本と音楽とねこと

労働者階級の反乱、ワイルドサイドをほっつき歩け

 ブレグジット(イギリスのEU離脱)は、なぜ起こったのか。『労働者階級の反乱』を読めば、よくわかる。反移民でもなんでもない、ドイツ政府やブリュッセルのEU官僚がおしつけてきた「緊縮財政」の拒否、これが第一にあった。
 おもに、イギリスで出版された書物にもとづいているが、イギリス労働者階級の政治意識、同階級の歴史がとりまとめられていて、たいへん参考になる。
 『ワイルドサイドをほっつき歩け』では、ブリティッシュ・ポップの旋律にのせて、みかこさんお得意の洒脱なエッセイが展開される。ブレグジットに、老いらくの恋と別離に、はかない階級闘争に翻弄される「おっさん」たちが、哀しく、切なく、いとおしい存在に思えてくるだろう。


ブレイディみかこ,2017,労働者階級の反乱──地べたから見た英国EU離脱,光文社.(8.14.2020)


目次
第1部 地べたから見たブレグジットの「その後」
ブレグジットとトランプ現象は本当に似ていたのか
いま人々は、国民投票の結果を後悔しているのか
労働者たちが離脱を選んだ動機と労働党の復活はつながっている ほか
第2部 労働者階級とはどんな人たちなのか
40年後の『ハマータウンの野郎ども』
「ニュー・マイノリティ」の背景と政治意識
第3部 英国労働者階級の100年―歴史の中に現在が見える叛逆のはじまり(1910年‐1939年)
1945年のスピリット(1939年‐1951年)
ワーキングクラス・ヒーローの時代(1951年‐1969年) ほか


ブレイディみかこ,2020,ワイルドサイドをほっつき歩け──ハマータウンのおっさんたち,筑摩書房.(8.14.2020)


目次
はじめに おっさんだって生きている
第1章 This Is England 2018~2019
1 刺青と平和
2 木枯らしに抱かれて
3 ブライトンの夢――Fairytale of Brighton
4 二〇一八年のワーキング・クラス・ヒーロー
5 ワン・ステップ・ビヨンド
6 現実に噛みつかれながら
7 ノー・サレンダー
8 ノー・マン、ノー・クライ
9 ウーバーとブラックキャブとブレアの亡霊
10 いつも人生のブライト・サイドを見よう
11 漕げよカヌーを
12 燃えよサイモン
13 ゼア・ジェネレーション、ベイビー
14 Killing Me Softly――俺たちのNHS
15 君が僕を知ってる
16 ときめきトゥナイト
17 Hear Me Roar――この雄叫おたけびを聞け
18 悲しくてやりきれない
19 ベイビー・メイビー
20 「グラン・トリノ」を聴きながら
21 PRAISE YOU――長い、長い道をともに
第2章 解説編現代英国の世代、階級、そしてやっぱり酒事情。
Ⅰ英国の世代にはどんなものがあるのか
Ⅱ英国の階級はいまどういうことになっているのか
Ⅲ最後はだいじなだいじな酒の話
あとがき 風雲ながれUKを生き延びること

EU離脱、競争激化社会、緊縮財政などの大問題に立ち上がり、人生という長い旅路を行く中高年への祝福に満ちたエッセイ21編。第2章は、現代英国の世代、階級、酒事情についての著者解説編。

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