はるか昔、鈴木訳の本書を読んで、そうだそうだとこころの中で相づちをうっていたことを懐かしく思い出す。旧訳もわかりやすかったが、新訳の本書もわかりやすい。どちらがうまく訳されているかは、比較していないのでわからない。しかし、この名著が文庫本で出版された意義は大きい。旧訳同様、約半世紀以上は読み継がれていくのだろう。
パーソンズとラザースフェルド、およびその後継者たち、とくに後者に対する批判は手厳しいが、 私的問題と公的問題の相互翻訳の重要性を指摘しながらのそれは、現代の社会学にもじゅうぶんにあいつうじるものであり、新訳出版の意義はやはり大きい。
ただ、ミルズの「知的職人論」は、「けっきょく社会学者による研究成果は個々人の才能、問題意識、努力による」という身も蓋もないことを意味するわけで、それが、本書が世界の社会学に与えた影響力の大きさにすれば少なくとも日本では不思議と振り返られることのない一因なのかもしれない。
(本書をご恵贈いただきありがとうございました。)
目次
第1章 約束
第2章 グランド・セオリー
第3章 抽象化された経験主義
第4章 実用性の諸タイプ
第5章 官僚制のエートス
第6章 科学哲学
第7章 人間の多様性
第8章 歴史の利用
第9章 理性と自由について
第10章 政治について
付録 知的職人論
社会学を学ぶ意味とは何だろうか?たとえば、社会の変化が私たちの日常にどう影響するか、あるいは、日々遭遇する困難を根本的に解決するにはどうすればよいか。それを適切に考えるためには、日常を社会や歴史と関連づけて捉える知性が欠かせない。社会学的想像力と呼ばれるこの知性こそ、社会学の最大の効用である。だが、当の社会学者も理論や調査に夢中になるあまり、そのことを忘れつつある―こうした現状を鋭く批判し、社会学的想像力を鍛える学としての意義を高らかに謳いあげる重要古典。今日でも全米の大学で最も多く用いられている社会学文献である本書を、みずみずしい新訳で送る。
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