増田のいう「極点社会」の果てには、人口構成の高齢化による、その極点の崩壊が待ち受けている。
この当然の帰結の回避策を講じるのはもちろん重要だが、高齢者の「地方」への移住が進んだとしても、とくに高齢者介護にあたる人材が確保できなければ、地方での介護も破綻する。
本書に欠けているのは、介護職がじゅうぶんな生活給を保障されるしくみづくりの構想であり、それがなければ、首都圏で急増していく高齢者の「地方移住」も絵に描いた餅になるだけだろう。
ただ、本書で、これまた荒削りながら、明確な指標を用いて、地域ごとの医療および介護資源の水準が明らかにされているのは大いに意義がある。一足先に超高齢化を経験した地方の旧産炭地、旧工業都市は、ゆたかな医療・介護資源を蓄積している。この資源を生かし、高齢者のみならず若年層も含めた首都圏から地方への人口移動がはかられていかなければ、この国に未来はない。
目次
第1章 東京圏高齢化危機の実態
第2章 介護保険制度は持続可能か?
第3章 東京圏高齢化危機を回避するために
第4章 全国各地の医療・介護の余力を評価する
第5章 ルポ・先行事例に見る「生涯活躍のまち」
対話篇1 高齢化先進国として何ができるか
対話篇2 杉並区はなぜ南伊豆町に介護施設を作るのか
対話篇3 高齢者の住みやすい町はどこにある
若者の集まる街、東京。そんなイメージは過去のものになるだろう。2015年から25年にかけて、東京圏では75歳以上の高齢者が約175万人増加する。東京圏には医療・介護施設が不足しており、将来、介護施設を奪いあう事態になりかねない。地方の介護人材がさらに東京圏に集中すれば、「地方消滅」に拍車がかかる。東京発の日本の危機を脱するため、地方への移住を含めた解決策を提言する。鎌田實氏らとの対談も収録。
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