三宅大二郎・今徳はる香・神林麻衣・中村健,2024,いちばんやさしいアロマンティックやアセクシュアルのこと,明石書店.(7.27.24)
「みんな恋愛するもの」「好きな人とはしたくなるもの」それって本当?3ステップで恋愛・性愛の理解が深まる入門書。
Q&A方式で、まずざっくり要点を答えたあと、詳細な解説を加える。
アロマンティック、アセクシュアル当事者の経験が語られる第2部の内容も良い。
実用的なアイディアが掲載されているのも本書の魅力だ。
とくに、アロマンティック、アセクシュアル当事者にも使える、親密な関係性をもとうとする者同士のための「価値観すり合わせシート」はとても役に立つだろう。
(p.87)
ただ、基本概念の使用法と定義に疑問を感じた。
一つ目は、sexualityを「性愛」という言葉で表している点だ。
わたしも、以前、不用意に「性愛」と訳していたことがあったが、近代のロマンティック・ラブ・イデオロギーが相対化され、「性」と「愛」とを切り離せることが露見したいま、sexualityは、「性欲動の発現のあり方や意味付け」の意で、そのまま「セクシュアリティ」とカタカナ表記すべきであろう。
もう一つは、「性愛」感情を「性的惹かれ」、すなわち「性的な魅力を感じる/性的な関係を持ちたい(性行為をしたい)と思うこと」としている(p.29)点だ。
「性的」という言葉を「性的」という言葉で定義する、あるいは説明するのは無意味なトートロジーでしかない。
「性的」とは、「特定の対象に性欲動が向けられ、心地良さや快の経験(pleasant experience)を得るべく対象と身体接触を望む(こと)」、といった定義が必要だろう。
目次
第1部 Q&Aで知るアロマンティックやアセクシュアルのこと
はじめて知る方へ
当事者、またはそうかもしれないと思う方へ
知り合いが当事者、またはそうかもしれない方へ
気になるけど聞けない「これってどうなの?」
第2部 当事者の声をきいてみよう
当事者お話し会レポート
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