小手鞠るい,2022,乱れる海よ,平凡社.(2.21.25)
アメリカ在住の日本人ライターが、引っ越し作業中にふと手にした一冊の本。それは50年前に起こった世界的事件を追うことになる入り口だった──。
半世紀前の1972年5月30日、イスラエルのテルアビブ空港で起こった乱射テロ事件。起こしたのは3人の日本の若者たちだった。彼らはなぜ遠い異国の地でそんな事件を起こしたのか。それは崇高な使命からだったのか、それとも別の残虐非道な目的からだったのか。そして、短い生涯で主人公・渡良瀬千尋が遺したものとは。
恋愛小説の名手にして、多数の受賞歴を誇る名作『ある晴れた夏の朝』の著者が拓く新境地!
著者からのコメント
恋愛小説ではありません。歴史小説でもありません。今から約50年前に、世界で初めて空港で乱射事件を起こして、その後の世界秩序を塗りかえてしまったのが日本人であった、という事実を今の日本で認識している人はどれくらいいるでしょうか。これは負の事実かもしれません。しかし、事件を起こした人物(私の高校の先輩)を、私はどうしても全面的に否定できないのです。なぜなのか? その理由を知りたくて、この作品を書きました。
1972年5月30日、イスラエルのテルアビブ空港にて乱射テロ事件を引き起こした赤軍派幹部、奥平剛士の人と人生を描く。
事実に創作が入り、創作に事実が入り組む叙述のなかに、テロを引き起こさざるをえなかった純粋な若者の心情と思想とが縷縷と描かれていく。
パレスチナを足がかりに「世界同時革命」を引き起こす──いまにして思えば、荒唐無稽としか思えない考えが、つい半世紀前までは一部の若者に共有されていた事実、そしてPFLPによってお膳立てされた乱射テロ事件が、その後の幾多のテロ事件の先例として参照されてきたこと、これらは歴史的事実として記憶され続けるべきことであろう。
頭脳警察 - 世界革命戦争宣言~赤軍兵士の詩
ライラのバラード - 響(PANTA & Takumi Kikuchi)