桐野夏生,2014,緑の毒,KADOKAWA.(12.15.24)
39歳の開業医・川辺。妻は勤務医。一見満ち足りているが、その内面には浮気する妻への嫉妬と研究者や勤務医へのコンプレックスが充満し、水曜の夜ごと昏睡レイプを繰り返している。一方、被害者女性たちは二次被害への恐怖から口を閉ざしていたがネットを通じて奇跡的に繋がり合い、川辺に迫っていく―。底なしの邪心の蠢きと破壊された女性たちの痛みと闘いを描く衝撃作。文庫オリジナルのエピローグを収録。
本書の読みどころは、人間の卑小、卑劣さを一身に体現したかのような、連続レイプ魔、サイコパスの開業医、川辺の人物造形にあるだろうな。
最後は極悪人が成敗されるという安心のオチであるが、ストーリーよりも、一人ひとりの体温さえも感じさせる、登場人物の心象風景の細やかな描写がひかる。