さすがに前回の恋雨より年齢層高いかな。いや平均したら変わらないかもしれない。家族の問題なんだから、世代なんて関係ない。
一言、「何も起こらないが、どんな映画より衝撃的」、と言うしかない。貧しくて慎ましやかに暮らす家族の物語。もちろんタイトルから分かる通り、訳ありではある。しかし、実際にはそのタイトルを大きく上回る衝撃的な話だ。
是枝裕和監督パルムドールこそ初めてだが、過去にも受賞歴がある。「誰も知らない」で主演の柳原優弥がカンヌで主演男優賞を獲っている。今は朝ドラ「まれ」から出てきたちょっとクセの強い俳優、と言う印象だが、子役時代はカンヌのレッドカーペットを歩いていた。その作品も観ているが、やはり是枝監督の真骨頂は子役の使い方なんだろうな。アッバス・キアロスタミ監督(イラン)、ヴィターリー・カネフスキー監督(ロシア)に通じるものがある。
先ず衝撃的なのは、四畳半一間、台所と言う、普通なら1人暮らしの間取りに家族5人が住んでいること。日本を世界第三位の経済大国だと思っているヨーロッパの人が観たら、そりゃ衝撃的でしょう。一方、日本国民自身はそうした貧しさを自覚していない。2年後にオリンピックも控えているし、どこか上り調子だと思っている。
さらに万引きしていること以上の衝撃とは、ネタばらしになるのでぼかして言うが、自分たちにウソをついていることだ。と言うか、彼らの「絆」は、その「ウソから出た誠」である。もちろん、犯罪者であることを隠して生きている、と言うことは確かにウソに対して自覚的である。むしろ、観ている側が、「綺麗事」と言う形で自分にウソをついていることを自覚させられる。もはや「サザエさん」みたいな家庭は上流だ、と言う視点がmixi 民では共有されている事実だし、特別な貧困ではなく、すぐ隣の人、あるいは明日の自身であることさえ十分に可能性のある時代になった。
物静かな登場人物ばかりで進むストーリーは小津安二郎以来の日本映画の伝統であり、もし小津監督が現代にメガホンを取っていたら、こんな映画を撮るのかもしれない。
是枝監督は「誰も知らない」でバラバラになった家族を描いた。そして「万引き家族」では、すでに家族から切り離された人たちがもう一度家族を作ろうと夢見、それが再び外側からの圧力で壊されてしまう物語である。これが日本の真実なのだ。
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