しかし、円通寺はちゃんと残っておりました。当たり前ですな、建てられたのが1613年という江戸初期の建築物ですからね、25年なんて、「ヒヨコや!」と怒鳴られるくらい昔に建てられてますから、もうすぐ400年ですよ。このお寺のお庭が比叡山を借景にした枯山水の庭で、大変有名でありますな。見に行った日は、ちょうど良い天気でしてね、比叡山に雲もなく、木漏れ日が庭にもおちて大変に綺麗でしたね。
左側に柱が2本ありますが、一番左が書院畳部屋の柱で、左二番目が、縁側の柱で、部屋の奥に座ると柱が、庭を、生け垣の所の大木が比叡山を囲む額縁のように見えるので、座る位置を変えながら鑑賞するのが良いようですな。
上の写真の左側の紅葉。ほんのちょっとだけの秋ですな。
しかし、なんか変だな、なにかが変わったなと感じましたね。そうだ、歩いて庭を眺める書院に入っていったんで、目の位置が高かった。庭を拝見するときは、畳に座って見るので、写真にも写っていないんですがね、約1.6mの生け垣で、額を作るように下側の風景が見えないようにしていたはずなのに、なんと家の屋根がいっぱいみえたことでして。ありり、25年前にはこんなに家が見えなかったので、さては生け垣が低くなったのかと思いましたがね、お寺のご説明で分かりましたね。
お寺の周りの土地の住宅地開発が許可されたために、前は木々しか見えなかった庭からの眺めに住宅の屋根が見えるようになってしまったんだそうで、はては、高層マンションの計画もあったそうでして、それが出来ると比叡山の横にひっこりと見える新しい借景となりそうだったとか。
そのため、京都市は円通寺庭園など借景を保護するための京都市眺望景観創生条例を制定するようになって、円通寺は同条例の対象地となり、周辺区域では高さだけでなく、屋根の形式なども制限されているそうなんですがね、でも、前と比べると確実に「見える」んですよ。
あと、気がついたのは、静寂さですな。不思議なもんで、屋根が見えてしまうと、建築中の住宅工事の音が絶えず聞こえるだけでなく、人の「生活のざわざわ感」まで伝わって来るようになりましたですよ。
何キロも離れた比叡山の眺めが庭の命なのですがね、生け垣をもう少し高くすれば多少は隠れるとは思いますが、額縁が広がることで「比叡山の絵」は小さくなりますから、もう昔の庭ではないということになるんでしょうかね。
他人の土地に何が建とうと文句を言える時代ではありませんから、もう、「借景」などとという「文化」が許されない時代になったんでしょうかね。アメリカなんぞのお金持ちは、海に面した豪邸を建てると、その先の海岸まで買い取って、景観を確保するという話を聞いたことがありますがね。日本では無理なんでしょうかね。帰りにその新興住宅街を通りましたが、2階だての閑静な建物が多くてね、2階だて建てて文句は言われたくないなと住む人は思うでしょうな。しかし、観光客というか、円通寺のお庭が好きなファンとしては、残念ですな。自然環境はもちろん景観環境を守るということがいかに難しいか実感したのであります。
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