・各地の漬物 かくちのつけもの
これからの寒い、野菜の少ない季節のために、昔は保存食として日本全国各地でさまざまの種類の漬物が作られていました。
塩漬けのほかに醤油漬け、福神漬け、味噌漬け、甘酢漬け、粕漬け、桜漬け〔しば漬け〕と調味料もいろいろあります。
そこで今回は、全国各地でどんな漬物が作られていたのが調べてみました。
日本の三大菜漬けといわれるものには、野沢菜漬け、高菜漬け、広島菜漬けといわれています。
京都は漬物で有名ですね。中でも千枚漬け、柴漬け、酸茎菜(すぐきな)漬けはよく知られます。
世界中にも、美味しい漬物があるようです。世界三大漬物としてザーサイ、胡瓜のピクルス、オリーブの実、またはキムチ、ザーサイ、ザワークラフトといわれます。
そのほかにも日本全国には、三大漬物に劣らず、おいしい各地方色豊かな漬物が残っています。
北から、
北海道の「松前漬け」
北海道の道南で松前と呼んでその地域で保存食として食べていたことから命名したものです。コンブと干しスルメを細く切り、数の子をミリンと醤油で調味した液に漬けます。
秋田県の「いぶりがっこ」
大根を囲炉裏(いろり)の天井につるしてけむりでいぶし干しにしたものを、ぬか漬けにしたもので独特の歯ごたえと香りがあります。
岩手県の「金婚漬け」
岩手県ではウリのワタをくり抜き、その中にコンブで巻いた大根や人参を詰て味噌漬けにしたのが「金婚(きんこ)漬け」です。「きんこ」とは陸中海岸の浅瀬にすむナマコのことで漬け物形状がナマコに似ていることから呼ばれています。
栃木県の「たまり漬け」
東照宮のある日光で名産の漬け物が「たまり漬け」です。熟成したもろみの液に大根やキュウリ、ナス、らっきょうなどの野菜をベッコウ色になるまで漬け込みます。
東京都の「べったら漬け」
毎年10月19日に日本橋小伝馬町(こでんまちょう)にたつ「べったら市」が開かれています。こうじで漬けた、たくあんのことで市では漬け物業者の「べったら,べったら」と景気のいいかけ声が響きます。
長野県の「野沢菜漬け」
江戸時代中期に京都から持ちかえり導入したと伝えられます。根となる小さな蕪よりもその葉を主に利用します。
静岡県の「ワサビ漬け」
伊豆、天城は古くからワサビの産地として知られます。昔はぬか漬けのワサビ漬けだったようですが江戸時代の中期になって駿河(今の静岡市)のワサビ商人が,かす漬けに改良して好評をえたとことから今日のワサビ漬けになったと言われています。
石川県の「かぶらずし」
海の幸が豊富な石川県で魚を使いカブを厚手に輪切りにして、その間にブリをはさみ塩とコウジとコンブで漬け込む「かぶらずし」です。ブリは高級魚なので庶民の間では大根とニシンで漬けた「大根ずし」が一般的だったと言われています。
大阪府「水茄子の漬物」
泉州水茄子は皮が柔らかく水分たっぷりで、アクが少なく、ほとんどぬか漬け、液漬けなどの漬物にしています。
奈良時代末期にインドより渡来し、江戸時代初期から大阪泉州地方の気候や風土があい水なすが育てられました。
京都府の「千枚漬け」
温暖な関西で栽培されているカブは、白色系統で聖護院は蕪が最も大きく、すが入りにくく千枚漬けにしています。カブを千枚にも切るように薄く切って酢漬けにして、そこにコンブなどを加え今日の千枚漬けとなります。
京都府の「しば漬け」
京都の大原で古くから漬けられナス、ミョウガ、しそなどをきざんで塩漬けにした「しば漬け」です。名前の由来は壇ノ浦で滅亡した平家の中で1人生き延びた建礼門院が、しその葉の色から「紫葉漬け」と呼んだことから命名されたと言われています。
京都府の「酢茎菜漬け」
京都、賀茂(かも)地域の特産で別名「かもな」ともいい繊維質で主に葉つきのまま塩漬け後乳酸発酵させた漬物です。
奈良県の「奈良漬け」
酒粕に塩分、糖分を加え野菜を漬け込んだものですが、一般には白瓜の粕漬けを「奈良漬け」といい高級な漬け物として全国的に有名です。その始まりは、江戸時代の初期、慶長年間に奈良の漢方医糸屋宗仙が奈良漬をつくりはじめたという説が最も有力です。家康にも献上しています。
岐阜県の「守口漬け」
古くは大阪の守口地区で栽培されていたのが起源となっています。
江戸時代からすでに「ホソリ大根」や「美濃干大根」などといわれる細長い大根を栽培していました。 長良川沿いの砂質の土地で栽培している直径3cm、長さ1.8mにもなる守口大根を粕漬けにしています。
現在、愛知北管内扶桑(ふそう)木曽川流域地区では全国生産の約7割のシェアを占めているようです。
広島県の「広島菜漬け」
麹やコンブを使って塩漬けにします。江戸時代に京都からこの菜の種を持ち帰って栽培したのが始まりと言われています。
鳥取県の「らっきょう」
鳥取砂丘で栽培されほとんど漬物として用いられ歯ざわりがよく甘酢漬け、醤油漬け、塩漬けとしています。
江戸の小石川薬園(現在の小石川植物園)より参勤交代時に持ち帰ったことが始まりと伝えられています。
山口県の「寒漬け」
武士の携帯食として作られてきた瀬戸内の宇部地方に古くから伝わる干し大根の漬け物です。
古くは1ヶ月ほど半干しにした大根を海水につけ軒下につるし寒風の中で叩いて延ばす作業を繰り返し完全に干しあげられます。12月から1月の厳冬の頃に漬けられることからこの名がついたと言われています。
愛媛県の「緋の蕪漬け(ひのかぶらづけ)」
愛媛県松山地方に古くから伝わる塩で下漬けした赤カブをダイダイの漬け汁で漬け直すもので果汁の酸味から緋色に染まることから呼ばれています。
原種は、近江国(現在の滋賀県)の日野菜(ひのな)カブです。
和歌山県の「梅干」
明治時代に和歌山県の旧・上南部村(現・みなべ町)で高田貞楠(さだぐす)が大粒の梅を見つけ、高田梅と名付けて栽培し、1950年に高田梅を最優良品種と認定しています。
調査に尽力した南部高校の教諭であったことから、高田の「高」と「南高」をとって南高梅と名付けられ現在に至るといわれます。
梅は8~10世紀ごろ中国の唐、宗の時代に持ち込まれたとされることから、塩作りができるようになった時期とあわせ8~10世紀の間と考えられます。
直径3cmにもなる大粒(南高:なんこう)梅が有名です。
福岡県の「高菜漬け」
九州地方で栽培し漬物として有名な「高菜漬け」です。繊維が硬いことから漬物としていますが、漬物の炒め煮もよく知られます。
鹿児島県の「壺漬け」
南九州の山川町福元(現:指宿市)に伝わるで古くは大きな壺に海水を使ってよく洗い干した大根を塩だけで漬け込み半年以上発酵熟成させることからこの名がついた褐色のたくわんです。別名は「山川漬け」とも呼ばれます。
沖縄県の「パパイヤ漬け」
沖縄県の栽培で生育が緩慢で、甘味が少なく温度管理が難しく9月下旬頃の未熟果をピクルス、塩漬け、黒糖と酢で調味した漬け汁漬けとしています。
韓国の「キムチ」
野菜を漬ける時に唐辛子やニンニク、生姜、果物、アミ、小魚の塩辛、魚醤油など多くの材料と一緒に漬け込んで乳酸発酵させて独特の深い風味を醸し出し旨みを増しています。
中国の「搾菜(ザーツァイ)」
カラシナの肥大した塊茎(かいけい)を一度干してから,塩と香辛料で漬け込んでいます。中国、四川(しせん)省で多く作られ主に漬物とし肥大茎を割って干し、塩で2度漬けし香辛料(生姜、実山椒、唐辛子粉、にんにく、ウイキョウ、シナモンなど)で漬け込み、1ヶ月ほど熟成させます。
西欧の「ピクルス」
西洋で主に製造される酢(ワイン、アップル、モルト[麦芽]ビネガー)漬けで発酵させた野菜、果物の漬物をいいます。小型の胡瓜、オリーブの他、赤ビート、カリフラワー、トマトなどもつかわれます。塩漬け(塩水)した野菜の調味液に香辛料、砂糖を加えたり、酢を加えないで発酵だけのもあります。
時折、スパーでは、漬物ならぬ、生鮮大根、きゅうりそのままのつけ汁に浸してあるだけの物がみられます。
各地を旅行した際には、その土地の美味しい漬物をおみやげとするのもいいですね。
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(初版2020,11,28)