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本と音楽とねこと

オフショア化する世界

ジョン・アーリ(須藤廣・濱野健監訳),2018,オフショア化する世界──人・モノ・金が逃げ込む「闇の空間」とは何か?,明石書店.(4.30.2023)

 貧富の格差と貧困層の拡大、社会保障の後退、労働組合の瓦解、気候変動等の問題の根底には、新自由主義と、グローバル企業と富裕層の飽くなき富の独占がある。
 アーリは、タックス・ヘイヴンへの富のオフショア化、エネルギーと廃棄物のオフショア化等を問題視するが、この視点は、グローバリゼーションを研究対象としながら、それと貧困、気候変動等の問題とを結びつけて議論することのなかった既存の社会学への痛烈な批判ともなっている。
 マクロ社会学の根底に据えられるべき問題群を適切に位置づけた本書は、新たな批判理論の構築に向けた、重要な一里塚となるものであろう。

1990年以降急速に進んだ新自由主義経済と移動に関する技術革新を背景に、国境を超えた労働・金融・娯楽・廃棄物・エネルギー・気候変動やセキュリティの移動が「富裕層の一人勝ち」を引き起こす「オフショア化」を分析し、そこからの脱却の道を探る。

目次
まえがき
第1章 オフショアリングとは何か
問題の所在
国境を越えて
オフショアリング
オフショアリングの議論
第2章 秘密
ジンメルの秘密論
秘密が持つ力
新自由主義
結論
第3章 仕事のオフショアリング
分業
コンテナ化(containerisation)
自由貿易
仕事のオフショアリング過程
3Dプリント(3D printing)
結論
第4章 オフショアされた課税
「租税回避」入門
「隠れ蓑」
金融の過剰
租税をめぐるポリティクス
結論
第5章 オフショア化されたレジャー
海賊
どこかよそでの消費
オフショアの過剰な場所
ドバイ
オフショアリングのレジャー区域
セキュリティ
第6章 エネルギーのオフショア化
エネルギー問題
化石燃料エネルギー
遠隔地からのエネルギー
極地からのエネルギー
金融化
結論
第7章 廃棄物のオフショア化
廃棄物の搬入
廃棄物の創出
廃棄物の移送
排出物質の移送
結論
第8章 セキュリティのオフショア化
遠隔化するセキュリティ
オフショアでの戦闘
オフショアでの拷問
越境する監視体制
第9章 海へ、視界の向こうへ
海を取り込む
規制なき船
統制なき海
秩序なき気候
結論
第10章 すべてをホームに戻す
ドバイ・モデル
オフショアの規模
金融と民主主義
モノのオフショア化の流れを反転させる
さらなるオフショアリングか、それともパワーダウンか?
オフショアリングか、それともオンショアリングか?
監訳者 あとがき――脱組織資本主義社会のディストピアから
索引

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