類書にはない重みが本書にあるのは、叙述から「孤独死」した者への深い敬虔の思いが伝わるからである。「特殊清掃」業務をてがける筆者は、自己本位の遺族、家主等とむきあい、死者と、生まれ故郷の沖縄を出奔する前、幼くして病死した妹を重ね合わせ、詐欺で多額の借金を背負いながら、「オゾン発生器」を使わず、腐乱死体が残した、「脳に焼きつくような不快臭」(p.143)がたちこめる事件現場を手作業で清掃する、
孤独死の増加は避けられない。腐乱した体液、血液、皮膚を除去し、床材にまでしみわたった死臭を消す作業を、だれかがてがけていかなければならない。
ひとりで死ぬのは憂えることでもないが、孤独死のいきつく先にある、凄惨な現実を直視したいものだ。
事件現場清掃会社
餓死した大学生、高級マンションで二年放置された死体、風呂で煮込まれたお婆さん…。自殺、孤独死、事故、殺人―死んだ人の後始末を1500件以上請け負ってきた著者。血と体液と虫にまみれた部屋で、死者の無念さに涙し、呆然とする遺族を慰める。誰も近づきたがらない特殊な死の現場から、生の悲哀を見つめた衝撃のノンフィクション。
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