「そろそろお盆だろう。そっちに籠もりきりではなく、たまにはうちへ帰ってきたらどうだ。せめて、先祖の墓参りくらいはしなさい。」
いや、帰れない。仕事が忙しくて。帰るわけがない。あんたらの顔も見たくない。
この前のゴールデンウィーク、あんなに言い争って喧嘩別れしたばかりだろう。
俺と父と母、あまりのお互いの怒号に、その場に立ち尽くすしかなかった妹が俯向いて唇を噛み、少し肩を震わせていた。
怖がらせてしまって、妹には申し訳ないことをした。家族に対する実家へ帰らない罪悪感といえば、まあそれくらいか。
あのあと妹には謝ったっけ、謝らなかったっけ。
どっちだったかな。あのあと泣いてないといいんだが。
「ああ、わかったよ、母さんには一泊するって伝えて。」
いやいや違う。
口が勝手に思考と違う言葉を放った。
そうじゃないだろ。
今まで腹の底に溜めていた不平不満を大きな声ですべて解き放って、今度こそ親父を一蹴してやるんだ。
あの時すべて言い切れなかったけどな、こんな御家、腐敗した夏場の臭い溝を覗いてるみたいで反吐が出るんだよ。
血が繋がっているというだけで、あんたらと縁が切れない世の中の仕組みが憎くてたまらない。
「仕事は明日には片付きそうだから、明後日の夕方にはそっちに着くと思う。また連絡するよ。」
いやいやいや、違う。
明後日はまとめて撮り溜めていた録画アニメを鑑賞する貴重な休日なんだ。
特に今季は原作から応援していたアニメが先日snsでバズって覇権になっていて、主人公の過去を考察するのにファンたちは大盛り上がりなんだ。
アニメ版と原作版の細かい描写の違いと、主人公の伏線を拾い上げて考察するために最低でも三日は費やさないといけない。
だから俺はプライベートも忙しくて仕方ない。
時間がとにかく足りない。
「そうか。あまり仕事漬けの日々は送るものではない。では。明後日に。」
「うん、気をつけるよ、また明後日ね。」
いやアニメは?
いやそうじゃなくて。
アニメも大事だけれども。
それよりも一大事なことをしてしまったのだ。
実家に帰る約束をしてしまった。
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最近バイオリズム的にあれなので、書き溜めてたものが放置されてたので ボツ供養
続きもない
特にこれといって何か書きたかったわけでもない
終わり