男女ともに「草食化」は必然的な歴史の流れだろう。湯山玲子氏があとがきで述べているように、「日本人の性文化は、人間的尊敬がそのまま性的リビドーに繋がる快感回路をほとんど持ち合わせていない」のだから。西ヨーロッパ起源の「ロマンティック・ラブ」のイデオロギーは、プラトニック・ラブ、法律婚主義、一棒一穴主義(←「不倫」という意味不明の規範的観念の前提)、シンデレラ・コンプレックス等にみられるように、その表層的な部分しか日本社会には定着しなかった。「尊敬できる人とセックスしたい」という欲望は、自称「膣ドカタ」の「暇な女子大生」のような稀な例を除けば、日本社会では希薄である。そうであれば、セックスは、快感を伴うスポーツか、子作りのための手段でしかなくなる。前者は、他の行為でも代替可能であり、セックスするまでの面倒くさいコミュニケーションを回避するのは理の当然だ。後者については、そもそも増え続けるワーキング・プアの若者には子どもをもつだけの余裕はない。
もう一ついえば、セックスの回避は、「ライフスタイルの分化」の一態様であり、回避しても後ろめたさや劣等感をもたずに済むようになるのは、むしろ望ましいことである。最大の問題は、少子化と人口の自然減が加速していくことにあるが、若者の労働条件の向上と雇用の安定化、(産んだ子を自分で育てなくとも済む)里親制度の普及、海外からの移民の受け入れ等により、ある程度解消できるだろう。こうした手立てを講じれば、「草食化」は案ずるには及ばない事象である。
目次
序章 なぜ、私たちは恋愛も結婚もセックスも楽しめなくなったのだろう
日本に蔓延するセックスへの絶望
自分の中の暴力性を嫌悪する男たち ほか
第1章 自分の中の快感回路を探しに
AV男優とAV女優では「セックス」にならない
なぜ女優にペニスを生やすのか ほか
第2章 ひからびた感情を取り戻せ!
メンヘラ女子のセックスはエロい?
女への憎しみ、恐怖から、女を支配しようとする男 ほか
第3章 侮辱でもない、自虐でもない、大人の性愛のたしなみ
前戯はレストランから始まっている
エロ話で日本の男女の縛りを外す ほか
第4章 エロティックでロマンティックな人生のために
いつまでも褒めてほしがる男たち
男と男の面倒くさい関係 ほか
「セックスは面倒くさい」の背景に何があるのか?セックスは、もはや贅沢品だ―。急変する“性意識”の中で“気持ちいい人生”を諦めない方法を大胆に真摯に語りつくす!
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