小手鞠るい,2021,女性失格,文藝春秋.(12.31.24)
女とは何か? 人はどうやって女になっていくのか?
岡山の片田舎に生まれた女の子が、性に目覚める。進学校に進み、京都の有名私立大学に進学。そこで男たちと次々に「共犯関係」を結んでいくが、同時に性の対象とされることにも息苦しさを感じていた。そこから逃れるために結婚をするが、それでも女という性から逃れることができず不倫にのめり込む。結局は離婚してしまい、ボロボロになり……。
女という性をやめられず、女という性から逃れられない「生」の先には何が見えるのか?
太宰治の『人間失格』を下敷きに、「女性が女性であることで覗きこむ深淵」を照らし出す意欲作。
女という着ぐるみを身にまとって生きることの悲しみを、太宰治の『人間失格』になぞらえて描き出す。
自らのジェンダーロールへの違和を感じている人であれば、主人公、葉湖に共感するところしきりであろう。
小手鞠るい,2016,九死一生,小学館.(12.31.24)
「もしもあなたが誰かを本気で愛したら、行き着く先には悲しみがある。悲しみ以外のものはない。なぜならあなたの愛した者は死ぬ。それでも誰かを夢中で愛したあなたは救われる。私にそのことを教えてくれたのは、一匹の猫だった……」(プロローグより)
著者自身の、愛猫との別れの体験をもとに、喪失から再生、そして、小さな生き物たちを愛することの素晴らしさをとことん掘り下げた物語。猫を描かせたら右に出る者はいない小手鞠るいの、作家生活の集大成となる渾身の小説。
猫はコンパニオンアニマルとして完璧な存在だ。
愛くるしさと気高さ──しょせんそれが人間が勝手に感得する魅力でしかないとしても、愛し、かまけざるを得ない、それが猫という存在だ。
「猫文学」と言えば小手鞠るいさん。
猫たちをとおしてつながる恋人、配偶者、友人、きょうだい、そして、猫との生活と旅、仕事。
本作では、猫がいればこその人生模様が淡々と描き出されていく。
はるか昔、家を建てたとき、建築会社のオヤジがこう言った。
猫にかまけてたら子どもできんで
そのとおりになった。笑
でも、後悔はしていない。
人生には、猫がいればじゅうぶんだ。
目次
わすれ雪―二〇一一年啓蟄
風光る―一九八二年清明
燕の子―一九八三年小満
夏みかん―一九八四年夏至
道おしえ―一九八五年大暑
ダリヤ―一九八六年白露
小鳥来る―一九六一年霜降
海猫―一九八七年小雪
雪蛍―一九八七年冬至
冬萌―一九九〇年小寒
猫の恋―一九九三年立春
チューリップ―一九九六年穀雨
風青し―二〇〇〇年立夏
短夜―二〇〇五年夏至
虹の橋―二〇〇六年立秋
花野―二〇〇七年寒露