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奥田さんから教わることは数多い。
なぜ、わたしたちは、めんどうなことから「逃げおくれ」て、他者に伴走せざるをえないのか。本書で触れられている相模原知的障がい者施設殺傷事件についての奥田さんの見解には、おおいに触発された。
疾病や事故により重度の障がいをもつ者が出てくるのは必定であり、そうした人々が(糸賀一雄のいう)健常者と同様に「自己実現」をはかる機会を保障されることは、当然のことと思う。
相模原知的障がい者施設殺傷事件の犯人、植松聖さんは、一時、生活保護を受けていたそうだ。植松さんの「社会のお荷物は抹殺すべきだ」という考えからすると、自分自身がまず殺されるべきという自己撞着に陥る。彼は、自らを「お荷物を殺す側」に立つことで、自らの優性思想の筋をとおそうとしたのではないだろうか。その結末が、19人の生命の抹殺と死刑判決であった。
誰しもが、人生のなかで、他者に助けられなければ生き延びることができない現実に直面する可能性があること、このことを考えれば、扶助を必要とする者を排除することをよしとする思想は、ときとして自己否定にいきつかざるをえない。
自分が「殺される側」になるかもしれない恐怖におびえる社会は、究極のディストピアではないだろうか。
ホームレス・困窮者支援32年の実績が裏づける、奥田知志の真実の言葉。「自己責任」を言い訳に人を助けない社会から、安心して出会い、つながる社会へ!コロナ禍が見せてくれた普遍的価値「いのち」を守るために!
目次
第1章 いのちの格差
「あんたもわしもおんなじいのち」
ホームレス自立支援とは何であったのか ほか
第2章 罪ある人間
おばあちゃんのラーメン
「罪人の運動」 ほか
第3章 他者と出会う
助けてと言えない四つの理由、それでも希望はある
「なんちゃって家族」の最大の特徴は「質より量」であること ほか
第4章 生きる意志
「かんじんなもの」―支援の本質とは何か?
「助けて」と言えた日が助かった日―生笑一座誕生 ほか
第5章 希望のまち
人がまるごと大切にされるために―抱樸のミッションとは
私には夢がある―ある住民説明会における住民代表の言葉 ほか
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