世界のどこかで起きていること。

日本人の日常生活からは想像できない世界を垣間見たときに記しています(本棚11)。

再生エネルギーの光と“影”

2018-03-28 08:27:33 | 日記
 テレビで「再エネ神話の結末〜ドイツ・オーストラリアで見た現実〜」(2018.3.25:BSフジ)という番組を見ました。
 世間では「原発は悪、再生エネルギーは善」という論調ですが、この番組は「再エネの影」を検証した内容です。
 問題は、再エネの弱点が克服されていないことだと感じました。
 
1.発電した電気は貯められない。必要なときに必要な量を供給するのが原則。
2.再エネは自然(天気・風)に影響されるので発電量が安定しない。
3.再エネにはバックアップ電力が必須である。

 1については、電気を貯める技術(巨大なバッテリー?)の開発が望まれます。
 2については、曇りで風がないときはソーラー発電も風力発電もほとんど発電できなくなる、逆に嵐の時は風力発電が過剰に稼働し大量の電気が発生するけど送電線に過負荷がかかるとシステム保護のために停止することになっている、などの欠点があります。
 これらの弱点をサポートするために安定したバックアップ電力(原子力、天然ガス、火力)が必須。

 ドイツでは原子力発電をなくすという方針の下、再エネに転換してきましたが、その開発維持費が電気料金に上乗せされるので日本の電気代の2倍(!)と高くなり、国民から悲鳴が聞こえてきています。
 これだけ国民に負担を強いているのに、なぜかCO2削減効果が全く達成されていない。なぜ?
 このカラクリは、CO2発生が少ない原子力と天然ガス発電は減少傾向、しかしCO2発生量が多い褐炭(ドイツ国内で採取される質の悪い石炭)による発電量が減らないためであるとの説明。
 メルケル首相は方針を転換せざるを得なくなりました。
 
 再エネは理想的で夢の発電方法ではありますが、越えなければならない高いハードルがいくつもあることを実感した次第です。
 日本の有利な点は、火山国であるので地熱発電が使えるというところでしょうか。うまく生かして欲しいものです。


番組紹介
 環境に優しくCO2排出の観点から地球温暖化の対策として注目され世界各国が推進している再生可能エネルギー。
 世界に先駆けて再生可能エネルギーの導入に取り組んでいるドイツとオーストラリアを取材。オーストラリアの広大な大地に所狭しと並んでいる風車とソーラーパネルだが、取材を進めると、農家の男性は「日本人は再エネの導入には気をつけた方が良い」、食品加工業者の男性は「絶対に私たちのマネをしてはいけない。仕事がままならなくなる」、男性政治家は「全く意味はなかった。過去100年で最も経済を悪化させたのは再エネ推進策だ」という声が出てきた。
 同じくドイツでも、大学教授の男性が「本当に愚かなことだった。絶対にドイツの真似をしてはいけない。完全な失敗だ」と話した。
 オーストラリアでは、州全域で大停電が発生。商工会議所の男性によると、総額4億5千万豪ドル(約364億円)の被害があった。オーストラリア首相は「これが(再生可能エネルギーに)依存してきた結果であり、(再生可能エネルギーの)能力の限界だ」と述べた。
 オーストラリア南部の電気料金は世界一高いものとなっている。
 ドイツでは、エネルギー貧困が社会問題となっている。消費者センターの女性は「最終的に消費者はヒーターもない部屋にいることになる」と話した。
 人類は再エネとどう向き合うべきなのか。

 国がエネルギー政策を進めていく上で欠かしてはいけない“3E”のうち“経済性”(Economy)について考える。
 ドイツでは原子力から再エネへのエネルギー転換が宣言されたが、電気料金が払えないエネルギー貧困が発生していた。
 FIT固定価格買取制度について解説。
 テューリンゲン州で起きている送電線設置反対運動を紹介。
 2017年のドイツの電気料金でマイナスになった時間は146時間に上った。
 ドイツは、国民に負担を強いながら、風力や太陽光などの発電施設を増やしてきたが、そこで生み出された電力をカネを支払って引きとってもらっている現実がある。
 そのコストも当然、消費者が負担することになる。
 ドイツ・ノルトラインヴェストファーレン州・消費者センター、テューリンゲン州、ドイツ・ポーランド国境の映像。
 ドイツ・アンゲラメルケル首相、消費者センターエネルギー貧困担当・シュテファニーコスバブ、慈善団体エネルギー貧困担当・マリオマルケスデカーバーロ、マグデブルグ大学・ヨアヒムヴァイマン教授(経済学者)、連邦ネットワーク広報・オラーフペーターオイル、農業保護協同組合・マーティンベルク、クリストフフリードリヒ町長、テューリンゲン州・ビルギットケラー農相、ハンデルスプラット紙・クラウスシュトラートマン記者のコメント。
出典:総務省統計。
 ドイツの時間別電力価格の推移。税金、総予算、原子力発電所、洋上風力発電所、売電に言及。
■再エネ賦課金:ドイツ8.84円/kWh(年3万1304円)、日本2.64円/kWh(年8232円)。


プーチンの支配するロシアの過去・現在・未来

2018-03-18 14:05:34 | 日記
 最近、ロシア関係のドキュメンタリーが目立ちます。
 録画してまとめて視聴しました。
 すべてNHK-BS放送です。

オリバーストーン on プーチン(2018.3.1-2)
<番組内容>
 映画監督のオリバー・ストーンが、2年にわたりロシア大統領と対談を重ねた。クレムリンの奥の院を訪ね、外遊に同行しながら、プーチンの足跡や世界観の本音に迫る。
 これまであまり見たことがなかったロシアの指導者の横顔を、前後編の2回で紹介する。〈前編〉は、元KGB職員が大統領の椅子を提示された1999年にさかのぼり、権力掌握の過程や、プーチンの国家観や国際政治の“操り方”、アメリカに対して高めていった疑念について掘り下げていく。プーチンは、ストーンがときに突っ込む質問に、心を開いて全てを語ったのか、それともまだ素顔を隠しているのか…。




 オリバー・ストーン氏は第二次世界大戦におけるアメリカのアメリカの功罪を「オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史」で検証した実績があります。そこには、西側からの情報のみ提供され続けてきた日本人には信じがたい情報が含まれていました。
 な〜んだ、アメリカ人の博愛精神は、大戦で戦場にならずに戦争特需に沸いた経済発展のおまけであり、経済情勢が悪くなればトランプ大統領のような本音をさらけ出す人物が登場する、というカラクリ。
 プーチン大統領も「邪魔者は消す」というポリシーで数十人の反体制政治家・反体制ジャーナリストを暗殺する人殺しですが、彼の言い分も一理あるな、と思わせる内容でした。
 結局、人間は自分が一番かわいい、権力を持ったものはそれを実行するのみ。
 番組中のプーチン大統領に対するストーン監督のインタビューは切り込みに鋭さを欠き、見応えは今ひとつでした。気を遣ったのですかねえ。


<番組スタッフから>
【この番組を企画したきっかけは?】
 去年の秋頃だったでしょうか。「絢爛豪華な部屋のど真ん中に、オリバー・ストーン監督が酔っ払った感じで座っていて、あのプーチンとサシで延々としゃべくりまくっている番組ができたらしいよ」と聞き、映像を取り寄せてみました。実際には監督はお酒を飲んではいなかったようですが、クレムリン宮殿の奥深くまで案内されたり、郊外の別荘で私生活をのぞいたり・・・柔道やアイスホッケーにアツくなるロシア大統領のレアな素顔もありました。2年ちかくにわたってロング・インタビューを繰り返したとのことですが、なかなか見ることができないプーチンさんとの対話をぜひ日本の視聴者にもと思い、シリーズを発案してみました。
 この番組は、ストーン監督という聞き手・伝え手の強烈なキャラで成り立っています。アメリカやカナダ、イギリスでは、番組の案内役を前面に出す演出が長く人気を集めていますーーーフランスや北欧諸国といった“ドキュメンタリー大国”では、さほどポピュラーではないかもしれません。では、英米の制作者がノウハウやスキルを互いに競い合ってきた“顔出し=署名記事”的な手法を収集したらどう見えるだろう? というシリーズです。
【見てくださる方に一言】
 「オリバー・ストーンONプーチン」は前後編の2回で放送しますが、インタビューと歴史的な資料映像を巧みにモンタージュする手法に注目です。ストーン監督には「スノーデン」という2016年の作品がありますが、アメリカのNSA=国家安全保障局による盗聴の実態を内部告発し、最終的にモスクワに庇護される身となったエドワード・スノーデン氏との関わり方についても、プーチン大統領に直撃。映画の一部が番組に出てきますが、他にも、超大国による“核の冬”をパロディーで描いたスタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情」(1963年)を2人で鑑賞するシーンも。別れ際に大統領はそのDVDをプレゼントされて部屋を出ますが、すぐ戻ってきてDVDケースをかざしながら「中身のディスクが入ってないよ」と一言。「いかにもアメリカ流だ」との皮肉に、取材班一同が失笑・・・今回の番組でプーチン大統領は、どこまでその胸の内をさらしたのかについても、視聴者の方がそれぞれに見極めていただければ、と思います。また、このインタビューは単行本としても出版され、番組には含まれていない問答も含まれています。興味のある方は読み比べてみても面白いかもしれません。
(番組プロデューサー icy18)


プーチンの復讐(2018.3.14-15)
 プーチンはなぜ、アメリカ大統領選挙に工作を仕掛けるまでの反米姿勢に至ったのか? 大統領に就任してからの足跡をつぶさに追いながら、その政治手法の変遷を探る。
 アメリカPBSの看板番組「フロントライン」の最新作を二部構成でおくる。前編は、2000年にクレムリンの主となった元KGB職員の対欧米観から物語が始まる。米クリントン元大統領がエリツィンに伝えた警戒感とは? ウクライナ等の民主化運動の陰にプーチンが見た「アメリカの工作」とは? 米政府高官やロシアの政治家、プーチン・ウオッチャーらの多角的な証言で、アメリカへの“復讐”に傾くプーチンの実像に迫る。

  


 プーチンの原点は、彼がKGBヨーロッパ支局長時代にドレスデンで目撃した壁の崩壊、それはロシアがアメリカによって壊される象徴として彼の脳裏に刻まれました。
 それからの彼は「アメリカは敵」という概念にとらわれ続け、逃れることができずに今日に至っています。
 何か不都合なことが起きれば、すべて「アメリカが仕組んだ」と疑心暗鬼に陥り、そしてとうとうアメリカ大統領選にはサイバー攻撃を仕掛けて内政干渉するという汚点を残してしまいました。
 彼の前の大統領であるエリツィンはにロシアの民主化を目指し、中途で挫折し、それをプーチンに託しました。しかしプーチンの本心は民主化ではなく帝国ロシアの復権であり、自分が独裁者の地位に就くこと。
 エリツィンは晩年、死を前にして「プーチンを後継者に選んだのは間違いだった」とつぶやいたそうです。
 プーチンがいる限り、アメリカとロシアが仲良くなることはあり得ません。
 東西冷戦は、軍事ではなく情報戦争・サイバー攻撃に姿を変え、これからも続いていくのでしょう。
 たぶん、勝者は生まれず、双方とも疲弊しきった敗者然となる未来が透けて見えます。



■「ロシアで働く(2018.3.13)
 国民車「ラーダ」の新モデル発表など、ボー・アンダーソンCEOのもとでアフトヴァース社の業績はV字回復。生産ラインの問題解決を現場に促し、人員カットの大ナタも振るうが、余暇も含めて“会社丸抱え”だった時代になじんだ社員との間で摩擦が…チェコ共和国のクルーが独特の画角で撮影。ロシア的“会社の流儀”をユーモアと皮肉たっぷりに描写する。“ロシア版のカルロス・ゴーン”物語。




 共産主義は理想社会としてソ連で実験されましたが、失敗に終わりました。
 誰もが平等に、という思想の下、人より働いて実績を上げても給料は同じなので労働意欲が低下し、みな最低限の労働しかしなくなるのです。支配階級は自己保身のために汚職まみれとなり、人間の見にくいところをさらけだして崩壊したのでした。
 この状況を変えるためにゴルバチョフ、エリツィンが登場して民主主義化を試みましたが失敗、プーチンは昔に回帰しつつあります。
 番組で取り上げられた「アフトヴァース社」はソ連時代の「働いても給料は変わらないから働かない」精神に充ち満ちて斜陽化した自動車会社。
 それにテコ入れして再生すべく、外国人の社長の力を借りることになりましたが、結局は社員が旧体制から脱皮できないままこの試みは終わりました。そしてあとは会社がつぶれる運命を待つのみ。
 こんな国民を日々相手にしているプーチン大統領にちょっと同情しました。



■「プーチン国の人々(2018.3.16)
<番組内容>
 首都モスクワでは、プーチンの肖像画やTシャツに若者が群がり「愛国心の象徴だ」と気勢を上げる。「クリミアはロシアのものだ」と主張するウクライナ育ちの美人キャスターは、新保守系のTV番組で大人気。貧しいウラルの農村では、暮らしの向上に期待。極東ウラジオストクでは、経済発展で“プーチン礼賛”寺院が次々と建つ…ドイツの取材班が、欧米への反発を強め、「強いロシアの復活」を願う人々の声を拾い集めた。


 いろいろな立場の民間人を取り上げた内容ですが、プーチンに批判的な人々は登場せず、片手落ちの感をぬぐえません。
 この番組から垣間見えることは、経済がまあまあで生活に困らなければ、民衆は政権打倒を考えないという普遍的な現実のみです。



■「ロシア大統領選(2018.3.17)
<番組内容>
 3月18日に行われるロシアの大統領選挙。得票率・投票率ともに70パーセントを超える勝利を目指すとされるプーチン大統領に対し、若者の間から批判の声が出始めている。彼らが感じるのは長期政権に対する閉塞感。社会の変革を求め、ネットで連帯し、投票へのボイコットなどを呼びかけている。圧倒的な勝利で、通算4期目となる政権の正当性を示すため、さまざまな戦略を展開する大統領と若者の間で繰り広げられる攻防に迫る。


 前日の番組と打って変わって、こちらはプーチン批判派をメインに取り上げた内容。
 長期政権の弊害は、社会体制をさび付かせ、一度地位と富を手に入れた人は保身に走るため汚職が蔓延して貧富の差が拡大&固定していきます。
 プーチンがロシア経済をよくできたのは石油のおかげです。
 しかしその後の原油価格暴落と、ウクライナ危機を境に欧米から課せられた経済制裁の影響で、ロシア経済は減速・下降しインフレが蔓延しつつあります。
 ロシア国民の10%が80%の富を独占し、その不満が学生を中心に広まっており、大学生のプーチン支持率は50%を下回っていることが紹介されました。
 プーチンが政権を取って18年の結果がこのような状況ですので、今後さらに政権が続けば、今の社会情勢が改善するどころか、貧富の差が拡大することが懸念されます。
 しかしプーチンはその動きを力でねじ伏せます。
 野党の有力候補を立候補できないようにして、でも参加中に拘束します。
 自分の敵と見なすと、徹底的に痛めつけるのが昔からのプーチンのやり方なのです。

 ロシアのプーチン、中国の習近平、ともに長期政権となりました。
 心ある国民はスターリン、毛沢東時代を思い出し、恐怖に打ち震えていることでしょう。
 2000年から今までにロシアから外国に移住したロシア人は200万人に上るそうです。