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社会福祉援助を受けてこなかったばかりに、犯罪を繰り返し、刑務所しか居場所のない知的障害者たちの現状を、実際の事件とその取材にもとづき明るみに出した意義深い本だ。
著者自身も再三繰り返すとおり、障害そのものが凶悪犯罪に直結するわけではないが、涎を垂れ流し失禁しながら、まるで理解できない裁判官の判決を聞く累犯障害者たちは、小学生以下の知能しか持ち合わせていないにもかかわらず、少年法はもちろんのこと刑法第39条の対象にもならず、無益な裁判と服役を繰り返している。
触法障害者の更正事業はいまだ緒についたばかりだが、知的障害者への遺漏なき社会福祉援助による犯罪抑止ともども、司法福祉の充実は喫緊の課題だ。
目次
序章 安住の地は刑務所だった―下関駅放火事件
第1章 レッサーパンダ帽の男―浅草・女子短大生刺殺事件
第2章 障害者を食い物にする人々―宇都宮・誤認逮捕事件
第3章 生きがいはセックス―売春する知的障害女性たち
第4章 閉鎖社会の犯罪―浜松・ろうあ者不倫殺人事件
第5章 ろうあ者暴力団―「仲間」を狙いうちする障害者たち
終章 行き着く先はどこに―福祉・刑務所・裁判所の問題点
「これまで生きてきた中で、ここが一番暮らしやすかった……」
逮捕された元国会議員の著者は、刑務所でそうつぶやく障害者の姿に衝撃を受け
た。獄中での経験を胸に、「障害者が起こした事件」の現場を訪ね歩く著者は、
「ろうあ者だけの暴力団」「親子で売春婦の知的障害者」など、驚くべき現実を
次々とあぶり出す。
行政もマスコミも目を瞑る「社会の闇」を描いた衝撃のノンフィクション。
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