阿部彩さんの「ガラパゴス化する日本のワーキング・プア対策」が参考になった。阿部さんは、日本、韓国、台湾、香港における貧困層の動向と現状を比較しているが、勤労者の相対的貧困率(ワーキング・プア率)は10.8%と日本がもっとも高い。また、購買力平価調整後のドル換算で、最低賃金、可処分所得が低い下位20%の子どもがいる世帯の平均可処分所得ともに、日本のそれは際立って低い。
本田由紀さんの「メリトクラシーを「弱毒化」するために」も良かったな。<達成>→<報酬>の切断、すなわち、医師や弁護士、大企業経営者等のみが高報酬を約束されるのではなく、たとえば、看護師、保育士、介護士、清掃人等にも、しかるべき水準の報酬を保障するということ。もとより、これらの職業に就く人の多くがかつては地方公務員だったわけだから、元に戻していけば良いだけの話であるし、それより低すぎる最低賃金を一気に引き上げれば良いことだ。そのための税負担が重くなっても文句はない。
低成長と少子高齢化で停滞する日本社会の各所から、悲鳴が上がっている。脆くなった社会をコロナ禍が直撃し、言われるような「自助社会」の行き詰まりは誰の目にも明らかになった。一九九〇年代以降進められてきたさまざまな政策を、社会福祉、政治、行政、教育など、多彩な分野の第一線の研究者たちが徹底検証。
目次
序章 自助社会をどう終わらせるか
1部 自助社会の揺らぎと包摂型政策
ガラパゴス化する日本のワーキング・プア対策
すべての家族への支援をどう進めるか―家族政策の分断から包摂へ
誰も排除しないコミュニティの実現に向けて―地域共生社会の再考
犯罪をした障害者を孤立させないために―「自立」から「依存」へ
2部 パンデミックの衝撃と転換点
コロナ危機は社会民主主義的合意を作るか
コロナ危機は自由民主主義を変えたのか
「地域責任」と地方分権の限界―コロナ対応を例として)
3部 包摂型社会を展望する
メリトクラシーを「弱毒化」するために
個人化の時代の包摂ロジック―「つながり」の再生
包摂する社会が危機にも強い
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