圧倒的なボリュームとしつこいくらいの細部にわたる議論が印象に残る。『家父長制と資本制』にみられた切れ味鋭い筆致、誰をも黙らせる比類なき論理的緻密さには及ばないが、幾多の社会学者、専攻生を魅了し続けたこの偉大な学者は、自らの老化をすさまじいばかりの努力でもって克服した。読後には「当事者主権の福祉社会」のイメージが鮮明に浮かび上がるだろう。「ケア」についての問題群はほぼ語り尽くされている。記念碑的労作だ。
目次
第I部 ケアの主題化
第1章 ケアとは何か
第2章 ケアとは何であるべきか
第3章 当事者とは誰か
第II部 「よいケア」とは何か
第4章 ケアに根拠はあるか
第5章 家族介護は「自然」か
第6章 ケアとはどんな労働か
第7章 ケアされるとはどんな経験か
第8章 「よいケア」とは何か
第III部 協セクターへの期待
第9章 誰が介護を担うのか
第10章 市民事業体と参加型福祉
第11章 生協福祉
第12章 グリーンコープの福祉ワーカーズ・コレクティブ
第13章 生協のジェンダー編成
第14章 協セクターにおける先進ケアの実践
第15章 官セクターの成功と挫折
第16章 協セクターの優位性
第IV部 ケアの未来
第17章 ふたたびケア労働をめぐって
第18章 次世代福祉社会の構想
超高齢社会における共助の思想と実践とは何か?!
「ケア」関係における当事者主権とは何か?!
社会の高齢化が進む中で、今後ますます重要性を増してくる「ケア」の問題は、これまで十分に冷静な議論がなされてきたとは言えない。介護労働者が不足し、そのニーズが増す一方で、彼/彼女らの労働環境は、現在も低水準が維持され続けている。さらに「ケア」は家族の心情や道徳意識に強く働きかける領域であるが故に、主婦などの無償の奉仕労働として扱われがちである。こうした問題の批判的検討に加えて、本書はこれまでもっぱら「ケアする側」の立場から語られてきたこの問題を「ケアされる側」の立場から捉え返し、介護現場における「当事者主権」とは何かを明らかにする。
『家父長制と資本制』で切り開かれた家事労働論・再生産論をさらに先へと押し進めた、上野社会学の集大成にして新地平!!
調査期間10年、総計500ページ超!
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