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ピケティは、高所得層の所得税、多国籍企業の法人税、資産課税、炭素税等を強化して、貧富の格差を是正し、気候変動に対処すべきであることを説く。さまざまな統計データを駆使して傍証とする議論には、とても説得力がある。
ただ、難しいのは、税と社会保険による富の再配分をはかる「社会主義的連邦主義」国家への支持が盤石ではない点にある。人種、エスニシティ、ジェンダー、世代等の分断が進み、「社会連帯」を共有する基盤が切り崩されているからだ。無関心と無気力がはびこる日本では、なおさらだ。
高所得者、資産家、多国籍企業による社会基盤の「ただ乗り」を許さず、一度は捨てられ忘却された「社会主義」を標榜することは、周回遅れではあるが斬新な、また説得力のある主張であるように思う。
英国のEU離脱(ブレグジット)、トランプの勝利と敗北、マクロンの諸改革、プーチンの泥棒政治、新型コロナ、気候危機…激動する世界のただ中で、格差と闘うエコノミストは何を訴えたのか?ピケティが構想する「新たな社会主義」とは?2016年から21年初頭にかけて『ルモンド』紙に寄稿した時評から44本を精選し、新たに「序文」を付す。『21世紀の資本』から進化を続ける思考と格闘の軌跡。
目次
来たれ!社会主義 2020年9月
第1部 グローバル化の方向性を転換するために 2016‐2017
ヒラリー、アップル、そして私たち 2016年9月13日
IMF、格差、そして経済研究 2016年9月20日
男女間の賃金格差―19パーセントか、64パーセントか? 2016年11月7日 ほか
第2部 フランスのためにはどんな改革をすべきか? 2017‐2018
フランスの格差 2017年4月18日
フランスのためにはどんな改革をすべきか? 2017年5月16日
トランプはレーガンのパワーアップ版だ 2017年6月13日 ほか
第3部 欧州を愛することは欧州を変えること 2018‐2021
欧州の民主化のためのマニフェスト 2018年12月10日
「黄色いベスト運動」と税の公正 2018年12月11日
フランス革命前夜を彷彿させる債務危機 2019年1月15日 ほか
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