翌日の土曜日、夫の運転する車でポニョさんだけを連れて病院に行きました。
夫はそのまま仕事に行き、私が電車でポニョさんを連れて帰る予定だったので
ピノさん、初めて独りでお留守番です。
病院に着いて一通り症状を説明しましたが、先生は首をひねるばかり。
何しろ、1ヶ月ちょっと前に健康診断を受けたばかりで
その時に「健康優良児」の太鼓判をもらっていたのです。無理もありません。
先生:「見た目には異常無さそうですが、
原因をはっきりさせるためにもレントゲン撮りますか。」
私:「とりあえずお願いします。」
ところが、異常なし・・・。
そこで私は、かすかに心にひっかかっていた事を切り出してみました。
私:「先生、そもそもこのポニョが
バランスを崩してそのまま落下する事自体考えられないのですが・・・。」
先生:「うーん。じゃあちょっと・・・。」
そして、聴診器を取り出した先生がポニョさんにそれを当てた次の瞬間でした。
先生:「あれ?!このコ心雑音あったっけ?」
先生の口から、衝撃的な言葉が出たのです。
・・・心雑音?心臓?ポニョが・・・?心臓病?
元気そのもので、怖いもの知らずの図太いこのコが・・・?
何かの間違いなのではないかと思いました。
こないだの健康診断では異常なしだったのですから。
けれど、心臓が悪いなら今までの異変の説明がつきます。
最初に止まり木から落下したのも、ゴハン中に突然具合が悪くなったのも、
足を引きずっていたのも・・・。
ショックを受けて茫然とする私たちに
先生は、静かにゆっくりと心臓病についての説明をして下さいました。
けれど、あまりの出来事に正直1/3は聞いていなかったような気がします。
そのうち、とうとう病院でポニョさんの様子があやしくなってきました。
ケージの金網にしがみついて動いてはいるのですが
鈍い動きがどう見てもいつものポニョさんじゃない。
そのうち、金網にしがみつく力が無くなったポニョさんは段々下に下がって行き
ポトリと落ちるように床に下りてしまいました。
すかさず、先生がポニョさんを保定して様子をみると
先生:「うーん。目の焦点が合ってないような状態ですね・・・。」
目の焦点が合ってない・・・?!
ポニョちゃん・・・
苦しいだけじゃなくてそんなフラフラで意識を失うような状態だったなんて。
このまま暑い日中を連れて帰るわけにはいかないと
ひとまず、一時預かりという事で一旦私は家に帰ることにしました。
これから仕事に向かう夫と、夕方に病院で落ち合う約束をして・・・。
最近、やけに甘えん坊さんで
ゴハンを我慢してまで、いつまでも私と遊ぼうとしていたポニョさん。
もしかして、ポニョさんは自分に時間がない事に気付いていたのでしょうか。
遊んでほしくて常に鳴き続けるポニョさんに、ウンザリする時もありました。
段々慣れていくピノさんが面白くて、
ポニョさんよりピノさんと遊ぶ時間が多い日もありました。
最近私は、ポニョさんを軽んじていました・・・。
ポニョはいつから苦しかったのだろう。
何でこんな事になってしまったのだろう。
なぜもっと早く気付いてあげられなかったのだろう。
ずっと毎日一緒にいたのに。
帰り道、そんな後悔ばかりがずっと頭の中をぐるぐる回っていました。
初めてポニョさんと出会った時の事。
初めてポニョさんが私に話かけてくれた時の事。
初めてポニョさんが私の体に自ら飛んで来て止まってくれた時の事。
いろいろ思い出しては、目から涙が溢れそうになりました。
この日、病院を出てから一旦家に帰るまでの間
私は、外が暑かった事しか覚えていません・・・。