首都大学東京(現東京都立大学)の就職委員会委員長を経験した氏が、これから就職活動をする大学生たちのために書いた、けっこう学生たちへのやさしさを感じる書物。
筆者が指摘するとおり、世にはびこる学生向け就職啓発本はゴミばかり。職業が先にあり、それに人が充当されるのに、あたかも、だれしもが、職業をとおして、自己の資質、能力を全面開花、つまり自己実現しないといけないとか、ウソばっかりふきこまれている学生は、これを読んで真実を知るべし。
本田由紀さんのいう「ハイパーメリトクラシー」はいまいち具体性に欠けるが、本書は、結局、それがどういう能力なのか、とてもわかりやすく説明してくれる。それは、「場の空気を読む能力」なのではなく、「場の空気を読む人たちの心情を理解する能力」であり、機をみて、そんなくだらない空気は粉砕すればよろしい。
就職活動に「自己理解」なんか不要であるし、学生は、そこに、「自己理解を要請する企業がもとめる奴隷根性」を感得すべきであるし、そうであるなら、こっそりベロ出しながら、「奴隷になったふり」をすれば良い。
社会がデタラメなんだから、解離的に自己を演出、使い分け、だけれど、自分のホームベースをだいじにし、正しくあれ、というメッセージには、とても共感した。
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