小杉礼子・宮本みち子編著,2015,『下層化する女性たち──労働と家庭からの排除と貧困』勁草書房.(6.10.2019)
各章とも、なかなかよく書けていると思う。
「女性労働の家族依存モデル」が現実には崩壊していくなかで、「女性の経済的自立モデル」が普遍化することはなく、その結果、女性の貧困はとめどなく拡散、深刻化していく。家族から、労働市場から、二重の排除を受けて窮乏化する女性の事例は、だれにでも起こりうる深刻なものばかりである。豊富なデータを駆使して、この歪んだ性差別社会の病理を分析していく議論は、どれも説得力がある。
目次
課題の設定―労働と家庭からの排除と貧困
第1部 労働と家庭からの排除の現状と課題
女性労働の家族依存モデルの限界
見えにくい女性の貧困―非正規問題とジェンダー
ままならない女性・身体―働くのが怖い、産むのが怖い、その内面へ
第2部 貧困・下層化する女性
女性ホームレスの問題から―女性の貧困問題の構造
折り重なる困難から―若年女性のホームレス化と貧困
第3部 支援の現場から
「よりそいホットライン」の活動を通じて―若年女性の「下層化」と性暴力被害
生活困窮状態の一〇代女性の現状と必要な包括支援―パーソナルサポートの現場から
横浜市男女共同参画センターの“ガールズ”支援―生きづらさ、そして希望をわかちあう「場づくり」
なぜ女性の下層化と格差の再生産が進むのか。失業、無業、虐待、家庭内暴力、離婚…かつてはセイフティネットであった家庭が、若年女性を窮地に追い込んでいる現実。見えにくい「女性の貧困」問題を可視化しつつ、社会的支援策を検討する。
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