我にかえると、駿がじっと見ていた。
「初めて会った夜、タクシーで帰ったの覚えてる?」
「え?ああ、覚えてるわよ、送ってくれたよね」
思い出してたことを、いきなり言われてびっくりした。
見透かされてるなんて訳ないのに。
「あの時、初めて会って…キレイな大人のお姉さんって思ってた。」
キレイ…?褒められて嬉しいけど…
なんかこそばゆい。
もしかして、からかってる?
「でも、年下の女の子たちと盛り上がってたら…見えたんだ」
「…何が、見えたの?」
「キレイな大人のお姉さんが、全然楽しそうじゃないのが」
「なんでそんなこと、分かったのよ」
「そんなこと、ちゃんと見てれば分かったよ」
笑顔を作ってたはずなのに。
離れた場所で駿に見られていたなんて…
「だから、隣に来てくれたの」
「そうだよ。隣に座ったとき、驚いたまゆみさんの目に俺が映って…綺麗な目だなって。
やっぱり、キレイな大人のお姉さんだなって思ったよ」
「だから、あの時、自分もオトナの男でいないとって思ってたんだ」
「ちゃんと、オトナの男に見えたわよ。ほんとに7歳も年下?ってびっくりしたもの」
「そう見えてた?でも、タクシーの中で余裕でからかわれて、オトナに見えてないんだ!ってわかってくやしくてさ」
「そうなの?そんなに余裕があったわけでもなかったんだけど、ね」
「今そう言われてもね。あの時はなんだよ!って頭来たんだ」
…そんな風に見えなかったけど、あれ、やっぱり怒ってたんだ。
「頭来たから、コイツ落としてやる!って思ったんだ」
「だから、手を取ったり…」
「キスしたりしたのかって?そうだよ…でも」
「でも?」
「キスしたら女の子みたいで」
「えっ」
「寂しがりの女の子みたいで、可愛くて…」
「ちょっと待ってよ。寂しがりの女の子って、私そんなだった?」
「…そんなだったよ」
たぶん、私の顔は真っ赤。
駿は、そんな私の顔を真顔で覗きこむ。
「そんな気なかったのに…好きになっちゃった…それからずっと、好きだったんだ」
じっと見て、そんなこと言わないで。
駿の目が怖くなって、目を逸らせた。
私は、何を言えばいいの。
自分に自信がなくて駿のことも、信じられなかったのに。
タクシーの中で駿の頬に触れた私。
顔を赤くして目を逸らした駿。
でも、手だけは繋いだままだった。
私のマンションの前でタクシーを降りると、
「送ってくれてありがとう。一緒にいてくれてありがとう」
そこは、ちゃんとお礼を言わなきゃ。
若くてやんちゃな年下の彼が、頑張ってオトナのふりをして、私の相手をしてくれたんだもの。
見上げると、黙ったままじっと見つめて来る。
なんで、何も言ってくれないの。
「田中くんの…」
部屋はどっちって、聞こうと思った。
でも、人差し指で唇に触れてきて、
「…駿」
と、ひとこと呟いてから、駿の顔が近づいたから…
あ、キスされるんだ、と他人事のような言葉が頭に浮かんだ。
イヤだとか避けようとかまったく考えなくて、初めて会った駿からのキスを、受け入れてた。
ちゅっと可愛らしいリップ音。
唇が離れ、目を開けると腕が伸びてきて、駿の胸の中におさまり、見上げるとまた近づく唇。
駿のキスは暖かくて優しかった。
そっと腕の中に包まれて、やわらかい唇に触れられて、ゆっくり、ゆっくりほどけてゆく。
さっき、面白がってからかった相手だなんて、もう忘れていた。
唇が離れ、駿の胸元に顔を預けた。
駿の腕が、背中に回ってる。
初めてキスしたときみたいに、胸の鼓動が早くなっていて、伝わってたらどうしようと恥ずかしくなった。
「…まゆみさん」
頭の上で、声が聞こえる。
「俺、帰るね」
「あ、ごめん、、」
急いで駿から離れようすると、右手をぎゅっと掴まれた。
「また、ね」
そっと手を離し、にこっと笑顔を向けてから、歩いて行く。
また…?
あ、そういえば合コンの最中に、全員とメアド交換したんだった…
それから。
翌週に駿からメールがあったとき、差出人の名前を見ただけで、ドキッとした。
部屋にいってもいいかと聞かれ、ウチでご飯食べない?と誘う。
私…駿に会って、どうしたいんだろう。
自分に聞いてみるけど、分からない。
結婚するはずだった彼のいた場所か空いて、寂しかった。
何かで埋めたかったそこに、駿がするっとはいったみたいだ。
この先に進むかは、今は考えなくてもいいや。
どうなるかは、駿に会ってから決めればいい。
もう…今から緊張して、どうするの。
胸に当てていた手を下ろし、ほうっとため息をついた。
「初めて会った夜、タクシーで帰ったの覚えてる?」
「え?ああ、覚えてるわよ、送ってくれたよね」
思い出してたことを、いきなり言われてびっくりした。
見透かされてるなんて訳ないのに。
「あの時、初めて会って…キレイな大人のお姉さんって思ってた。」
キレイ…?褒められて嬉しいけど…
なんかこそばゆい。
もしかして、からかってる?
「でも、年下の女の子たちと盛り上がってたら…見えたんだ」
「…何が、見えたの?」
「キレイな大人のお姉さんが、全然楽しそうじゃないのが」
「なんでそんなこと、分かったのよ」
「そんなこと、ちゃんと見てれば分かったよ」
笑顔を作ってたはずなのに。
離れた場所で駿に見られていたなんて…
「だから、隣に来てくれたの」
「そうだよ。隣に座ったとき、驚いたまゆみさんの目に俺が映って…綺麗な目だなって。
やっぱり、キレイな大人のお姉さんだなって思ったよ」
「だから、あの時、自分もオトナの男でいないとって思ってたんだ」
「ちゃんと、オトナの男に見えたわよ。ほんとに7歳も年下?ってびっくりしたもの」
「そう見えてた?でも、タクシーの中で余裕でからかわれて、オトナに見えてないんだ!ってわかってくやしくてさ」
「そうなの?そんなに余裕があったわけでもなかったんだけど、ね」
「今そう言われてもね。あの時はなんだよ!って頭来たんだ」
…そんな風に見えなかったけど、あれ、やっぱり怒ってたんだ。
「頭来たから、コイツ落としてやる!って思ったんだ」
「だから、手を取ったり…」
「キスしたりしたのかって?そうだよ…でも」
「でも?」
「キスしたら女の子みたいで」
「えっ」
「寂しがりの女の子みたいで、可愛くて…」
「ちょっと待ってよ。寂しがりの女の子って、私そんなだった?」
「…そんなだったよ」
たぶん、私の顔は真っ赤。
駿は、そんな私の顔を真顔で覗きこむ。
「そんな気なかったのに…好きになっちゃった…それからずっと、好きだったんだ」
じっと見て、そんなこと言わないで。
駿の目が怖くなって、目を逸らせた。
私は、何を言えばいいの。
自分に自信がなくて駿のことも、信じられなかったのに。
タクシーの中で駿の頬に触れた私。
顔を赤くして目を逸らした駿。
でも、手だけは繋いだままだった。
私のマンションの前でタクシーを降りると、
「送ってくれてありがとう。一緒にいてくれてありがとう」
そこは、ちゃんとお礼を言わなきゃ。
若くてやんちゃな年下の彼が、頑張ってオトナのふりをして、私の相手をしてくれたんだもの。
見上げると、黙ったままじっと見つめて来る。
なんで、何も言ってくれないの。
「田中くんの…」
部屋はどっちって、聞こうと思った。
でも、人差し指で唇に触れてきて、
「…駿」
と、ひとこと呟いてから、駿の顔が近づいたから…
あ、キスされるんだ、と他人事のような言葉が頭に浮かんだ。
イヤだとか避けようとかまったく考えなくて、初めて会った駿からのキスを、受け入れてた。
ちゅっと可愛らしいリップ音。
唇が離れ、目を開けると腕が伸びてきて、駿の胸の中におさまり、見上げるとまた近づく唇。
駿のキスは暖かくて優しかった。
そっと腕の中に包まれて、やわらかい唇に触れられて、ゆっくり、ゆっくりほどけてゆく。
さっき、面白がってからかった相手だなんて、もう忘れていた。
唇が離れ、駿の胸元に顔を預けた。
駿の腕が、背中に回ってる。
初めてキスしたときみたいに、胸の鼓動が早くなっていて、伝わってたらどうしようと恥ずかしくなった。
「…まゆみさん」
頭の上で、声が聞こえる。
「俺、帰るね」
「あ、ごめん、、」
急いで駿から離れようすると、右手をぎゅっと掴まれた。
「また、ね」
そっと手を離し、にこっと笑顔を向けてから、歩いて行く。
また…?
あ、そういえば合コンの最中に、全員とメアド交換したんだった…
それから。
翌週に駿からメールがあったとき、差出人の名前を見ただけで、ドキッとした。
部屋にいってもいいかと聞かれ、ウチでご飯食べない?と誘う。
私…駿に会って、どうしたいんだろう。
自分に聞いてみるけど、分からない。
結婚するはずだった彼のいた場所か空いて、寂しかった。
何かで埋めたかったそこに、駿がするっとはいったみたいだ。
この先に進むかは、今は考えなくてもいいや。
どうなるかは、駿に会ってから決めればいい。
もう…今から緊張して、どうするの。
胸に当てていた手を下ろし、ほうっとため息をついた。