桐野夏生,2019,とめどなく囁く,幻冬舎.(12.29.24)
塩崎早樹は、相模湾を望む超高級分譲地「母衣山庭園住宅」の瀟洒な邸宅で、歳の離れた資産家の夫と暮らす。前妻を突然の病気で、前夫を海難事故で、互いに配偶者を亡くした者同士の再婚生活には、悔恨と愛情が入り混じる。そんなある日、早樹の携帯が鳴った。もう縁遠くなったはずの、前夫の母親からだった。
『柔らかな頬』と同様の、とある失踪者をめぐるサスペンス長編小説。
主人公、早樹の心理描写が実に繊細でつい感情移入してしまうことだろう。
あまり劇的なことは起こらないのに、ぐいぐい物語世界に没入させる筆力は、さすがというほかない。