◎砂糖/ショ糖・スクロースSucrose Saccharoseさとう
お正月には、気にはしながら甘いものが並び手を出しがちだったのではないでしょうか。砂糖で主に私たちが日常的に利用する上白糖(ショ糖・シュクロース)についてお話を進めることと致しましょう。
私たちに身近に感じる砂糖ですが、戦時中は貴重品扱いだったようです。でも最近は、肥満の原因になるとして敬遠され気味です。しかし、甘味への嗜好度は高く、エネルギー量の低い、配糖体(甘茶〈フィロズルチン〉、甘草〈グリチルリチン〉、ステビア〈ステビオサイド〉)、合成(人工)甘味料で食品添加物に使用されているものとしてサッカリン、アスパルテーム、アセスルファムKなど、また合成を天然のもののように加工(オリゴ糖、糖アルコール)した甘味料が次々に登場し用いられるようになりました。エネルギーのある砂糖に代わって低カロリーの甘味料の利用が増大しています。
ダイエット(食事療法)になるように健康的に利用すれば、いいのです。ここで砂糖のよさを見直してみることといたしました。
砂糖の主な原料は、さとうきび(かんしょ)、てんさい、やし、かえでがありますが世界ででは、ほぼ65%が甘蔗(さとうきび)、35%が甜菜(ビート)より採取しています。日本では、原料の生産が少なく自給率35%(2003年)で多くは、輸入に頼っています。砂糖消費量は、年間1人当たり、日本19.9kg(2004年)、アメリカ33kg(2002年)、EU39kg(2002年)程度です。
砂糖の主な原料とされる、甘蔗、甜菜について調査しながら、私たちにとって貴重な存在となっている理由を探ってみましょう。
甘蔗 かんしゃ(かんしょ)→さとうきび(砂糖黍)
イネ科、インド原産、甘蔗(かんしょ)ともいう。世界の砂糖原料の60%以上を占め熱帯、亜熱帯で栽培され適温20℃~30℃、冬季でも5度以上で成長期に雨量が多く、成熟期に乾燥した土地が適す。
キューバ、ブラジル、インドで多く生産、日本には、大陸より伝来したといわれ、17世紀末に四国、沖縄で栽培が始まり九州南部、沖縄の特産品にされている。
多年生で栽培は、茎を切って種苗(しゅびょう)、切り株をそのまま残し発芽させ株分けする。成長するとトウモロコシの茎に似て緑黄色から茶褐色、太く大きく節があり九州、沖縄で2、3月頃収穫される。成育期間が一年から一年半と長く高さ2m~5mに成長、気温の低下により茎の糖分が増加し茎が多漿質(たしょうしつ)で水分75%、糖質10~20%を含んできたころ伐採、茎を生のまま口に含み噛み砕くと甘い汁がでてくる。
圧搾、濃縮、結晶化し砂糖(分蜜糖、精製糖95%、含蜜糖5%)が製造される。サトウキビの絞りかす(バカス)が25%ほど出るが燃料、パルプ、飼料に利用される。サトウキビの葉、表皮のワックス部分に含むポリコサノール(オクタコサノールOctacosanol、ヘキサコサノールHexacosanol、トリアコンタノールTriacontanolなどの複合体)が動脈硬化予防によいことが最近知られる。
甜菜 てんさい・さとうだいこん
アカザ科、ヨーロッパ、地中海原産。古代ローマの時代より家畜の飼料、野菜として栽培されていた。一般に冷涼な地域での栽培がよく二年生草木、茎は、高さ60cm~1mに成長、2年目に穂状の小花を多数咲かせ根が紡錘形、水分81%、糖分12~13%を含んでいる。
赤と白の2種類あるが砂糖は白色種より採取される。赤カブ種は、真っ赤な色より火焔菜(かえんさい)とも呼ばれ赤かぶに似た形をして直径12cmほどの塊根(かいこん)は、ロシア料理のボルシチによく用いられ、甘味があり甘酢漬け、サラダ、スープ、炒め物にしてもよい。軽く茹で用いるが少し泥臭さが残る。葉を食用とする品種もある。
北海道特産で年に、春、夏、秋と年に2~3度栽培され糖分が多く甘味があり砂糖の原料として日本での生産は甜菜からの産出が多くを占める。ボルシチの煮こみ料理、酢漬け、サラダ、スープ、炒めにも用いられている。
赤カブ種は、皮をむいても内部全体に赤紫色でアントシアニン系の色素でポリフェノールの一種として抗酸化力を持つ。活性酸素除去、毛細血管保護、視力回復、皮膚、コラーゲンの生成促進、脂肪肝、高血圧予防にも効果が期待される。ビートレッド呼ばれる赤色色素の主成分はベタニン(ベタイン系)で光による退色は少ないが熱に不安定で冷菓のアイスクリーム、フルーツ牛乳、ゼリーの着色に0.4%~0.0015%用いる。昆布、食肉、鮮魚貝類、茶、海苔、豆、野菜類への使用は禁止されている。
*甜菜糖 てんさいとう(ビート糖)
砂糖採取には、白色種が使われヨーロッパで1747年頃よりドイツのマルグラーフにより採取がされた。世界で砂糖産出されるものの35%が甜菜糖(ビート糖)で占め、サトウキビ(甘しょ)で65%の生産量だが日本では甜菜糖が大部分を占める。
主に北海道、十勝、網走で生産され塊茎が蔗糖(砂糖)の原料でビート糖、さとう大根とも呼ばれる。江戸時代にすでに渡来、1870年(M3年)ごろより農業の近代化政策で西洋作物の種子を輸入、甜菜は気候の似ている北海道で栽培が試みられたがうまくいかず大正8年ごろに再度創業が再開され多くが工場生産、栽培され現在に至る。
赤と白の2種類あるが砂糖は白色種より採取がされる。病害虫にやられやすく暖地での生育がよくなく寒冷地での栽培が多い。
根はカブに似ているが葉が生い茂っている様子は、ほうれん草そっくりで同じアカザ科に属す。二年草で北海道でまだ残雪のある初春4月に種まき、苗が育てられ雪解けの5月頃に畑に移植し成長させる。
7月に小さな黄色の花を咲かせ秋には高さ20~50cm、カブの直径15cm、糖分20%ぐらいになった9~10月ごろ収穫され旬とする。甜菜糖の糖度が99.9%と高い純度であるが甘しょ糖に比べ無機イオンを含み甘味度がやや低く温和な少し淡白な甘みを特徴としている。テーブルシュガー、清涼飲料、製菓、乳製品に利用される。葉は畑の追肥として、根の絞り粕は、酵母、調味料、オリゴ糖の原料、ビートパルプとし牛の飼料などとする。
砂糖は、甘蔗糖と甜菜糖との本質的な違いはなく製造法により含蜜糖(糖蜜:黒砂糖など)、分蜜糖(結晶:粗糖、精製糖)とし結晶の大きさによって双目(ざらめ)【白双(しろざら・上双:ショ糖99.9%)・中双(ちゅうざら:ショ糖99.9%)・グラニュウ糖(ショ糖99.9%)】、車糖【上白(ショ糖97.8%・砂糖)・中白・三温(ショ糖96.4%)】にわけられ氷砂糖は、双目の結晶をより大きくしたものです。
中双は、結晶が白双より大きくカラメル溶液をふりかけ淡褐色で綿菓子、カラメル焼き、煮物、漬物、佃煮類に用いられます。
高級和菓子に用いている「和三盆(わさんぼん)」は、普通、白砂糖は、白下糖とよばれるショ糖結晶と蜜(みつ)分の混合物から、遠心分離で蜜分を除去したもので、これを三盆白または三盆といいます。盆菓子づくりに用いる場合、白下糖から十分に蜜分を除かない状態のものを珍重しています。やや黄色味を帯びた和三盆糖は名店老舗の名品として知られています。日本の伝統的な製法でつくられる砂糖です。サトウキビの搾り汁を煮詰め白下糖(しろしたとう)をつくり、これを布袋に入れて圧搾して蜜をしぼり出します。少量の水を加えながらもみ上げの圧搾を繰り返し最後に1週間ほど乾燥すると結晶の細かい独特の風味を持った砂糖ができあがります。 阿波三盆、讃岐三盆白などが歴史的にも有名で、徳島県、香川県など四国地方で家内工業的に生産されている砂糖で無光沢の微細結晶からなります。、黄みがかった白色で粒子が細かく、上品な甘みで口溶けがよく砂糖の最高級品として、和菓子などに用いています。
上白の100g中の成分は、エネルギー384kcal、水分0.8g、タンパク質(0)g、脂質(0)g、炭水化物99.2g、灰分0g、ナトリウム1mg、カリウム2mg、カルシウム1mg、マグネシウムTrmg、リンTrmg、鉄Trmg、亜鉛0mg、銅0.01mg、マンガン-mg、ビタミンA:(0)μg、ビタミンD:(0)μg、ビタミンE:(0)mg、ビタミンK:(0)μg、ビタミンB1:(0)mg、ビタミンB2:(0)mg、ナイアシン(0)mg、ビタミンB6:(0)mg、ビタミンB12:(0)μg、葉酸(0)μg、パントテン酸(0)mg、ビタミンC(0)mg 食物繊維(0)gです。
■蔗糖・砂糖の性質
植物に広く分布、特に果実に多く含んでいます。工業的には、根、茎の特にビート、サトウキビから産出されています。糖度はbrix(ブリックス)比重計で測定できます。
純粋なショ糖は、グリコシド性(グルコースの配糖体)の水酸基同士で結合していることにより還元性がなく無色、中性、アルコールに不溶、水溶性(0℃で65%、50℃で72%、100℃で83%)で、時間の経過による甘味の変化がなく調味しやすく180度で溶解しカラメル(アミノカルボニル反応)を作ります。砂糖溶液50%程度まで沸点は、100℃ですがそれ以上になると急激に上がり90%溶液で120℃、それ以上で粘度の高いものになり、温度と濃度の関係で仕上りがシロップ、糸を引(ボンボン)く、カラメル(べっ甲飴)に変化していきます。
蔗糖を希酸、酵素(インベルターゼ)で加水分解するとグルコースとフラクトースの等しい分子を生じる二糖類の混合物で転化糖(てんかとうInvert sugar)とも呼ばれます。転化糖は、反応に伴ない右旋性であった甘藷糖、甜菜糖など加水分解する現象を転化といい左旋性に変化します。甘味度は一般に市販される蔗糖を100とすると転化糖は80~130とされ甘味が強く、保湿力があり製菓、人工蜂蜜、転化型糖液などに利用されます。最近では、異性化糖の澱粉(馬鈴薯、さつま芋、とうもろこし)を糖化して出来るブドウ糖に異性化酵素を作用させブドウ糖と果糖をもった糖で低温で甘味が強く固形化、粉末化が難しく主に液糖として清涼飲料水に工業的に使われます。水分活性を低くし、湿潤作用があり利用されています。
還元糖は、フェーリング液(糖類の検出試薬)を還元する糖類で転化糖を含みますが、純粋の蔗糖には還元力がありません。純度の高い双目では、殆ど含まず上白(一般に言う砂糖)では、1.3%程度含んでいます。
砂糖は湿気を吸いやすく湿度70%以下で保存したほうがよく、また臭気(化粧品・漬物・醤油など)も吸着しますので通気性の良いところで保管しましょう。
砂糖の固まりは、空気の乾燥する冬季、また湿気のあるところから乾燥した時期に起きやすくなります。グラニュー糖では、砂糖(上白糖)より水分が少なく結晶が大きいので固まりにくくなっています。風通しの良い室温20~25度、相対湿度70%程度で保存するのが良いといいます。なお食塩とともに長期に渡り保存可能で砂糖に賞味期限の表示義務はありません。
甘味料としてだけでなく粘性(あめ)、保湿(ケーキ)、乳化・あわ立ち(クリーム・泡雪)、好ましい風味(カラメル)、結晶化(金平糖)、発酵を助ける(まんじゅう・パン)、でん粉の老化防止(あん)、ゼリーの形成(ジャム・ゼリー)によく人工甘味料で得られにくい特性をもっています。
防腐効果は、砂糖の溶解度が高く多量に用いると浸透圧が高くなり細菌の繁殖を抑えるのに糖度50%で期待できます。また酸味、苦味を和らげ、隠し味とし少量加え他の味を引き立たせ、少量の塩で甘味を引き立たせる効果があるのです。
小糖類(オリゴ糖)の二糖類(ブドウ糖一分子と果糖一分子を含む)で体内で胃の中で分解されやすく、他のでん粉質、炭水化物、脂肪、たんぱく質に比べ吸収が早く果糖とブドウ糖になり小腸で吸収され即効性のエネルギー源とし疲労回復としてもよく利用されます。エネルギーとして利用されるのビタミンB群を必要としますが疲労回復によく疲れを感じたときに甘いものがほしくなるのです。
糖質系の甘味料にも開発、研究が進み多くが天然に含む食材を利用し、でん粉、麦芽糖、砂糖などの日常的に摂取しているものより微生物により作り出される酵素を利用、また糖類に水素を添加、還元して製造されます。日本は、もとより欧米においても活発に研究が勧められています。
甘味に対する需要、低エネルギーの需要と、それらの供給のための研究が進められています。
それぞれの特性を知って生かし上手に利用するようにしたいですね。
ご愛読戴きましてありがとうございます。よりよい情報をお届けしてまいります。
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