本書は、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、そして日本で模索されてきた、ポスト新自由主義社会構想の論文集である。
ラテンアメリカ諸国での先住民のインクルージョン、新たな民主主義の回路としてのポピュリズム、エクアドルやボリビアでの「ブエン・ビビール」(善き生活)の実践、エコロジー運動、カール・ポランニーが看過したコミュニタリアニズムにおけるジェンダー不平等の克服、コミュニティ経済圏の構築、そしてラテンアメリカ社会におけるそれも含めた「南型知」の再評価、と論点は多岐にわたるが、なるほどそういう観点もあったのか、といくつか新たな発見があった。
ラテンアメリカ諸国における社会運動、社会民主主義の動向は、しばらくフォローできていなかったので、けっこう勉強になった。こうしたグローバルな社会経済論からは、得るところが大きいと思う。
目次
序 章 二一世紀の豊かさと解放──北と南の対話へ向けて 中野佳裕 第I部 ブエン・ビビールと関係性中心の哲学――ラテンアメリカの革新
第1章 開発批判から〈もうひとつの経済〉の考察へ――多元世界、関係性中心の思想 アルトゥロ・エスコバル
訳者解説 ラクラウ理論の読解のために 中野佳裕
第2章 政治的構築の論理と大衆アイデンティティ エルネスト・ラクラウ
第3章 ラテンアメリカにおける国家の再建 ボアベンチュラ・デ・ソウサ・サントス
第4章 発展に対するオルタナティブとしてのブエン・ビビール――周辺の周辺からの省察 アルベルト・アコスタ
第II部 社会民主主義の隘路から抜け出す――ヨーロッパ・北米の挑戦
第5章 ヨーロッパの左派――その歴史と理論を振り返る ジャン=ルイ・ラヴィル
第6章 生態学的カオスの脅威と解放のプロジェクト ジュヌヴィエーヴ・アザム
第7章 生産力至上主義との決別、解放の条件 フロランス・ジャニ=カトリス
第8章 社会のすべてが商品となるのだろうか? ――資本主義の危機に関するポスト・ポランニー的省察 ナンシー・フレイザー
第III部 コミュニティの再構築を目指して――日本の課題
第9章 「脱成長の福祉国家」は可能か――ポスト資本主義とコミュニティ経済 広井良典
第10章 コミュニティの社会学から社会史へ 吉原直樹
第11章 民主政治の試練の時代──民主主義の再生のために 千葉 眞
第12章 〈南型知〉としての地域主義──コモンズ論と共通感覚論が出会う場所で 中野佳裕
あとがき
経済成長至上主義への根底的批判と、共=コモンズの再構築を通じた、21世紀型の豊かさの構想。南米・ヨーロッパ・米国・日本の精鋭12名が、各地の社会運動を踏まえながら、オルタナティブな経済・政治・社会への道筋を多角的に展開。
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