殺害された「東電OL」の心理描写が実に的確なのにも感心する。
現実にあり得る醜悪な人間心理について免疫をつけるためにも、中高生が読んだらとても有益だろう。
桐野夏生,2006,『グロテスク 上』文藝春秋(文庫,¥650)'11.7.2
名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。ユリコの姉である“わたし”は二人を激しく憎み、陥れようとする。圧倒的な筆致で現代女性の生を描ききった、桐野文学の金字塔。
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桐野夏生,2006,『グロテスク 下』文藝春秋(文庫,¥680)'11.7.4
就職先の一流企業でも挫折感を味わった和恵は、夜の女として渋谷の街角に立つようになる。そこでひたすらに男を求め続けて娼婦に身を落としたユリコと再会する。「今に怪物を愛でる男が現れる。きっと、そいつはあたしたちを殺すわよ」。“怪物”へと変貌し、輝きを放ちながら破滅へと突き進む、女たちの魂の軌跡。
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