大卒と非大卒という「学歴分断」の背景要因と、それがもたらす問題点を探る。
親職と子学歴との関連よりも、親、とくに母親学歴と子学歴のそれが強いという指摘は、興味深い。
本書が出版されて11年。この間に変わったのは、女性の大学進学率が高まったことだ。親が大卒であるのに子が非大卒となるのは、親、子ともに、心理的抵抗が強い。それより重要なのは、高卒での正規職への就職機会が減少し、大卒が初職就業の最低参入学歴となる傾向が強まったことだ。
それでも、地方都市では、工業高校や商業高校から、地場産業に雇用されていく若者がいまでも少なくない。問題は、非大卒グループにおいて、そうした安定した雇用に包摂されず、非正規の不安定就労を余儀なくされている者が増えているという点にある。
また、最低参入学歴の高度化によって、多額の教育ローンを抱えたまま、じゅうらいの高卒一般職に該当する賃金にしかありつけない大卒者が増えているという厳しい現実も、わたしたちは、ふまえておく必要がある。
なお、吉川さんの著作には、より新しいデータにもとづいて書かれた、『日本の分断──切り離される非大卒若者』(2018)がある。
日本の大卒層と非大卒層―。全人口におけるその割合は、ほぼ同数となってきた。しかもそれは今後も続く。これが本書の言う、学歴分断社会である。そして大卒/非大卒という分断線こそが、さまざまな格差を生む。学歴分断社会は、どのようにして生じたのか。そこに解決すべき問題はないのか。最新かつ最大規模の社会調査データを活用し、気鋭の社会学者がこれまでタブー視されてきたこの領域に鋭く切り込む。
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