法に耐えかね、集団自決で全滅しました。黒川開拓団の中でも集団自決の声が高まりましたが、リーダーの一人が、「人の命はそんなに簡単なものじゃない」と主張して、思いとどまります。
  そしてリーダーたちは、たまたま団の中にいたロシア語のできる人間を通じて、近くに進駐してきていたソ連軍に、保護を求める交渉をしました。するとソ連軍は、兵の暴行や現地人の襲撃から団を守り食糧や塩を提供する代わりに、若い女性を将校の「接待」役として差し出せという条件を付けてきたのです。 

■「このままでは集団自決しかない」 
 つまり挺身隊のような形で、決まった女性たちを交代で慰安婦として差し出せということです。それはソ連軍側から一方的に強制されての行為ではなかった。開拓団としての取引きでした。  夫や子どものいる女性には頼めないということで、結局、数えで18歳から21歳までの未婚の女性が15人選ばれました。「このままでは集団自決しかない。何とか全員が助かって帰国するために、団に身を預けてくれないか」と、必死の説得が行われます。「あなたたちには団を救う力がある。将来には責任をもつ」とも言われたといいます。 
 女性たちが「絶対いやです」と拒否するのは当然です。そんなことをするくらいなら、死んだほうがましと、拳銃をもって飛び出した女性もいたそうです。 
 結局、何百人もの命を守るためには断りきれず、当時21歳だったリーダー格の女性は、「日本に帰ってお嫁に行けなかったら、お人形の店でもやって一緒に暮らそう」そう言って、全員をなだめたと言います。

■べニア板張りの「接待場」で泣き叫ぶ女性たち 
 連れて行かれたべニア板張りの「接待場」では、女性たちは布団の上に並んで横たえりました。彼女たちの言葉を借りれば、「辱めを受ける」あいだお互いに手をしっかりと握りあい、泣きながら暴行に耐えたそうです。覚悟していたとはいえ、「助けて、お母さーん、お母さーん」と泣き叫ぶ女性もいました。 
 暴行の事後処理として、彼女たちは医務室に行き、性病や妊娠を防ぐために薬品を管で体内に注いで洗浄を受けます。彼女たちより年下の女性が、泣きながらその冷たい薬液を注ぐ仕事を手伝ったという証言も残っています。 
 こうして、何カ月もの過酷な試練に耐えた結果、黒川開拓団は暴徒の襲撃から守られたのです。ただ15人の中の4人は、性病や発疹チフスにかかり、帰国できないまま命を落としました。集団自決をする開拓団が相次ぐ中で、総員662人の開拓団のうち451人が生きて帰れたのは、まさに彼女たちの犠牲のおかげだったと言っていいでしょう。 
 90歳近い高齢になりながら、70年間も封印してきた辛い記憶を、よくぞ語り継ぐ気持ちになってくれたと思います。 

■帰国後に向けられた中傷、差別的な言葉
  それにしても、彼女たちは、その辛い記憶をなぜ封印してきたのでしょうか。 
 それは思い出したくもない辛い記憶だったからでしょう。しかし、思い出したくもないその「辛さ」が、じつはあの忌まわしい凌辱の「辛さ」だけではなかったからなのです。
  本来なら土下座してでも感謝しなくてはならないはずの彼女たちの行為に対して、心ない中傷や差別的な言葉が仲間内でそこここでささやかれ、それが彼女たちにも感じられたからでした。そうした言葉は、じつは辛い「接待」が行われている当時から、すでに囁かれていたといいます。 
 国に帰ってからも、ほかの女性の身代わりで「接待」の回数が多くなった女性が、仲間の男たちから「○○さんは好きだなー」とからかわれたり、「(体を提供しても)減るもんじゃなし」などと言われたりしたといいます。これらの言葉は、凌辱の体験以上にどれほど彼女たちの心と体を傷つけたでしょう。 
 そして、「露助(ソ連兵)のおもちゃになった人」「汚れた女」といった秘かなレッテル貼りが、人びとの間に根強く残っていたのです。この「接待」の事実は、女性たちの将来のためにも良くない、団の恥でもあるとして、開拓団もひた隠しにしてきました。 
 昭和58年には、「接待」のことが実名を伏せて雑誌「宝石」に書かれましたが、地元の書店では人目に触れないよう、開拓団関係者によって買い占められたといいます。

■ようやく語られ始めた忌まわしい戦争の記憶
  このように、彼女たちが「辛い記憶」を封印してきたのは、あの忌まわしい体験を忘れたかっただけでなく、それ以上に、いわれなき中傷や差別という「辛い体験」を思い出したくなかったからでしょう。 
 そこに開拓団としての意向も働き、事実は封印されてきたのでした。しかし、そこで声を上げた女性がいます。女性たちも高齢になって次々と世を去り、このままでは自分たちの身を挺した体験が埋もれてしまうと、考えたのでしょうか。 
 リーダー的な存在だった女性が、「このままあの事実をなかったことにはできない」と立ち上がり、昭和56年に、現地で亡くなった4人の女性を慰霊する「乙女の碑」が建てられました。
  碑は高さ1.3メートルの観音石像で、左手に願いをかなえる宝珠、右手に音を出して道の害を払う錫杖をもち、優しい眼差しで前方を見ています。そして2018年11月、4000字を超える詳細な碑文がパネルに記され、「乙女の碑」の脇に建てられました。 

■無名の「乙女の碑」、記憶を未来に語り継げるのか
  「乙女の碑」を建てたリーダー格の女性は、碑文の完成を見ないまま、91歳で亡くなりました。しかし、彼女の願いの一部はやっとかなえられたと言ってもいいでしょう。 
 彼女たちの語り継ぎの決意は、ようやく実りはじめているようですが、遺族たちにとっては依然として、釈然としない思いが残ります。経緯を示す碑文は立派なものができましたが、そこには15人の乙女の名は1人も記されていません。「ひめゆりの塔」や「原爆の碑」には犠牲者の名が記されて、一人ひとりその尊い犠牲に敬意が払われています。 
 遺族の中には、開拓団の命を救うために尊い犠牲を払った彼女たちの名は、もっと誇りをもって語られていい、という人もいるようです。しかし、「誇り」というにはあまりに悲惨な体験です。私の願う語り継ぎによる「こころの相続」は、どのように語り伝えられるのでしょうか。

昔話によく、鬼や大蛇などに若い娘を生け贄に出すというシーンがあります。
あれは、強国だった中国からの使者に娘を差し出したという史実が元になっているという説があります。
時代が変わっても、人間のやることはあまり変わりがないようです。


改善か 信仰か~激動チベット3年の記録~

2020-05-11 13:58:22 | 日記
2019.3.22放送

先にサン・テグジュペリの「星の王子さまの世界旅」を見ました。
この小説をチベット語に翻訳した、フランス在住のチベット人が、故郷に帰りたいけど帰れない(家族に止められている)という不思議な状況を知り、なぜなんだろうと不思議に思い、録画してあったこちらの番組を見てみました。
約2時間に及ぶ、一民族の歴史的局面を描き上げた壮大なドキュメンタリーです。



チベット仏教の僧院集合体である「ラルンガル・ゴンパ」。
聖職者がひっそりと祈りと修行の日々を送る天空の聖地です。
そこに中国共産党が有無を言わせず「貧困から人民を救う」と僧院を改造(半分は破壊)して強引に観光地化する3年間を追った内容です。

改造工事に伴い、住居を失った僧たちは何の保障もなく、僧院を去ることになります。
追われた僧たちはみな口をつぐんで多くを語ろうとしません。
おそらく、工事に反対した僧たちが一掃され、反対しなかった僧たちが居残れたと想像されます。

チベットは「自治区」として、中国国内では一見、自治を認められているかに見えますが、それは建前。
世界中で知られています。
実際には経済・教育分野で「改善」というスローガンの下にチベット民族の漢民族化が進んでおり、小学校では中国語しか使わせません。

「改善」に反対するチベット民族がいる一方で、
「改善」に賛同するチベット民族もいるのも事実です。

賛同する人たちにとって「共産党員」になることは憧れの的。
しかし党員になるためには信仰を捨てなければいけません。
党員は仏教その他の信仰を持つことを認められていないのです。

番組中では、
「改善」に反対する者は虐げられ、
「改善」の流れに乗る者は一定の生活レベルをつかんでいる
様に見えます。
ただし、「信仰を捨てる」という条件付きで。
これは1000年の民族の歴史を捨てるというとても大きな決断です。

幸せって何だろう、と素朴な疑問を自問自答している自分に気づきました。

今の中国は共産党の一党独裁で、
自分の意見を言うと警察権力につかまり、
でも言うことを聞いている限りは生活を(ある程度)保障される社会。

一方、民主主義を掲げる欧米では、
自分の意見を自由に表現でき、
富も貧困も自分次第。

このどちらが幸せなのか?

後者に属している日本人には、後者の方が幸せと思い込んでいますが、
世界を見渡すと、中国のような強権政治が一定の比率で存在し続けています。
つまり、そのようなシステムを選択する国々・人々がいるということです。

ほかの番組で、フランスに留学している中国人の口から出た言葉が忘れられません。
「中国のような巨大な国家を統治するには、強力な権力が必要だ」
「民主主義もいいところがあるが、中国にはなじまない」
「自由の象徴であるアメリカは意見の対立で何も決められないじゃないか」

・・・民主主義の日本に住む私も“一理ある”と感じたのでした。



BS1スペシャル「リアルボイス 韓国 大衆食堂から韓国の本音が聞こえる」

2020-02-21 08:34:14 | 日記
(2020年2月14日放送)
【番組内容】そこでしか聞けない“リアル・ボイス”を求めて旅をする紀行番組。今回は、日本との関係が悪化した韓国。彼らは日本のことをどう思っているのか?韓国の市民の本音を聞く。
【詳細】日本と韓国の間には従軍慰安婦問題や徴用工問題など、難しい問題が横たわる。日本の書店には嫌韓本が並び、韓国を「優遇措置の対象国」から除外する輸出管理強化措置がとられ、韓国では猛烈な日本製品の不買運動…、日韓関係は悪化の一途を辿る。そんな中、韓国の人々の「本音」を探るため訪れるのは韓国各地の食堂。地元の食材を使った特色ある料理を仲間と囲みながら本音を語り合う場所で、両国関係の未来に向けたヒントを探る。
【語り】宇崎竜童

最も近くて遠い国といわれる韓国。
本音が聞ける大衆食堂などでのインタビューをもとに作られたドキュメンタリーです。

大人はまず取材に応じません。
数少ないインタビューでは、本気で嫌悪感を表す人や建前論を話す人が目立ち、
ピンときませんでした。

巡り巡って、最後に登場した学生たちへのインタビューが心に残りました。

「日本と仲良くなるために不買運動に参加している」

えっ、どういうこと?

「不買運動をしなければ日本人は韓国のことを理解しようとしない」
「コミュニケーションの一つの方法として不買運動がある」
「古い歴史に関して、何故“今“不買運動が起きているのかを考えて欲しい」

そして極めつけが韓国人の夫と日本人の妻の夫婦の妻から出た言葉。

「夫と話す中で、日本の教科書には載っていないこと、日本では教えていない現代史が少なくないことを実感した」
「だから日本の若者は政治に無関心なのではないか」
「韓国では現代史をキチンと教えるので、若者に政治参加の意欲がある」

目から鱗が落ちました。
これって自民党の戦略? 
といぶかる私がいます。