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本と音楽とねこと

調査の科学

林知己夫,2011,『調査の科学』筑摩書房('17.4.15)

 統計数理研究所を拠点とし、数量化理論の構築をはじめとして、戦後日本社会における社会調査の発展に寄与してきた林氏による、この分野にしては珍しい文庫本。文庫本にしては値段が高いが、社会調査の入門書としてお勧めするにはじゅうぶんな内容の一冊だ。

目次
序章 社会調査の心
第1章 社会調査の論理
第2章 調査の基本―標本調査の考え方
第3章 質問の仕方の科学
第4章 調査実施の科学
第5章 データ分析のロジック
第6章 調査結果をどう使うか

本書の真髄は、戦後の民主主義発展という歴史を背負って黎明期から調査関係者をリードし、調査の理論と実践を知り尽くした著者の「実践的調査理論」にある。この歴史と理論と実践が三位一体となり、現実の社会の課題解決のための研究が可能となったのである。今日、調査協力率の低下や回答者への接触の困難など調査環境悪化とともに、調査方法自体も質の低下が著しい。それにもかかわらず、「世論調査」が不当なほどに力をもつようになってしまった。本書にちりばめられた教訓を今一度、噛みしめる時である。

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