次の質問せり。「壊れた」この言の葉よりおもひよそふるは何か?
「壊した訳ではない…」
「どこが壊れた?」
「忘れるくらい忙しいので買い変えてしまう」
時計メンテナンスの話なり。4~5年休まず働きし時計の診断なり。
一旦、時計内部の毒素が、ひとへに洗ひ流さるるかのごとく除去されゆく──。
持ち込まれし時計はゆるやかなる「時」をこの工房にふる。
装置に横になりて眠るやう指示されき。通常の運針循環を再現するため、実験は深夜0時より始め、2日に日差をみる。
この時計の“通常運転”をさせやらずはと思ひ、一方は、返却まで時計に驚ける事に興は持たじ…
あした「これらの測定はせちに睡眠中にいかが変化するか未知の領域なり」
順調に行かば…無事にお渡しなり。
一部分ばかりを解決するよりもすがらに良き通常運針となる。
「経年劣化は、ただ1種類の部品の摩擦増減の問ひならぬ。すべてうつろひゆくなり」と、予兆を発見せらるることも少なからぬなり。
傷みし歯車が1つなのか、4つなのか。この違ひの金銭やうなる負担を左右するは、聞こゆるまでもあらぬかな。
言葉の持つ音の響きやリズムを楽しんだ表現で時計を音調に書いたものである。
最後まで見ていただき、ありがとうございました!
次回予定『あ行 オーデマピゲ』
登場語録…時計 誰がデザインしたのか