新しくタイトルを付けて掲載する作品につながるお話
〈中国人旅行者の発した行き先の発音を考える〉
はっきりいつ頃だったかは思い出せませんが、恐らく2000年代前半か中頃のことではないだろうか、Intraasia は日本を訪れた時にJRや私鉄の駅名に中国語・華語と韓国語が併記されていることに気が付いて、ちょっと意外な思いを感じました。
当時の Intraasia はマレーシア居住(移住)時代であり、時たまごく短期間だけ日本を訪れていた。Intraasia は日本国外に居るとき、日本語のニュース類や記事は、印刷されたものであれネットに載っているものであれ、昔から全く読まないので、日本事情には疎いのです。
駅名の中国語・華語と韓国語併記に関して、その後マレーシアでの移住を終えて去るまで、正直言ってほとんど考察したことはなかった。日本に2010年代中頃から再度住むようになって駅を日常的に使うようになると、中国語・華語の併記に何か違和感を覚えるようになった。
そのことをもっとよく考えるようになったのは、何年か前に(2010年代後期のこと)成田空港で見かけたある出来事がきっかけになった。空港から東京駅へ向かう格安バスに Intraasia が乗り込み座席で発車を待っていると、2人連れの中国人女性が乗ってきた。
彼女たちは運賃前払いに対応する運転士に向かって「yinzuo, yinzuo」と何回も言っていた。運転士は最初少し戸惑ったようだったが、すぐに言っている意味が分かったらしい。yinzuo [インツオ] とは漢字で書くと銀座だ。注:発音のカタカナ表記はあくまでも便宜的です
このバスは東京駅を経由して銀座へ行く。バス停の行き先に、「銀座」に併記して簡体字で「银座」と書かれていたかどうかは覚えていないが、今 Intraasia の手元にある同バス会社発行の紙の時刻表にはちゃんと簡体字、繁体字、ハングルでの停留所名が併記してある。
この2人組女性は、その発音と振る舞いから間違いなく中国人であった。Intraasia はその長年の東南アジア生活経験から、東南アジア華人はこういう発音と振る舞いはまずしないことを知っている。つまりこの2人組は銀座を中国語でまたは中国語として読んでいるわけだ。
格安バスの性格から、中国人旅行者や韓国人旅行者の利用が少なくないことは容易に推測できる。だからそのバス運転士は中国人乗客によるバス停名呼称をそれまでにも何度も聞いたことがあり、その発音の意味を察した、と Intraasia が判断しても間違いはないだろう。
付け加えておく。東南アジア華人の華語と中国人(台湾人については後日触れる)の話す中国語(普通語)は、書記すれば同じ言語だが、その発音などに両者間で微妙に違いがあり、聞き慣れた耳なら、彼らは中国人だろう、いや東南アジア華人だろう、と推測がつく(断定ではない)。
では中国人旅行者は、なぜ銀座を「ギンザ」と呼ばずに「yinzuo」 と呼ぶのか? もちろんそのバス停行き先名にはラテン文字綴りで "Ginza" と併記してある。このような日本語駅名にラテン文字綴りを併記することは首都圏のほとんど全ての駅で昔からほぼ同様であろう 。
ローマ字が外国人にどのように発音されるかの説明
〈駅名のローマ字綴りの読まれ方は様々である〉
駅名のラテン文字綴りは、一般にローマ字綴りと呼ばれているが、英語綴りを模したものも混じっている。だからラテン文字綴りには、日本式のローマ字綴りもあれば、書いた人が英語ではこう綴るはずと思った”英語を模した綴り”もある、と言ってもいいだろう。
要するに、英語の母語話者と非母語話者を問わず、とにかくある程度以上に英語を解する外国人向けに、駅名やバス停名に関して、できるだけ日本語風の発音を知らしめるまたは日本語風に発音して欲しいという期待を、ラテン文字綴りには込めているわけだ。
ここで強調しておくことが1つある。駅名のラテン文字綴りを日本人が期待するように、外国人が発音してくれる保証はまったくない。なぜなら、かなり多くの人は各自の母語の影響を多分に受けて、その母語の発音規則・慣習によってラテン文字を読むからだ。
注:上記では”母語”であり、”母国語”ではない。人はまず母語の影響を受けるまたは残しているからです。母語と母国語をきちんと区別することは必須知識です。
例えば多くの欧州言語話者には、母音と母音の間に挟まれた子音は一般に有声音で読むという規則・慣習がある。例:駅名の恵比寿 Ebisu や大崎 Osaki の s は[ズ]と濁って読まれる可能性が高い。なお確実に [ス] の発音を得る綴りにするには "ss" と s を重ねる方法がある。
何語かの声調言語の母語話者であれば、他言語を発音するときその声調がある程度残るか感じられるのは当然だろう。そこでタイ語話者は日本地名の発音でア行やエ行やオ行の母音を長母音化することが珍しくないだろう、例:品川を [ซินางาวะ シナーガーワ] 。
それはタイ語における発音慣習を反映しているからだ。なおタイ語には子音において同音異字がかなりある。そこで日本語の固有名詞をタイ文字で綴る場合、声調と子音の選び方によって複数の綴り方(綴りのゆれ)があることは不思議ではない。
またタイ語の音韻には[ザ]音の文字がないので、多少工夫する必要がある、例:銀座を [งินซะ ギンザ] または [งินจะ ギンジャ] のように。
駅名に併記されたラテン文字を論じ中です。駅名の大門 Daimon をフランス語話者なら [デモン(鼻音化)] と発音するだろう。フランス語では ai は[エ] となり、mon は鼻音化する規則だ。スペイン語では J は息のやや強い[h] 音だ。例:Japón [ハポン]日本、
そもそもスペイン語アルファベットの J は[ホタ]と読む。
さらにスペイン語では g 文字に関して、ge の場合は je と同じ発音[へ]、及び gi の場合は ji と同じく[ヒ]と発音する。ただし g のその他の組み合わせは [g] の発音だ:gu [グ]go [ ゴ]。
またドイツ語では J は[ユ]音だ、例:jung [ユング]若い、Japan [ヤーパン」日本。
上述のようなことを考えれば、外国語話者によって駅名の十条 Jujo が果たして日本人の期待通り読まれるかな?
まだある、スペイン語では h 文字を発音しない。例:時間 hora は[オラ」と発音。男 hombre は[オンブレ]。試みに駅名 八王子 Hachioji が中南米出身のスペイン語話者によってどう発音されるか、興味あるところだ。" ji " は既に上記で言及しましたね。
このように3つ、4つの言語を取り上げただけでも、既に駅名のラテン文字表記は日本人の期待するようには読まれないことがわかる。逆に、ラテン文字を利用したベトナム文字を、日本人がどう発音しようと、本来のベトナム語音とはかけ離れた音になるのは当然といえる。
ベトナム文字音の例をあげる。anh [アイン]意味:男性に対する2人称単数、không[喉から強い息でホン]意味:否定する語、giờ[ゾー でも日本語のオーではない]意味:何時の時、 dと giと r の文字は[z] の音だ、ただし南部では異なる。ベトナム語は声調を含めて発音の難度が高い言語です。
誤解なきように強調します: ラテン文字綴りが良くないということではない。日本文字を外国人にできるだけ日本語音に近づけて発音してもらうには、ラテン文字綴りが最良ではなくても適している、ことは事実だ。Intraasia は駅名のラテン文字併記に実用面から賛成です。
〈人は母語の影響を受けて文字を発音する〉
実用面という意味を説明しましょう。世界で使われているどの文字を使おうと、他言語の話者は多分に母語の影響を残してその文字を読み、発音する。例えば"A" という文字の母音には、口の狭いア、広いア,口内奥で発生するア、あいまいなアなど幾つもの"ア"があるのです。どの"ア"で発音されるかは話者の母語次第だ。
要するに他言語話者に正確な音を伝える文字種はない、且つそれを正確に発音してもらうとの期待は非現実的だ。言語学の世界で用いられる国際音標記号 IPA は、どんな発音でも正確に表記できるが、相当複雑で難しいので一般使用は論外だ。そこで最大公約数的に文字種を選べば、世界で最も普及しているラテン文字ということになる。
以上新しいテーマにつながる序論として、あれこれ例示しつつ書きました。駅名やバス停名にラテン文字綴りを併記している主たる狙いは、外国人の鉄道やバスの利用を手助けする、外国人ができるだけ利用しやすくする、というものであることは言うまでもありません。
JRと私鉄の駅名のラテン文字併記の狙いは、それに加えて、外国人にすごく正確でなくてもいいからできるだけ、日本語の発音を知ってもらう、そういう風に発音して欲しい、との期待が込められている、と捉えても間違いではないでしょう。
〈Intraasia が新しくブログ上で掲載する作品に関して〉
こういった序論の内容を基にして、2023年10月初旬から掲載する、新しいタイトルを付けた作品の下で論を展開していきます。この作品はかなり長文なので前編、中編、後編にわけて掲載します。そこで、新しい作品をお読みになるときは、是非この序論の部分から読んでいただくようお願いします。
次にこのブログの目次を掲げます。
【 目次 】
序論 新しくブログに掲載する作品のテーマを導く
前編 はじめに、 第1章、
中編その1 第2章、 第3章、 第4章、 第5章、
中編その2 第6章、 第7章、 第8章、
中編その3 第9章、 第10章、 第11章、
後編 第12章、 第13章、 第14章、 おわりに、
2023年12月末の注記:文章が読み易くなるように、序論をブログの先頭つまり最上部に移行した。なお当ブログを始めたのは、この序論部分を最初に掲載した2023年10月の初め頃です。その後約3週間位の間に、前編、中編、後編を順次掲載しました。
今回発表する作品のテーマは広い意味での言語に関する範ちゅうに属しますので、Intraasia が2018年以来ツイッターの場で毎日連載している『いろんな言語のこと、あれこれ』シリーズの一環としてのブログ版です。なお今回の新作は Intraasia がこれまで発表してきた数々の作品とは幾分狙いが異なります。
注: Intraasia はツイッターを自作品の発表の場としてだけ利用しており、いわゆる”一般的なツイッター行為・活動はしておりませんし且つ今後もそうするつもりはありません”。
〈ツイッターで発表した作品と今回のブログ作品との関係〉
当ブログで掲載する作品のいわば原著は Intraasia が2021年にツイッター上で半年に渡って連載した作品です。その際のタイトル名は【JR と私鉄は駅名併記に中国漢字を使うな】でした。しかしこれだと Intraasia の書く内容を訪問者が読む前から誤解してしまう可能性がかなりあるのですが(例えば反中国感情を前面に出したものとの憶測)、ツイッターが定める制限文字数の点からタイトル名を短くせざるを得なかった。その当時本当に付けたかったタイトル名は、本文中に織り込んだのですが、毎日掲載する記事には載せられない残念さがありました。
字数制限のない今回のブログ作品では内容とIntraasia の趣旨をより反映する長いタイトル名をつけています。
ツイター版作品とブログ版作品は内容的には大体同じですが、ブログ版作品は年月的には新しい掲載となり且つ掲載文字数に制限がありません。そこで切れ切れに読むことになるツイッター版から一気に読める長文型の文章にすべく、表現の書き換えや掲載文章の順序入れ替え、及び校正・加筆・削除などを随所に施して全面的に見直しています。従って新版と称してもいいでしょう。
そのため新版であるブログ版の方が、読者にはずっと読み易くなっている、作品の趣旨を理解しやすい構成である、と Intraasia は思っています。
2023年9月末記
Intraasia
〈中国人旅行者の発した行き先の発音を考える〉
はっきりいつ頃だったかは思い出せませんが、恐らく2000年代前半か中頃のことではないだろうか、Intraasia は日本を訪れた時にJRや私鉄の駅名に中国語・華語と韓国語が併記されていることに気が付いて、ちょっと意外な思いを感じました。
当時の Intraasia はマレーシア居住(移住)時代であり、時たまごく短期間だけ日本を訪れていた。Intraasia は日本国外に居るとき、日本語のニュース類や記事は、印刷されたものであれネットに載っているものであれ、昔から全く読まないので、日本事情には疎いのです。
駅名の中国語・華語と韓国語併記に関して、その後マレーシアでの移住を終えて去るまで、正直言ってほとんど考察したことはなかった。日本に2010年代中頃から再度住むようになって駅を日常的に使うようになると、中国語・華語の併記に何か違和感を覚えるようになった。
そのことをもっとよく考えるようになったのは、何年か前に(2010年代後期のこと)成田空港で見かけたある出来事がきっかけになった。空港から東京駅へ向かう格安バスに Intraasia が乗り込み座席で発車を待っていると、2人連れの中国人女性が乗ってきた。
彼女たちは運賃前払いに対応する運転士に向かって「yinzuo, yinzuo」と何回も言っていた。運転士は最初少し戸惑ったようだったが、すぐに言っている意味が分かったらしい。yinzuo [インツオ] とは漢字で書くと銀座だ。注:発音のカタカナ表記はあくまでも便宜的です
このバスは東京駅を経由して銀座へ行く。バス停の行き先に、「銀座」に併記して簡体字で「银座」と書かれていたかどうかは覚えていないが、今 Intraasia の手元にある同バス会社発行の紙の時刻表にはちゃんと簡体字、繁体字、ハングルでの停留所名が併記してある。
この2人組女性は、その発音と振る舞いから間違いなく中国人であった。Intraasia はその長年の東南アジア生活経験から、東南アジア華人はこういう発音と振る舞いはまずしないことを知っている。つまりこの2人組は銀座を中国語でまたは中国語として読んでいるわけだ。
格安バスの性格から、中国人旅行者や韓国人旅行者の利用が少なくないことは容易に推測できる。だからそのバス運転士は中国人乗客によるバス停名呼称をそれまでにも何度も聞いたことがあり、その発音の意味を察した、と Intraasia が判断しても間違いはないだろう。
付け加えておく。東南アジア華人の華語と中国人(台湾人については後日触れる)の話す中国語(普通語)は、書記すれば同じ言語だが、その発音などに両者間で微妙に違いがあり、聞き慣れた耳なら、彼らは中国人だろう、いや東南アジア華人だろう、と推測がつく(断定ではない)。
では中国人旅行者は、なぜ銀座を「ギンザ」と呼ばずに「yinzuo」 と呼ぶのか? もちろんそのバス停行き先名にはラテン文字綴りで "Ginza" と併記してある。このような日本語駅名にラテン文字綴りを併記することは首都圏のほとんど全ての駅で昔からほぼ同様であろう 。
ローマ字が外国人にどのように発音されるかの説明
〈駅名のローマ字綴りの読まれ方は様々である〉
駅名のラテン文字綴りは、一般にローマ字綴りと呼ばれているが、英語綴りを模したものも混じっている。だからラテン文字綴りには、日本式のローマ字綴りもあれば、書いた人が英語ではこう綴るはずと思った”英語を模した綴り”もある、と言ってもいいだろう。
要するに、英語の母語話者と非母語話者を問わず、とにかくある程度以上に英語を解する外国人向けに、駅名やバス停名に関して、できるだけ日本語風の発音を知らしめるまたは日本語風に発音して欲しいという期待を、ラテン文字綴りには込めているわけだ。
ここで強調しておくことが1つある。駅名のラテン文字綴りを日本人が期待するように、外国人が発音してくれる保証はまったくない。なぜなら、かなり多くの人は各自の母語の影響を多分に受けて、その母語の発音規則・慣習によってラテン文字を読むからだ。
注:上記では”母語”であり、”母国語”ではない。人はまず母語の影響を受けるまたは残しているからです。母語と母国語をきちんと区別することは必須知識です。
例えば多くの欧州言語話者には、母音と母音の間に挟まれた子音は一般に有声音で読むという規則・慣習がある。例:駅名の恵比寿 Ebisu や大崎 Osaki の s は[ズ]と濁って読まれる可能性が高い。なお確実に [ス] の発音を得る綴りにするには "ss" と s を重ねる方法がある。
何語かの声調言語の母語話者であれば、他言語を発音するときその声調がある程度残るか感じられるのは当然だろう。そこでタイ語話者は日本地名の発音でア行やエ行やオ行の母音を長母音化することが珍しくないだろう、例:品川を [ซินางาวะ シナーガーワ] 。
それはタイ語における発音慣習を反映しているからだ。なおタイ語には子音において同音異字がかなりある。そこで日本語の固有名詞をタイ文字で綴る場合、声調と子音の選び方によって複数の綴り方(綴りのゆれ)があることは不思議ではない。
またタイ語の音韻には[ザ]音の文字がないので、多少工夫する必要がある、例:銀座を [งินซะ ギンザ] または [งินจะ ギンジャ] のように。
駅名に併記されたラテン文字を論じ中です。駅名の大門 Daimon をフランス語話者なら [デモン(鼻音化)] と発音するだろう。フランス語では ai は[エ] となり、mon は鼻音化する規則だ。スペイン語では J は息のやや強い[h] 音だ。例:Japón [ハポン]日本、
そもそもスペイン語アルファベットの J は[ホタ]と読む。
さらにスペイン語では g 文字に関して、ge の場合は je と同じ発音[へ]、及び gi の場合は ji と同じく[ヒ]と発音する。ただし g のその他の組み合わせは [g] の発音だ:gu [グ]go [ ゴ]。
またドイツ語では J は[ユ]音だ、例:jung [ユング]若い、Japan [ヤーパン」日本。
上述のようなことを考えれば、外国語話者によって駅名の十条 Jujo が果たして日本人の期待通り読まれるかな?
まだある、スペイン語では h 文字を発音しない。例:時間 hora は[オラ」と発音。男 hombre は[オンブレ]。試みに駅名 八王子 Hachioji が中南米出身のスペイン語話者によってどう発音されるか、興味あるところだ。" ji " は既に上記で言及しましたね。
このように3つ、4つの言語を取り上げただけでも、既に駅名のラテン文字表記は日本人の期待するようには読まれないことがわかる。逆に、ラテン文字を利用したベトナム文字を、日本人がどう発音しようと、本来のベトナム語音とはかけ離れた音になるのは当然といえる。
ベトナム文字音の例をあげる。anh [アイン]意味:男性に対する2人称単数、không[喉から強い息でホン]意味:否定する語、giờ[ゾー でも日本語のオーではない]意味:何時の時、 dと giと r の文字は[z] の音だ、ただし南部では異なる。ベトナム語は声調を含めて発音の難度が高い言語です。
誤解なきように強調します: ラテン文字綴りが良くないということではない。日本文字を外国人にできるだけ日本語音に近づけて発音してもらうには、ラテン文字綴りが最良ではなくても適している、ことは事実だ。Intraasia は駅名のラテン文字併記に実用面から賛成です。
〈人は母語の影響を受けて文字を発音する〉
実用面という意味を説明しましょう。世界で使われているどの文字を使おうと、他言語の話者は多分に母語の影響を残してその文字を読み、発音する。例えば"A" という文字の母音には、口の狭いア、広いア,口内奥で発生するア、あいまいなアなど幾つもの"ア"があるのです。どの"ア"で発音されるかは話者の母語次第だ。
要するに他言語話者に正確な音を伝える文字種はない、且つそれを正確に発音してもらうとの期待は非現実的だ。言語学の世界で用いられる国際音標記号 IPA は、どんな発音でも正確に表記できるが、相当複雑で難しいので一般使用は論外だ。そこで最大公約数的に文字種を選べば、世界で最も普及しているラテン文字ということになる。
以上新しいテーマにつながる序論として、あれこれ例示しつつ書きました。駅名やバス停名にラテン文字綴りを併記している主たる狙いは、外国人の鉄道やバスの利用を手助けする、外国人ができるだけ利用しやすくする、というものであることは言うまでもありません。
JRと私鉄の駅名のラテン文字併記の狙いは、それに加えて、外国人にすごく正確でなくてもいいからできるだけ、日本語の発音を知ってもらう、そういう風に発音して欲しい、との期待が込められている、と捉えても間違いではないでしょう。
〈Intraasia が新しくブログ上で掲載する作品に関して〉
こういった序論の内容を基にして、2023年10月初旬から掲載する、新しいタイトルを付けた作品の下で論を展開していきます。この作品はかなり長文なので前編、中編、後編にわけて掲載します。そこで、新しい作品をお読みになるときは、是非この序論の部分から読んでいただくようお願いします。
次にこのブログの目次を掲げます。
【 目次 】
序論 新しくブログに掲載する作品のテーマを導く
前編 はじめに、 第1章、
中編その1 第2章、 第3章、 第4章、 第5章、
中編その2 第6章、 第7章、 第8章、
中編その3 第9章、 第10章、 第11章、
後編 第12章、 第13章、 第14章、 おわりに、
2023年12月末の注記:文章が読み易くなるように、序論をブログの先頭つまり最上部に移行した。なお当ブログを始めたのは、この序論部分を最初に掲載した2023年10月の初め頃です。その後約3週間位の間に、前編、中編、後編を順次掲載しました。
今回発表する作品のテーマは広い意味での言語に関する範ちゅうに属しますので、Intraasia が2018年以来ツイッターの場で毎日連載している『いろんな言語のこと、あれこれ』シリーズの一環としてのブログ版です。なお今回の新作は Intraasia がこれまで発表してきた数々の作品とは幾分狙いが異なります。
注: Intraasia はツイッターを自作品の発表の場としてだけ利用しており、いわゆる”一般的なツイッター行為・活動はしておりませんし且つ今後もそうするつもりはありません”。
〈ツイッターで発表した作品と今回のブログ作品との関係〉
当ブログで掲載する作品のいわば原著は Intraasia が2021年にツイッター上で半年に渡って連載した作品です。その際のタイトル名は【JR と私鉄は駅名併記に中国漢字を使うな】でした。しかしこれだと Intraasia の書く内容を訪問者が読む前から誤解してしまう可能性がかなりあるのですが(例えば反中国感情を前面に出したものとの憶測)、ツイッターが定める制限文字数の点からタイトル名を短くせざるを得なかった。その当時本当に付けたかったタイトル名は、本文中に織り込んだのですが、毎日掲載する記事には載せられない残念さがありました。
字数制限のない今回のブログ作品では内容とIntraasia の趣旨をより反映する長いタイトル名をつけています。
ツイター版作品とブログ版作品は内容的には大体同じですが、ブログ版作品は年月的には新しい掲載となり且つ掲載文字数に制限がありません。そこで切れ切れに読むことになるツイッター版から一気に読める長文型の文章にすべく、表現の書き換えや掲載文章の順序入れ替え、及び校正・加筆・削除などを随所に施して全面的に見直しています。従って新版と称してもいいでしょう。
そのため新版であるブログ版の方が、読者にはずっと読み易くなっている、作品の趣旨を理解しやすい構成である、と Intraasia は思っています。
2023年9月末記
Intraasia