小手鞠るい,2016,曲がり木たち,原書房.(3.5.25)
「主人公たちの人生が、いつしかある小さな公園で交差する全5篇を収録した胸に迫る連作短篇集。書き下ろし。「ある事故」で突然障害を負った幼馴染への心の葛藤を描く「小さな木の葉に宿る一本の木」他、「生きづらさ」を抱えた主人公たちの人生が、いつしかある小さな公園で交差する全5篇を収録した胸に迫る連作短篇集。書き下ろし。
不思議な公園にぽつんと佇む優しい形をしたベンチ。きょうもここで待っている。あの人を。あなたを―見えない、歩けない、居場所がない、コミュニケーションができない。心の傷や生きづらさを抱えながらも、健気にしなやかに生きる愛すべき人々の「普通の」物語。
「障がいと人生」をテーマとした短編小説集。
障がい当事者の人生が、樹木の佇まいとともに語られていく。
樹木の枝葉と根は、真っ直ぐではなく、曲がりくねり、互いに絡み合う。
人間の心身も、樹木のように曲がりくねる、非定形のものだ。
そして、「曲がり木で作られたベンチ」が、わたしたちをそっと優しく受け入れる。
当たり前のこととしてそれぞれの「障がい」が語られる、こころ洗われる作品集だ。
小手鞠るい,2013,あなたにつながる記憶のすべて,実業之日本社.(3.5.25)
未来から現在へ、現在から過去へと時の流れを遡り、立ち上がってくる記憶と声に身をゆだねながら、愛しい人の不在を、私は「存在」として書く。『欲しいのは、あなただけ』『美しい心臓』恋愛の真実を追い求めてきた著者による鎮魂歌。
もう二度と会えなくなった──主に亡くなった人々との交流の記憶を「あなた」(=小手鞠さん)が追想する。
時間が、現在から未来、ではなく、現在から過去へ流れていくとき、わたしたちは、つねに死者とともに、ある。
死と喪失の記憶を抱きしめながら生きていくことの価値を深く再認識させてくれる、珠玉の作品集である。