
2008年前後、反貧困の言説とともに議論が白熱していたのが「ベーシック・インカムの可能性」であった。
それから15年。目先の損得勘定のみに左右される政策論議、すなわち、武川さんの言う「価値論なき政策論」ばかりがはびこるようになってしまった。
脱工業化と高齢化にともない、保育、看護、介護など、政府の財政支援がなければ低賃金のまま捨ておかれることになる対人サービス業の雇用が急増してきた。これら「エッセンシャル・ワーク」は、コロナ禍のなかで称揚されたものの、依然として劣悪な労働条件のまま捨ておかれ続けている。
こうした趨勢のなか、所得と労働との切断の必要性はますます高まっており、それとともに、とくに部分的ベーシック・インカムによる最低所得保障が求められているように思う。
エッセンシャル・ワークを、最低所得保障のうえに成り立つ有償労働として位置づけていかないことには、生存のためのケアさえ充足されない問題状況は改善されないであろう。
いま問われるベーシック・インカムという思考実験。原理的な考察からはじめ、財源までを提示。実現可能性を探る。社会政策学のみならず法学・経済学・政治学などから多面的に検討。
目次
社会政策の20世紀から21世紀へ
第1部 原理的な考察からの出発
21世紀社会政策の構想のために―ベーシック・インカムという思考実験
“社会的排除”の観念と“公共的経済支援政策”の社会的選択手続き
シティズンシップとベーシック・インカムをめぐる権利の理論
シティズンシップとベーシック・インカム
第2部 日本の現実への接近
ベーシック・インカム論が日本の公的扶助に投げかけるもの―就労インセンティブをめぐって
基礎年金制度の類型とその決定要因―ベーシック・インカムとの関係に焦点を当てて
日本の児童手当制度とベーシック・インカム―試金石としての児童手当
日本におけるベーシック・インカムに至る道
座談会 ワークフェアとベーシック・インカム―福祉国家における新しい対立軸
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