故橋本治のエッセイの魅力は、アクロバティックな噺の展開、それを可能にする該博な知識(とくに古典)にあるが、本作は、短い雑誌連載記事の集成なので、くねくねまわりくどくてしつこい橋本ワールドが苦手な人にも受け入れやすいだろう。
違憲の法案を道理にかなう説明ができないまま成立させ、国民の財産を私物化していると疑わざるをえない問題が起きると、あらゆる文書を改ざん、あるいは破棄させ、平気で虚言を吐き続ける、そんな首相を支持し続け、その番頭みたいなじじいが首相になると、出自と学歴がとっても庶民的とかなんとか、これまた支持してしまうどうしようもない国民。
橋本さんは、こういうのを、バカの一言でバッサバサ切り捨てるわけだが、日本国民も、トランプを大統領にしたアメリカ合衆国国民も、イスラム国も、つけまつげした女の「ありのままで~」とかいう歌を嬉々として合唱する連中も、おまえらみんな、あたまおかしいんだよと言う橋本さん、あなたは正しい。
「あんな時代もあったよね」と懐かしんで振り返ることができないここ数年の怒涛の展開。国会でも巷でも、まともな議論はなりたたないし、小難しいことを言われると、言ってくる相手に怒りを覚えるような輩だらけ。さらには、世界も日本も、バカが偉くなってしまい、それに疑問をもつことにも麻痺しちゃっている今日この頃。そんな世の中に起きた日常の変化から世界的な事象までを見渡した時評集。
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